世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ルーマニアでは(2003)

ブカレスト大学
小久保ひろし

ルーマニアでは

 ルーマニアはあまり大きな国ではありません。人口約2千3百万人。そこに千人以上の人が日本語を勉強しています。そのうちの半分ぐらいは大学生ですが、中学生や高校生も日本語を勉強しています。去年は日本語のクラスがある幼稚園もありましたが、今年は先生の都合でそのクラスはなくなってしまったそうです。日本語の先生はルーマニア中に30人ぐらいいます。そのうち約7割がルーマニア人の先生で、残りが国際交流基金や国際協力事業団など日本からの派遣です。

ブカレスト大学

 私が派遣されているブカレスト大学は学部が約20もある国立の総合大学です。日本語は外国語外国文学部の東洋言語学科の中の日本語専攻というところで教えられていて、ルーマニア人の先生が6人、日本人は私1人です。専攻ですから、授業の半分以上が日本語や日本の文学・歴史など日本関係です。今年はブカレスト大学にとって大きなできごとがありました。日本とルーマニアの交流百周年を記念して紀宮様がルーマニアを訪問されたのですが、その際にブカレスト大学にも寄られました。紀宮様をお迎えするために、私たちはまず日本とルーマニアの歌を練習しました。ルーマニアの歌は日本でもよく知られている『ドナウ川のさざなみ』です(もちろん日本語の歌詞もあります)。それから会話練習です。お言葉をかけられたり質問をされたりした時に困らないように、想定問答集を作って練習しました。当日は練習の甲斐あってスムーズに答えられたし、一人一人にていねいにお声をかけていただいて感激したというのが学生の感想です。また、模擬授業も準備しました。これは本当の授業ではありませんが、学生や先生のせりふを決めて授業を再現したようなものです。このようにいろいろな準備があったので、二週間ほどは全く授業ができませんでしたが、学生にとっても私にとっても充実した日々でした。

日本語能力試験

 ルーマニアでは日本語能力試験が行われていません。そのため、この試験を受けるにはブルガリアかハンガリーまで行かなければなりません。受験願書の取り寄せ、申し込みや交通機関、宿舎の手配など国内で受験するのとは違った問題がいろいろあります。それでも、毎年のように数十人の学生がブルガリアのソフィアまで受験に行きます。私もソフィアの試験会場まで学生たちといっしょに行きました。宿舎から試験会場までバスに乗って下見をしたり、切符や両替の手配をしたりとツアーガイドになったようでした。また、ここ数年はとみにルーマニアでの受験希望が強まってきています。そこで、ルーマニアでの試験開催にブカレスト大学が名乗りをあげました。なるべく近い将来にルーマニアでの受験が可能になるように下準備を進めています。下調べではルーマニアでの受験見込み者数は200名を越えているということです。

日本語弁論大会

弁論大会の写真
弁論大会

 日本大使館主催の大会ですが、準備も運営も日本語の先生たちが中心になってやっています。今年は去年にもまして多くの先生たちが協力し合いました。この大会はルーマニアで日本語を勉強している人たちが一堂に集まれる一年に一度の機会です。このために地方からも出場者や応援団がブカレストに集まります。ですから、先生たちにとってもよその学校の人たちと交流する場になっています。

学校訪問

ヤシ子供宮殿の写真
ヤシ子供宮殿

 日本語の先生どうしの交流を進め、お互いの理解を深めるため学校訪問を続けています。これまでに大学4校、高校2校、中学1校、子供宮殿*1校を訪れました。寺子屋のような小ぢんまりした授業の子供宮殿、新しくて明るい教室の私立大学など学校によっていろいろ様子がちがいます。また、同じ大学と言っても国立大学と私立大学では全然違う問題を抱えていることなどもわかりました。学校訪問を通じて、少しずつですが日本語教育のネットワークもできつつあります。

  • *子供宮殿-小中高校生のための課外活動を行う教育機関
派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ルーマニアには、日本語を主専攻としている大学が2校(ブカレスト大学及びヒペリオン大学)、日本語を副専攻としている大学が3校(スピルハレット大学、デェミトリア・カンテミル大学及びバベシュ・ボヨイ大学)がある。その中においてブカレスト大学の日本語講座は、ルーマニア国内の日本語教育、日本文学研究の中心であり、常に他の日本語教育機関からその存在を意識されている。学生に対しては、日本語だけでなく日本文学、日本文化について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ブカレスト大学
Bucharest University
ハ.所在地 Bulevard Mihai Kogalniceanu nr.36-46, Sector5, Bucharest
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
ブカレスト大学外国語外国文学部東洋言語学科日本語専攻
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   副専攻:1975年から
専攻:1987年から
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1978年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生:30名 2年生:25名 3、4年生:各15名
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ
(3) 卒業後の主な進路 不明
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
能力の差は大きい。成績優秀者は日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 2名

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