世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ウラジオストク日本語教師会

極東国立総合大学 東洋学大学
宮本 洋子

ウラジオストック日本語教師会1の写真
ウラジオストック日本語教師会1

 日本海をはさんで新潟まで飛行機で2時間弱の距離にあるウラジオストクには、たくさんの日本語学習者がいます。初中等教育、高等教育、社会人など、さまざまです。日本語を教えるのはロシア人教師と現在10人以上いる日本人教師です。そして、その先生方のために「ウラジオストク日本語教師会」があります。

 この教師会の目的は、当地の日本語教育についての情報を共有する、日本語教育の問題や、教授法などについて考え、話し合うことです。1ヵ月から1ヵ月半に1回のペースで、この6月に17回目を終えました。内容は、現状報告あり、失敗談、成功談の披露あり、授業の進め方、評価の仕方、調査報告、誤用収集分析、日本語能力試験の問題分析、教材、文型に関する考察などなど、バラエティーに富んでいます。

 ウラジオストクでは、毎年、「ウラジオストク日本語スピーチコンテスト」があり、日本人教師への協力要請のため、必ず1回は教師会を開くことになっていました。2000年9月に私が赴任した際、2回目以降を続けることにし、正式に「ウラジオストク日本語教師会」として立ち上げました。

 この教師会にはロシア人の先生方もたまに参加しています。昨年は交流会をしましたが、毎回各機関に案内しているにも関わらず、参加する先生はまだまだ少ないのが現状です。教師の待遇、研究に忙しい、土曜日など個人的事情が優先されるということもあるようです。今後、ロシア人教師の参加をいかに促すかが課題です。

 集まりは任意ですから、会則も会費もありません。場所は私の勤め先である極東国立総合大学東洋学大学日本学部の教室を借りています。毎回2時間前後の集まりですが、先生方はとても熱心です。当地の年度末、夏休み前の6月には打ち上げパーティーで、難しい話抜きの慰労会となります。

ウラジオストック日本語教師会2の写真
ウラジオストック日本語教師会2

 この会を作ったことで、お互いにどういう状況で仕事をしているのかがわかり、共通の問題、個別の事情に関する認識を各教師が持てるようになりました。また、そうすることにより、ウラジオの全体像がつかめて、各々、自分はどういう位置で仕事をしているか客観的につかめたと思います。

 当地では文部省の留学試験などの情報は、総領事館から各大学に届けられるのですが、機関によっては、学生や現場の教師に知らされないことが珍しくありません。学生は去年先輩が受けた試験について日本人の先生を頼って質問してきますが、先生もその試験について詳しい情報を知らない、またはどんな種類の試験があり、自分が担当している学生はどの試験が受けられるのかわからないということがありました。各自必要が生じたときに総領事館に問い合わせるという状況でした。

 そこで、総領事館の文化担当との連絡を密にして、すべての試験についての説明をしていただき、資料を配布しました。それだけでなく、試験実施前に試験についてのお知らせ、日本文化・日本語に関する各種の催しも各教師に連絡するよう、私宛てに送られてきます。

 私はそれを先生方に送ります。こうすることで、情報を公開していない機関の先生は、情報を公開するよう、機関の責任者に要求することも出来るし、情報を逃さずにすむようになりました。

 教師会ができたことによって、先生方からも教材(貸出可)のこと、授業のこと、現場の人間関係のことなど、いろいろな相談事が個別に持ち込まれるようになりました。また、「こうあるべき」という意見も多く寄せられますが、すぐに実現可能なことと不可能なことを説明し、総領事館と現地採用の先生方の間で調整に疲れることもあります。

 それでも、ここで相談を受けるということは、頼りにされていることに他なりません。数々の要望や意見、相談事に対処することで、自分自身、日本語教師として、人間として成長させてもらったように思います。今後とも、情報発信ステーションとして機能する、みんなが成長できる教師会でありたいと願っています。

 最後にこの文章を読んだウラジオストクで日本語を教えたい、学生のことを知りたいという方のために、昨年の教師会共同調査報告、学生の「卒業後の進路について」を今年度の本事業「業務完了報告書」(国際交流基金日本語国際センター図書館にて閲覧可)に挿入予定であることをお知らせしておきます。そういえば、この"「業務完了報告書」の閲覧"も、もっと情報がほしいということで先生方に質問されたことのひとつでした。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 極東国立総合大学東洋学大学の前身である東洋学院が1899年に創設され日本語講座は開始された。以来、1992年のウラジオストク開放まで、この地で唯一の日本語講座を持つ機関であった。開放後は、主要な教育機関での日本語講座の開設や第2外国語としての日本語教育が始まったが、当大学は現在もシベリア・極東地域における東洋学分野の指導的立場を担っている。学生の質は高く、卒業生の中には日本語界に影響力のある者もいる。ただし、昨今の大量入学によるレベル格差が問題になりつつある。
 派遣専門家は、大学での授業のみならず、地域における教師会の運営、日本語能力試験他各種試験の監督、試験官、審査員等を行う。
ロ.派遣先機関名称 極東国立総合大学 東洋学大学
Far Eastern State University, Oriental Studies Institute
ハ.所在地 39 Okeansky Prospect, Vladivostok, 690600 Russia
ニ.国際交流基金派遣者数 NIS専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
日本学部
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1899年
(1939年~1956年閉鎖)
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1993年
(ロ)コース種別
4コース主専攻(日本文学、地域研究、日本経済との両立専攻)
(ハ)現地教授スタッフ
常勤24名(うち邦人4名)
非常勤1名(邦人1名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   258名(1年66、2年59、
3年42、4年45、5年46)
(2) 学習の主な動機 日本語を使う仕事をしたい、
日本への興味
(3) 卒業後の主な進路 教師、通訳、大学院進学、
留学、日本企業就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級
(5) 日本への留学人数 17名

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