世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ノボシビルスク日本語教育事情

ノボシビルスク国立大学
深水 豊

東洋学学科日本文化の夕べの写真
東洋学学科日本文化の夕べ
1年生と筆者、国際週間・中国ブースでの写真
1年生と筆者、国際週間・中国ブースで

 ノボシビルスクはロシア中央のオビ川沿いに位置し、シベリア鉄道の拠点としても知られる西シベリア地方の中心都市です。人口135万人以上というロシアで第三の大都市ですが、首都モスクワからも極東地方からも飛行機で約5時間、在外公館も日系企業の進出もないといった土地柄から、在住日本人は留学生を含めても20人程度です。また、1年のうち半年は雪に閉ざされ、-20~30℃の寒い日が続く厳しい冬はまさに「シベリア」です。
 さて、私の派遣先・ノボシビルスク国立大学(以下、「当大学」と略す)はノボシビルスク市の郊外、車で45分の学術研究地区・アカデムガラドクにあります。ここアカデムガラドクは白樺の林に囲まれ、ロシア科学アカデミー・シベリア支部(以下、「シベリア支部」と略す)に属する28の研究所があり、その中心に当大学は建っています。
 そのような環境の中、当大学の人文学部東洋学学科は1999年の開設以来、非常に人気が高く、入学希望者は近年では定員の8倍にもなっています。学生は入学時に第1外国語として日本語・中国語・韓国語のうちどれかを選択します。そして、週14時間、第1外国語の授業を受け、そのほか専攻として「歴史学」または「言語学」の専門科目を受講します。日本語科では、3名のロシア人教師と私を含め2名の日本人教師が、50名の学生の指導に当たっています。
 アカデムガラドクでは毎年5月上旬が「国際週間」と銘打たれ、当大学とシベリア支部で様々な行事が行われます。今年は、当大学と提携している東北大学の尽力により和太鼓のグループが招かれ、大好評を博し、会場の人々は日本の「鼓動」を満喫しました。また、4年前から毎年春に日本語科の学生が企画・運営する「日本文化の夕べ」は、今年も「国際週間」の一環として催されました。このところ、ロシアでは日本のホラー映画が人気がありますが、「日本文化の夕べ」では、『日本の怪』をテーマに日本の怪談話をモチーフにした演劇、それから、日本の歌や踊りなどが披露されました。この行事の成功は、学生たちの自信と学習への喜びにつながっていくだろうと思います。
 一方、ノボシビルスク市全体では、8つの大学と3つの学校、そして、市立シベリア・北海道文化センター(以下、「センター」と略す)で日本語講座が開かれています。これらの機関では当大学の出身者のほか、今年で講座開設15年となるノボシビルスク国立教育大学の卒業生も教師として活躍しています。また、近年、ノボシビルスク国立工科大学も日本語教育に力を入れており、模擬日本語能力試験の2級に合格する学生も出てきました。
 ノボシビルスク日本語教師会は年に数回、教師勉強会を開いています。昨年度まではセンターに集まり派遣専門家が講義するという形でしたが、今年度から各大学持ち回りで、その大学の教師が日頃の成果を発表するという形へと発展しています。また、毎年4月には生徒・学生を対象に「日本語コンクール」を行っています。筆記テストの部では3年前から日本語能力試験の模擬試験を試行していますが、今年、4級から1級まで合わせて約260名の参加がありました。「日本語コンクール」が始まって10年ですが、これは過去最高の参加者数です。
 日本関連行事の多くは、教師会事務局の置かれるセンターで催されています。今年・2005年はノボシビルスク市と北海道札幌市の姉妹都市提携15周年という佳節に当たります。センターは両市の友情によって建設されたもので、今年で開館10周年を迎えます。昨年はノボシビルスク市長が札幌市を訪問しました。今年は、6月下旬に札幌市長一行がノボシビルスク市を訪れ、様々な行事が行われます。折しも戦後60年という時に当たっており、平和と友情の新たな誓いが結ばれることでしょう。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
専門家は日本語専攻の学生に対し日本語授業を行い、現地教師に対し授業コンサルテーションを行う。派遣先機関の日本語科は、1970年に開設され35年の伝統を有するシベリア屈指の日本語講座である。専攻・副専攻・選択を合わせると、130名以上の学生が日本語を学習している。特に専攻の学生は、シベリア各地のほかウラル山脈以西からも入学している。派遣先機関はシベリアにおける日本語教育・日本文化研究の中心であり、卒業生には東洋学研究者・日本語教師・翻訳者・通訳など数多くの人材を輩出している。
ロ.派遣先機関名称 ノボシビルスク国立大学
Novosibirsk State University
ハ.所在地 Pirogova str.2, Novosibirsk, 630090, Russia
ニ.国際交流基金派遣者数 NIS専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
人文学部東洋学学科・オリエントセンターおよび外国語学部英語学科
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1970年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 2000年
(ロ)コース種別
東洋学学科:専攻、オリエントセンター:選択、英語学科:副専攻
(ハ)現地教授スタッフ
人文学部:常勤4名(うち邦人1名)・非常勤2名、外国語学部:4名
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   主専攻で各学年10名・計50名、副専攻で50名、選択で35名
(2) 学習の主な動機 日本語・日本文化への関心、日本語文献講読上の必要
(3) 卒業後の主な進路 大学院進学、日本語教育機関に就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
主専攻で日本語能力試験2級に合格する程度
(5) 日本への留学人数 1~3名程度

ページトップへ戻る