ブカレスト大学
黒田朋斎

ブカレスト大学日本語学科に専門家が派遣されてすでに35年以上が経過しており、専門家はブカレスト大学日本語学科の協力の元、活動を進めています。今回は1年目に本サイトでご報告した種がどのような実を結んだのかご報告します。

1. ルーマニア人学習者のための文型解説書出版

2014年の着任当初から、ブカレスト大学日本語学科のルクサンドラ・ライアヌ准教授と制作を進めてきた文型解説書『意味と機能からわかる日本語文型解説1』『同2』(以下、『文型解説1』『文型解説2』)が完成し、2015年末に出版されました。

『文型解説1』には、初中級から中級段階で学習する88文型、『文型解説2』には、中級から中上級段階で学習する118文型が掲載されています。そして、読者の方が学習の最中、「わからない」と思ったときにすぐに調べられるよう、五十音順の索引と意味機能別の索引を付けました。

これまでライアヌ先生が作成し、蓄積してきた授業プリントをもとにして制作したものですが、文型解説の見直しや例文づくり、そして本の構成など、数え切れないほどの打ち合わせを重ねた末、出来上がりました。

出版披露会の様子の画像
出版披露会の様子

実は、ライアヌ先生は、千々岩日本語指導助手とともに『初中級場面別語彙集かけはし』、そして単著で『上級日本語文型解説』も出版しました。それで、2016年6月3日にこれらの本の出版披露会を開催しました。出版披露会には、ブカレスト大学学長、日本大使館より参事官をはじめ、ブカレスト大学外国語外国文学部の先生方や出版社の方々、ブカレストの日本語教育機関、学生たち、そして友人、家族など80名近くが来てくださり、学長からは「ブカレスト大学日本語学科は設立40年を越え、成長し、強くなり、その中でこのような本の出版が可能になった」とのお言葉をいただきました。

著書を手に取った方々からは非常に有益だとの声をいただき、執筆に協力してよかったと喜んでいます。これらの著書がルーマニアの日本語学習者の助けになることを願っています。

2. 日本人学校との交流

日本人学校で水墨画を体験する学生の画像
日本人学校で水墨画を体験

ブカレスト大学日本語学科は日本人学校との交流を活発に進めてきました。この交流は学科の方針に基づいた活動であり、授業と関連付けられています。ルーマニア人教員の協力の元、2年生全員が参加し、効果を上げています。

前回のレポートで報告したインタビュー活動の翌月に、インタビューをした学生たちが日本人学校を訪問しました。その後、2015年11月、12月、そして2016年5月と定期的に訪問し交流活動を行っています。授業への参加だけでなく、子どもたちと一緒に書道や水墨画を体験したりゲームをしたりして子どもたちと触れ合いながら、交流の中で実際に日本語を使い、日本の学校文化を体験する機会をいただいています。

一方でこの交流は、日本語が「使えない」ことを学生たちが体験する機会にもなっています。子どもたちが話すスピードが速くて聞き取れない、子どもたち同士が話していることが理解できない、自分が話した日本語が相手に理解されない、はたまた、そうじを手伝いたいのに、どう切り出せばいいかわからず、やきもきする。こういったコミュニケーションがうまくできないことを体験することも、あるいはそれこそが、この交流の良さなのではないでしょうか。

学生たちは、交流に参加しながらも、先生と子どもたち、子どもたち同士の関係、日本の学校での生活をよく観察していて、以下の感想を寄せてくれました。

  • 子どもたちは礼儀正しいです。日本の礼儀を勉強しました。
  • 先生と子ども達の協力はすばらしかった。ルーマニアの教え方と違います。
  • 子どもたちに本を読みたい。
  • 大学で習った日本語は子どもたちの日本語と違います。

また、日本語話者とはなかなか出会えないルーマニアにおいては、日本語学習が教室内のことになりがちですが、この交流が始まってから学生たちには、自分たちのことを日本語で伝えることができる「相手」ができました。インタビュー活動後には、その内容を雑誌記事風にまとめたインタビュー集を制作して贈呈しましたし、先日はルーマニアの笑い話を日本語に翻訳し、それに絵を入れて手作りの絵本を作りました。そして、訪問時にその絵本を子どもたちにプレゼントしました。この絵本は、低学年の子が読むことを想定して、漢字の熟語などはあまり使わずに漢字にも振り仮名をつける工夫がしてあります。

この交流を通して、学生たちは私たち教師が教えられないことを多く学んでいますし、学習へのモチベーションも得ているようです。今後も交流が深まっていくことを期待しています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
University of Bucharest
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ブカレスト大学の日本語学科は、ルーマニア国内の日本語教育、日本文学研究の中心であり、日本語だけでなく日本文学、日本文化について幅広い知識を身につけるための教育が行われている。専門家は日本語学科での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師へのアドバイス等を行う。
所在地 Bulevard Mihai Kogalniceanu nr.36-46, Sector5, Bucharest
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
指導助手:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
ブカレスト大学外国語外国文学部日本語学科
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 副専攻:1975年から
専攻:1987年から
  国際交流基金からの派遣開始年 1978年
 
コース種別
  主専攻、選択
 
現地教授スタッフ
  常勤5名(うち邦人2名)非常勤3名(うち邦人1名)
学生の履修状況
  履修者の内訳 1年生:約50名
2年生:約40名
3年生:約30名
  学習の主な動機 日本文化への憧れ、言語そのものへの興味、など
  卒業後の主な進路 大学院進学、留学、ガイド、日本語教師、日系企業に就職など
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N3程度
  日本への留学人数 10名程度

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