世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ルーマニアの日本語教育

ブカレスト大学
酒井理恵

日本語を勉強する学生

1年生の写真
1年生

 現在ルーマニアでは1000名以上の人が初等、中等、高等教育機関で日本語を学習していると言われ、私が勤務するブカレスト大学では約90名の学生が日本語を勉強しています。その中には高校ですでに日本語を勉強して来た人、自分の学校では日本語の授業がないため、家庭教師について日本語を勉強してきた人が毎年必ず数人入ってきます。大学の日本語講座の定員はこの5~6年間で10名から徐々に増えて40名になり、日本に留学する学生や、卒業して日本語を使う仕事についている学生も少なくありません。

 このようにルーマニアにおける日本語熱は近年高まる一方です。フランスやドイツでは日本のアニメや漫画がきっかけになって日本語を勉強する人が増えていますが、ルーマニアでも少しずつこのような動機で日本語を学習する人が増えていて、テレビで放送される日本のアニメが学習のきっかけになったという学生もいますが少数派です。学習のきっかけは日本への憧れや小さいときに折り紙や生け花を見てというものが多いようです。

 またここ2~3年に行われた日本関係の様々な行事がより広い層に日本のことを伝え、それが大きな影響を与えていることも確かなようです。ルーマニアは2007年のEU加盟をめざし、ヨーロッパでは実利面も期待してヨーロッパ言語により比重が置かれるようになると言われていますが、こうして日本の文化や言語そのものに惹かれて日本語を学習したり、日本に行ってみたいという人々がいるのはうれしいことです。そうして学習者が増加してきた結果、今年からは念願の日本語能力試験がブカレストでも開催されることになり、今準備を進めているところです。

ブカレスト大学では

教室の写真
教室

 ここでブカレスト大学での授業の様子を少しご紹介したいと思います。日本語を学習する学生はほかにもう一つ外国語を勉強しており、人気があるのは英語やフランス語ですが、ヒンディー語やペルシャ語を勉強している学生もいます。1、2年生では週に8時間の日本語の授業のほか、言語学や日本事情についての授業があり、1年生終了時点で初級の文法項目をカバーし、2年生からは読解や翻訳が始まります。学年が上がるにしたがって日本語そのものの授業は少なくなり、言語学や文学の授業が増えてきます。3年生では今年は日本語教授法の授業を日本語で行い、最後に実習をしました。教師希望者は約3分の1で、ルーマニア国内で日本語を教える場合日本語のみで教えることはおそらくないでしょうが、直接法を使った日本語の実習は、文法項目の復習にもなり、日本語でやってみることで新しい視点を得られたようです。

 ここで唯一の日本人である私の授業では聴解や読解教材を用い、そこに出てくる文型を使った日本語での対話や、絵を用いてそれに関する文章を作ったり、その日に扱ったテーマに関連する作文を書いたりしています。ルーマニア人教師の授業はほとんどルーマニア語で行われ、文法や日本事情に関しての知識を得たり、翻訳したりすることが多いため、私の授業は日本語のみで行い、主に得た知識を運用できることを目的としています。まだまだ日本に関しての情報が少なく、授業も文学や歴史などが中心なので、テキストや映像を使って学生の年代の人が興味を持ちそうな現代の日本事情を紹介することも心がけています。聴解教材にお見合いの話が出てきたことがあったのですが、これについて説明すると学生は本当に驚いていたようでした。この他日本語のガイドとして働きたい学生も多いため、ルーマニアの街や生活を説明する練習など、学生のニーズにもできるだけ近づけた授業になるようにも心がけています。また授業の以外ではボランティアの日本人の方が月に1回学校を訪問してくださるので、学生にとって学習した日本語を使ういい機会になっています。

期待される役割

 専門家として期待されることはたくさんありますが、まずは足元から、大学の授業のカリキュラム作りに力を入れたいと思っています。ルーマニアの教育機関では学年ごとの学習カリキュラムや到達目標がきちんと決まっていないところが多く、ブカレスト大学も例外ではありません。私が赴任してきたのは2ヶ月前なのでまだたいしたことはできていませんが、同僚と会議を重ね、10月に新学年が始まるときには、学生に1年間の到達目標と教師同士で連携した効率のよい授業を提示できるようにしたいと思っています。幸いルーマニア人の先生たちもそのような必要性を感じているようなので、できることを一緒にやっていきたいと思います。

 私のここでの仕事はまだ始まったばかりです。先にあげたカリキュラム作りを筆頭に、ルーマニアにはまだない日本語教師会の設立、中等教育機関用の教科書作りなど、一つ一つやっていくことを目標にしたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ルーマニアには、日本語を主専攻としている大学が2校(ブカレスト大学及びヒペリオン大学)、日本語を副専攻としている大学が3校(スピルハレット大学、デェミトリア・カンテミル大学及びバベシュ・ボヨイ大学)がある。その中においてブカレスト大学の日本語講座は、ルーマニア国内の日本語教育、日本文学研究の中心であり、常に他の日本語教育機関からその存在を意識されている。学生に対しては、日本語だけでなく日本文学、日本文化について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ブカレスト大学
Bucharest University
ハ.所在地 Bulevard Mihai Kogalniceanu nr.36-46, Sector5, Bucharest
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
ブカレスト大学外国語外国文学部東洋言語学科日本語専攻
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   副専攻:1975年から
専攻:1987年から
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1978年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生:37名 2年生:26名 3年生:17名 4年生:8名
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ
(3) 卒業後の主な進路 ガイド、日本語教師、留学、日系企業に就職など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 2~4名程度

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