世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)2011年3月ブカレスト大学‐秋田大学合同 アニメ制作プロジェクト

ブカレスト大学
山口 明

 ブカレスト大学日本語学科は、いくつかの日本の大学と協定を結び、日本の大学生との交流活動を実施しています。昨年は年賀状交換、TV会議などの活動を紹介しましたが、今回は秋田大学の学生5人が2011年3月、ブカレスト大学を約1か月訪問した時に実施したオリジナルアニメ制作プロジェクトを紹介します。

構想を練る学生達の写真
構想を練る学生達

 ルーマニアでは日本語を学ぶ大勢の学生が学習の動機として日本のアニメの魅力を挙げています。ワンピース、犬夜叉、ブリーチ、セーラームーン、ナルトなどが人気があり、日本語音声のまま、ルーマニア語字幕でテレビ放映されている作品もあり、大勢の若者が日本のアニメを楽しんでいて、オタクフェスティバル(http://otakufestival.com/2011/)、ニジコン(http://www.nijikon.ro/)など、日本のポップカルチャーのイベントも毎年開催されています。

 ブカレスト大学の文化祭では、自作のマンガやイラストの展示会も行われ、絵を描くことを得意としている学生も何人かいました。それで、秋田大学の学生の訪問に合わせて、日本人の学生と一緒にオリジナルのアニメを制作する活動を考えました。アニメ制作というと大掛かりな機材や、プロが使用する本格的なソフトが必要だと思われるかもしれませんが、全編が滑らかな動きのフルアニメーションを目指すのではなく、静止画をつなぐスライドショーの画面の切り替えを時々速くする程度のものであれば、パソコンやスキャナーなど通常の機材とフリーのソフトで十分に可能です。

 秋田大学の5人の中にも、絵が得意な学生もいて、ブカレスト大学日本語学科2年生の10グループの中に1人2グループずつ入ってもらって、アニメの制作がスタートしました。滞在期間に合わせて、制作期間が3週間とかなり短かったのですが、期限までにほとんどが、一週間後には10作品すべてが出来上がりました。

 原画、スクリプト、声の録音、音楽、効果音、パソコンでの編集などの作業を4~6人のメンバーが分担して、授業時間だけではなく、放課後や週末などにも集まらなければなりませんでした。画像や、動画の編集ソフトの操作に慣れていないグループもあり、苦労したようです。

 日本人学生が担当した作業は様々で、スクリプトの日本語の訂正、ストーリー作りの相談だけでなく、原画を描いたり、声を担当したりした学生もいました。全体としては、人数の差もあって、ルーマニアの学生の活動を日本人学生がサポートした形になりました。

日本人学生(手前)の説明を聞くの写真
日本人学生(手前)の説明を聞く

 時間は5分以内としましたが、内容については特に指定しませんでした。10作品を簡単に紹介すると…、「ラブストーリー」(男の子の告白を待ちきれない女の子がステーキになる)、「変なラブストーリー」(好きな男の子はタヌキだった)、「勝者の恋」(姫をめぐるサムライロボットのバトル)、「猫の女」(満月の夜、猫に変身して男の子に会いに行く)、「日常のまぼろし」(飼い主の恋ではなく犬の恋愛だった)、「海賊万歳」(海賊と忍者の戦いが愛に変わる)、「頭から」(ラーメンが地球を覆い、エイリアンが食べにくる)、「先生と学生の旅行」(学生たちが木の上から降りられないのに、先生は助けようとしない)、「日本人の旅行」(ルーマニアを旅行した日本人青年が帰国後ドラキュラになる)、「不思議な人形の物語」(人形遣いから逃げようとする人形に、双頭の猫が立ちはだかる)…と実に様々でした。

 この活動の第一の目的は、アニメ制作作業を通してルーマニア人学生と日本人学生が交流することにあったわけですが、その点ではグループによって程度に差はありますが、双方の学生とも一緒に作ることを楽しんだようです。コミュニケーションには日本語だけではなく、かなり英語も使われましたが、「次の機会には日本語だけで話したい」とフィードバックで書いた学生もいました。

 専用Webページにアップして、帰国後に遅れて提出された作品を見たり、各自で繰り返し見たりすることを可能にし、付属する掲示板にブカレストと秋田の双方からコメントを書き込みました。その後も何人かは個人的にメールやFacebookで引き続き連絡を取り合っています。

 アニメ世代の学生による、日本の学生と一緒にオリジナルアニメを制作するために日本語を使う活動でしたが、次回にはもっと時間をかけて、キャラ語尾によるキャラクター作りなども取り入れて実施したいと考えています。

 日本語弁論大会が各地で行われているように、日本語学習者による日本語アニメコンテストがあっても楽しいのではないしょうか。 

 スライドショーによる学生達の作品の紹介と、制作方法については2011年3月ブカレスト大学‐秋田大学合同 アニメ制作プロジェクトをご覧ください。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
UNIVERSITY OF BUCHAREST
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ルーマニアには、日本語を主専攻、あるいは副専攻としている大学が5校ある。ブカレスト大学の日本語学科は、ルーマニア国内の日本語教育、日本文学研究の中心である。日本語だけでなく日本文学、日本文化について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語学科での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。
所在地 Bulevardul Mihai Kogalniceanu nr.36-46, Sector 5, Bucharest
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、指導助手:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ブカレスト大学外国語外国文学部日本語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   副専攻:1975年から
専攻:1987年から
国際交流基金からの派遣開始年 1978年
コース種別
主専攻、選択
現地教授スタッフ
常勤5名 非常勤1名(うち邦人0名)
 
学生の履修状況
履修者の内訳   3年生:50名 2年生:55名 1年生:65名
学習の主な動機 日本文化への憧れ、言語そのものへの興味、など
卒業後の主な進路 大学院進学、留学、ガイド、日本語教師、日系企業に就職など
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2程度
日本への留学人数 8名程度

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