世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ルーマニアでの日本語

ブカレスト大学
酒井理恵

1.ルーマニアで日本語を学ぶ人々

ルーマニアでの日本語教育の現場写真1

 ルーマニアの首都はどこかご存知ですか?私のブカレスト赴任が決まったとき、「ブカレストってハンガリーだっけ?」、「ブルガリア赴任おめでとう」、「え、『ブカぺスト』?」というメールが届いたほど日本人にはあまりなじみのない国ですが、現在ルーマニアには約1300人の日本語学習者がいると言われており、これは中東欧の中でも学習者が多い国の一つになっています。日本語学習の場所は大学や高校以外に夜間講座や市民大学、子供宮殿(放課後に行く塾のようなもので、語学だけではなくスポーツや音楽のクラスもあります)、そして2006年の秋にはブカレストに最初の日本語学校も誕生しました。新しく事務所を置く日本企業もこの1年でもいくつかあり、日本人の観光客も少しずつ増えているこの国で、日本への関心はさらに高まっているように感じられます。日本語学習者が増加した結果、2004年12月からはここでも日本語能力試験が受験できるようになり、2004年、2005年とも250名ほどの受験者がありました。

2.日々の仕事

1)大学での業務

ルーマニアでの日本語教育の現場写真2

 筆者はブカレスト大学外国語学部東洋語学科の日本語セクションに籍を置いています。2005年度入学制から学士課程は3年制になりましたが、現在はそれ以前に入学した学生もいるので、1年生から4年生の授業を担当しています。日本語に関心を持つ人が多くなった結果日本語セクションの定員は増え続け、現在の定員は30名になっていますが、実際は2005年度は56名の新入生が入学しました。授業中は1年生の後期から日本語だけを使い、3年生になるとインターネットなどから取った生教材も読み始めます。

 授業以外では提携大学への留学生の内部選考試験の作成と実施のほか、外部関係者への対応、同僚教師へのアドバイスなどを担当しています。

2)大学以外の業務

 ルーマニアでは2005年11月に正式にルーマニア日本語教師会が発足しました。2004年3月に私が赴任する前から念入りな議論が重ねられ、ついに発足したもので、今までも同じメンバーで運営してきた日本語弁論大会の開催(大使館との共催)のほか、勉強会やシンポジウムの開催、メーリングリストによる情報交換などが現在の活動になっています。2006年9月には教師会主催の第一回シンポジウムが開催されることになりました。

 筆者はこれらの活動を自分が中心になってやるのではなく、将来的に日本からのサポートがなくなったとしても現地の教師だけでこれらを運営できるようにすることをここでの目標の一つにしています。派遣1年目はこちらの様子を知るための1年、そして2年目は得た経験や知識をもとにあれこれやってみる1年、そして次の3年目は2年目にあれこれやってみた結果うまくいったことは継続、そしてうまくいかなかったことは改善をする仕上げの1年だと思っています。

3.中東欧地域全体の連携

 もう一つ筆者の仕事として上げられるのは、中東欧地域全体のネットワーク作りに参加し、それを進めることです。現在この地域には筆者が勤務するルーマニアのほか、チェコ、ハンガリー、ブルガリア、ポーランドに国際交流基金の専門家が派遣されています。国によって日本語教育の形も目的も様々ですが、弁論大会や能力試験などについての情報交換を行い、そこで得た知識を任国であるルーマニアに還元することも大切な仕事であると考えています。この一環として2006年3月には日本語弁論大会の審査員交流が行われ、筆者はポーランドの弁論大会に審査員として参加する機会を得ました。こうして他の地域での様子を知りそれをルーマニアで教える教師に話すことで、ここでの様子を見直すことができ、今まで気がつかなかった点にも目を向けることができました。

 最後になりますが、日本語教師の仕事は最終的には人と人のつながりであると思っています。学生との信頼関係を築くことがいい授業につながりますし、一緒に教えている同僚や他の国でがんばっている先生方との情報交換からまた自分の仕事を見直すこともできます。そして一緒に事業をする大使館やそのほかの関係者の方々とも良好な関係にあることではじめて仕事を上手にやっていくことが可能になります。教える技術や情報収集能力など、日本語教師の仕事は様々なことを要求されますが、これからも一人の人間として信頼して接してもらえるように最後の1年をがんばりたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ルーマニアには、日本語を主専攻としている大学が2校(ブカレスト大学及びヒペリオン大学)、日本語を副専攻としている大学が3校(スピルハレット大学、デェミトリア・カンテミル大学及びバベシュ・ボヨイ大学)がある。その中においてブカレスト大学の日本語講座は、ルーマニア国内の日本語教育、日本文学研究の中心であり、常に他の日本語教育機関からその存在を意識されている。学生に対しては、日本語だけでなく日本文学、日本文化について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ブカレスト大学
Bucharest University
ハ.所在地 Bulevard Mihai Kogalniceanu nr.36-46, Sector5, Bucharest
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
ブカレスト大学外国語外国文学部東洋言語学科日本語専攻
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   副専攻:1975年から
専攻:1987年から
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1978年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤6名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生56名 2年生37名 3年生26名 4年生17名
(2) 学習の主な動機 日本文化への憧れ、日本語そのものへの興味
(3) 卒業後の主な進路 ガイド、日本語教師、留学、日系企業に就職など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 2~4名程度

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