世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ポーランドの日本語教育現場から 2011

ヤギェロン大学
田中香織

 ポーランドのクラクフ市にあるヤギェロン大学に、国際交流基金からの日本語教師が派遣されるようになったのは、大学に日本学科が設立された1987年からです。今年で25年目を迎え、私は10代目の派遣教師として、昨年6月より日本語専門家(以下、専門家)という立場で仕事をしています。

専門家としての業務

 ポーランドにおける専門家の業務は大きく2つに分類できます。

修士1年 翻訳演習の写真
修士1年 翻訳演習

一つは、所属機関であるヤギェロン大学日本学科における業務です。これには授業をはじめとする、学生の日本語能力を伸ばすための指導はもちろんですが、学科のカリキュラムの見直しに協力することや日本語教育に関する情報提供、教授法や教材について先生方からのご相談にのることがあります。講師室で、熱心なポーランド人の先生方と作文の添削のしかたについて話し合ったり、一緒に日本語文法を分析したりするのも楽しい仕事です。

日本語弁論大会の写真
日本語弁論大会

 もう一つは、任国全土における日本語教育に関する業務です。ポーランドでは、2006年に日本語教師会(以下、教師会)が発足しました。専門家は、大使館と共催される日本語弁論大会などの教師会の活動をサポートしたり、会員の先生方のためにセミナーを開催したりします。また、国土の広いポーランドのあちこちからのメールによるご相談や国際交流基金の日本語教育支援事業に関する情報提供の要請にもお答えしています。日本から遠く離れたポーランドでだからこそ、この地に合った日本語教育を考えると共に、日本をはじめ、他国における日本語教育の新風が吹き込まれることも大切に思えます。そのためには現地の先生方同士が集まって情報交換できる機会は非常に重要であり、年2回の教師セミナーには一人でも多くの先生方に足を運んでいただけるよう、国内外から講師をお招きし、有意義な企画に努めています。

今年も盛況、合同合宿

 ポーランドでは、3年前から年に一度、春に複数の大学から日本学専攻の学生が集う合同合宿が行われています。この合宿では、日本学を専攻する大学生が、大学の枠を越えて切磋琢磨し合うことを目的とし、約一週間、泊まり込みで日本学の講義を受けたり、研究発表をしたり、日本語や日本文化の授業を受けたりします。

 すばらしいことは、このような大きな行事が、学生によって主体的に行われていることです。合宿の準備と進行はほとんど全て学生によって行われます。専門家は実施機関(今年はポズナニ市のアダム・ミツキェビッチ大学)の実行委員を務める学生の依頼を受け、合宿中の日本語授業をコーディネートします。日本のマナーや盆踊り、即興のドラマを演じるなど、普段、大学の教室では受けられない体験的授業も取り入れ、楽しく学んだ学生たちが、学習動機を更に高めて大学に戻ることができればと願っています。

 私自身、今年の合宿に初参加でしたが、日本語授業を担当する先生方同士、授業案を出し合い、練り合いながら、事前に何度も連絡を重ねました。そして、合宿中は教師陣にとっても普段できない貴重な交流の機会となり、大変すばらしい経験となりました。

ポーランドにおける今後の日本語教育

 ポーランドの日本学科は、3年間の学士課程と2年間の修士課程に分かれる制度を導入しています。以前は5年間で修士課程を修了する制度だったため、大学は研究者を育てることを目的とした教育をじっくり行うことができましたが、現在学生には、3年生で学士論文の執筆と卒業試験があり、修士課程に進まないという選択肢もできました。そのため、大学側もカリキュラムを改訂し、3年間で実用的な日本語力を育て、且つ将来博士課程まで進む学生のために基礎をしっかり築かせる教育を目指しています。専門家としての今後の課題は、ポーランドの日本語教育のこのような課題に、学内外の先生方と共に取り組んで行くことだと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Jagiellonian University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
専攻科目として日本学科を設置している国内の5大学の中の一つで、ポーランドにおける日本学・日本研究の中心的役割を担っている。専門家は大学で日本語教授、カリキュラムや教材等に関するアドバイスを行う他、国内の日本語教育関連行事への協力、教師会セミナーの開催、教師会の活動支援を行っている。
所在地 ul. Pilsudskiego 13, 31-110 Krakow, Poland
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
文献学部東洋学研究所日本中国学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   選択:1978年から
専攻:1987年から
国際交流基金からの派遣開始年 1987年
コース種別
主専攻
現地教授スタッフ
常勤11名(うち邦人4名) 非常勤2名(うち邦人1名)
 
学生の履修状況
履修者の内訳   1年18名、2年23名、3年16名、修士1年21名、修士2年10名
学習の主な動機 武道、文化、文学、映画、アニメやJ-popなどへの興味から
卒業後の主な進路 博士課程進学、就職(観光業、日系企業、翻訳など)
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
2級程度、留学経験者は1級程度
日本への留学人数 5名程度

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