世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ハバロフスク国立教育大学からの報告 ~派遣専門家の役割~

ハバロフスク国立教育大学
本間 郁子

ハバロフスク教育大学本館とプーシキン像の写真
ハバロフスク教育大学本館とプーシキン像

 極東ロシアの中心都市であるハバロフスク市は、地理的に日本から近いこともあり、日本との交流が盛んである。市民の日本への関心も高く、現在日本語学習者は増加傾向にある。ここ数年は日本からの観光客が増えており、日本語を学ぶ学生にとっては夏の観光ガイドが最も魅力的なアルバイトになっている。

 配属先であるハバロフスク教育大学は街の中心地にある。本館前にはロシアの国民的詩人プーシキンの像。学生の文学好きを象徴しているようだ。日本語学科の開設は1991年で、それ以来、当地方の日本語教育の中心的役割を担ってきた。市内で日本語を専攻できるのは国立大学では当大学だけであり、日本語学科は最も人気のある学科の一つとなっている。学生数は年々増えており、現在は1年生から5年生まで約180名が学ぶ。

 専門家派遣は1993年に始まり、毎年1名が派遣されている。専門家の主な役割は、学内においては中・上級学生の指導と若手現地教師の指導、さらに、日本語学科全体のレベルアップを図ることである。しかし現在のところ大学側から最も期待されているのは、教師不足という理由で学生の指導ということになってくる。今年は週10コマ(80分)を受け持ち、その他に留学生試験の対策授業、弁論大会出場者の指導、また、担当以外のクラスにゲストとして出席することもあった。

 慢性的な教師不足は待遇面の悪さによるもので、今に始まったことではない。しかしながら、当講座の卒業生を中心として、熱意のある教師が育ってきているのも事実である。学内では毎年外国語教授法に関する研究発表会が開かれてきたが、今年初めて日本語学科のみの教授法セミナーも行われた。今後ますます全体のレベルアップを図るために、専門家に寄せられる期待が大きくなるものと思われる。

ハバロフスク日本語学科学生の写真
ハバロフスク日本語学科学生

 派遣専門家は、学外においては日本語教師会のリーダーとしての役割が大きい。現在ハバロフスク市には現地採用や派遣プログラムで赴任している日本人教師がおり、「邦人日本語教師会」としての活動を行っている。これまで定期的に集まり意見交換を行ったり、有志で勉強会を開いたりしてきた。今年はさらに、「ハバロフスク市内弁論大会」を企画、開催した。これまで日本語関連の催しに対し現地教師は受身であったが、今回初めて「邦人日本語教師会」が中心となったことで、現地教師の積極的な協力を得ることができた。全体会としての「バロフスク日本語教師会」発足に向けて、第一歩を踏み出したと言えるのではないだろうか。

 現在のところ、日本語学科の学生を取り巻く状況は決して良いとはいえない。学生の多くは日本への留学を希望しているが、留学できるのはほんの一部である。飛行機でわずか2時間の距離にありながら、一般の学生にとって日本は簡単に行ける国ではない。また、日本語を学んだからといって即就職に役立つわけでもない。しかし、学生たちの顔に暗さはなく、熱心に日々の勉強に励んでいる。日本文化に興味をもち、日本語の授業が楽しいという学生が多い。こちらが熱意をもって接すれば、必ずその何倍もの喜びを学生は返してくれる。教育大学とはいえ、給料の安さから教師を希望する学生は少ない。しかし、「教師にはなりたくないと思っていたが、私も先生のような日本語の教師になりたい」と言ってくれた学生がいた。これは私にとって何よりも嬉しい褒め言葉である。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 ハバロフスク地方において、当大学は日本語教育の中心的役割を担っている。卒業時に日本語および英語教師の資格が得られ、現在大学等で活躍する日本語講師の半数は当講座の卒業生である。2001年度からは「通訳養成コース」が新しく設けられ、より実務的な日本語の専門家養成を目指すこととなった。
 派遣専門家の主な業務は中・上級の学生の指導で、本年度は3,4年生の授業を週に10コマ(80分/1コマ)担当した。また、経験の少ない若手の教師が多いため、教師に対する日本語の指導、授業のアドバイス等も行っている。
ロ.派遣先機関名称 ハバロフスク国立教育大学
Khabarovsk State Pedagogical University
ハ.所在地 Karl Marx st. 68 68000 Khabarovsk, Russian Federation
ニ.国際交流基金派遣者数 NIS専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
東洋語学部日本語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1991年
(2)専門家・青年教師派遣開始年 1993年
(ロ)コース種別
主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤  6名(うち邦人0名)
非常勤 2名(うち邦人0名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   183名(1年60、2年54、
3年28、 4年25、5年16)
(2) 学習の主な動機 日本への憧れ、日本留学、
日本文化への興味、通訳 
(3) 卒業後の主な進路 日本語教師、就職
(日本国総領事館、旅行社、ホテル)
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
(5) 日本への留学人数 4名

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