世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ルーマニア人教師中心の日本語教育

ブカレスト大学
平野 美恵子

ルーマニアで日本語を学ぶ人々

ブカレスト大学日本語科の1年生の写真
ブカレスト大学日本語科の1年生

 ルーマニアと聞いて思い浮かぶものは何でしょうか。永遠の命を持つ吸血鬼、体操界の妖精ナディア・コマネチ、国民に暗い影を落としたチャウシェスク、などでネタが尽きてしまったのは、派遣前の私自身です。日本ではあまり馴染み無い国ルーマニアですが、日本語学習者は1700人以上と言われ、中東欧では学習者が多い国の一つです。大学をはじめ、中学・高校、夜間公開講座、民間語学学校など、様々な形態の教育機関で日本語が学ばれています。私が所属するブカレスト大学外国語学部東洋言語学科で、最も応募者が多いのが日本語専攻です。日本語能力試験も2004年から自国開催され、受験者は毎年増加しています。日本から遠く離れ、在住日本人も少ないルーマニアですが、日本語学習熱はかなりのものです。

 2007年1月1日、ルーマニアはEUに加盟しました。これを受けて、今後日系企業の進出が活発になり、日本語を学習する人々が仕事で日本語を使う機会が拡がることが期待されます。

日本語教育専門家の業務

ブカレスト大学

 ブカレスト大学は、ルーマニアの日本語教育における中心的な役割を果たしてきました。国際交流基金派遣の日本語教育専門家(以下、専門家という)は、ブカレスト大学に所属し、日本語専攻の学部・修士課程での授業担当、カリキュラムや教授法に対する助言、外部関係者との橋渡し、などを業務としています。学部3年制が導入され、3年制の第一期生と最後の4年生が今年卒業を迎えます。学部が1年短縮されたことで、カリキュラムを見直すとともに、効率よく日本語を指導していくことが求められています。初級クラスでは、ルーマニア人教師が文法説明、そして母語話者である専門家が運用練習を担当、という形で以前からチームティーチングを行ってきました。より効果的な学習の場を提供し、3年間のカリキュラムの中で相応の力を育成するために、定期的な授業報告の機会を増やして、進度や定着度に教師全体で注意を払い、教師間の連携を強めるよう努めています。
 赴任して約1年となり、ようやくカリキュラムの大枠とその課題が見えてきました。また、これまで蓄積した教材をまとめ、教科書を作成しようという動きも出始めています。次学期に向け同僚と協力しあい、日本語専攻を充実させていきたいと思っています。

学外での活動:ルーマニア日本語教師会

2008年日本語教師会総会のワークショップにての写真
2008年日本語教師会総会のワークショップにて

 ルーマニアで日本語教育に従事する人々にとって、ネットワーキングに欠かせない存在が日本語教師会だと言えるでしょう。ルーマニア日本語教師会は2005年に設立され、昨年法人化しました。ルーマニアには、国際交流基金やJICAなどの派遣教師はいるものの、母語話者教師の数は多くありません。ですので、教師会の活動もルーマニア人教師が中心となって行われています。教師会の主な活動には、シンポジウム開催、日本語能力試験協力、弁論大会主催(大使館との共催)、勉強会の実施などがあります。これらの活動を通して、教室実践に関する情報交換や他教育機関とのネットワーク構築が行われています。
  こうした教師会の活動やその運営に対する助言やサポートに加え、「情報提供」「教師の日本語力向上」「教授力育成」「ネットワーク形成の促進」が専門家に期待されています。これらのニーズに応えるため、他の教育機関を定期的に視察し、助言・情報提供を行っています。また、教師会と相談した上で、勉強会やセミナーなどを企画・開催しています。3月中旬、国際交流基金より派遣されているチェコの三上日本語教育専門家を招へいし、「オノマトペ」(擬音語や擬態語のこと。英語:onomatopoeiaの訳語である。オノマトペ(仏 onomatopee)ともいう。)に関する講義とワークショップをして頂きました。「オノマトペ」は教師にも学生にも大変人気が高く、講義での理論、ワークショップでの応用実践ともに大好評でした。3月下旬には、移動勉強会を試み、ブカレストから200キロ離れた地方都市、ヤシの教育機関で文脈中心の教室実践についてワークショップと授業デモンストレーションを行いました。この移動勉強会を通じて、60人ほどの日本語学習者と出会いましたが、それぞれの目的で熱心に学習に取り組み、目を輝かせながら授業に集中していた姿が印象的でした。5月からは、文法のテキストを読み込も、と読書会をスタートさせ、毎週90分、有志で集まった教師達が、例文や指導例を挙げながら白熱した議論を展開しています。

ルーマニア人教師中心の現場で

 ルーマニアの日本語教育を支えるのは、現地に根付いて活動するルーマニア人教師です。専門家は、彼らが自立化して日本語教育を担っていけるように、側面支援をしていくことが肝要だと実感しています。専門家による活動が、ルーマニア人教師に自己研鑚の機会を提供し、教師間の連携を促すことができたらと思います。そして、ルーマニア日本語教育発展の一助となるよう、今後も努めていくつもりです。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ルーマニアには、日本語を主専攻としている大学が2校(ブカレスト大学及びヒペリオン大学{第一外国語;主専攻はルーマニア語})、日本語を副専攻としている大学が3校(スピルハレット大学、デェミトリア・カンテミル大学及びバベシュ・ボヨイ大学)がある。その中においてブカレスト大学の日本語講座は、ルーマニア国内の日本語教育、日本文学研究の中心であり、常に他の日本語教育機関からその存在を意識されている。学生に対しては、日本語だけでなく日本文学、日本文化について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語講座での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
ロ.派遣先機関名称 ブカレスト大学
Bucharest University
ハ.所在地 Bulevard Mihai Kogalniceanu nr.36-46, Sector5, Bucharest
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
学科名称
ブカレスト大学外国語外国文学部東洋言語学科日本語専攻
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   副専攻:1975年から
専攻:1987年から
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1978年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ 常勤6名(うち邦人0名)
 
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   1年生:52名 2、3年生:各32名、4年生:19名
(2) 学習の主な動機 日本文化への憧れ、日本語そのものへの興味
(3) 卒業後の主な進路 ガイド、日本語教師、留学、日系企業に就職など
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 2~4名程度

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