世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) サハリンの日本人日本語教師に求められること

サハリン国立総合大学付属経済東洋学大学
成田高宏

経済東洋学大学キャンパスの写真
経済東洋学大学キャンパス

 サハリン国立総合大学が、総合大学として創立したのは1998年である。しかし、その前身である教育大学は、1947年に既に創設されている。現在、日本語教育が行われているのは、付属の経済東洋学大学であり、このキャンパスは、教育大学時代の1991年に旧豊原女子学校跡地に建てられた。ただ、日本語教育自体は、付属経済東洋学大学が建てられる以前の1989年から、東洋学部において行われている。現在は、5年制の「外国語学部日本語学科」と4年制の「東洋学部」で、毎年約200名弱の学生が日本語を学んでいる。日本語担当の講師は、ロシア人が8名、日本人は筆者を含めて2名。ロシア人講師には、経済東洋学大学の卒業生を採用する方針をとっている。その多くが20代の女性である。

 日本人教師が2名しかいないため、私たちの仕事は、ロシア人教師にとって難しいことのサポートとなる。初級であれば、ロシア人教師が主に文法や読解の授業を行い、日本人教師が発話練習やいわゆる活動の授業を行うというように分担されている。中級以上のクラスでは、ロシア人教師がメインとなる教科書を進め、日本人教師は生教材などを使用した授業を行うことが多い。多くの学生が、少なくとも週に一こまは日本人教師と接することができるように授業が組まれる。学生の日本語学習動機の維持に配慮し、文化面を強調した授業を行うなど、楽しみを伝える工夫を忘れないようにしている。

教室内掲示物の写真
教室内掲示物

 学外では、他機関の日本人日本語教師と協力し(といっても現在4名しかいないが)ニュースレターの執筆・編集や、イベントの企画・運営、勉強会などを行っている。現在は月に一度のペースで、会合が開かれている。前回の会合では、主に書道コンテストの審査や展示の方法について話し合いが行われた。

 日本語関係の最大の催しは、やはり弁論大会であろう。サハリンでの地方大会で上位に入賞した者は、極東・東シベリア弁論大会への出場権を得る。そこで入賞すると、さらにCIS弁論大会に出場することになる。派遣先機関からの出場者は、2年連続でCIS大会に進み、そこで前々回は2位、前回は3位という好成績を収めている。サハリン地方大会まで、学生への指導は教師間で分担されるが、極東・東シベリア大会の出場権を得て以降は、国際交流基金派遣の日本語教育専門家が課外の時間に指導にあたることになる。

 教員としての能力向上のための時間が取れない、教員が定着しにくい、など課題は山積みである。学生にしても、学年が上がるごとに日本語より英語に、日本企業より他の外国企業に目が向いてしまうことが多く、日本語学習動機の維持が難しくなってくる。派遣教師として求められることも決して小さいものではない。しかし、自分なりに工夫した授業の後で「面白かったからまたやりましょう」と学生に言われたり、弁論大会の前に指導した学生が「先生のおかげで入賞できました」と言ってくれたりしたときは、やはり、やりがいを感じるものである。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
サハリン州において唯一の国立高等教育機関で、当地の高等教育の中心的役割を担っている。サハリン日本語弁論大会や、日本語教育セミナー、日本語能力試験等、日本語教育に関わる諸活動は、当大学と外部機関とが協力する形で運営されている。多くの卒業生が主にサハリン内の教育界・経済界で活躍しており、サハリン社会への貢献度は高い。派遣専門家は日本語の授業のほかに、現地教師へのアドバイスや勉強会、教師会運営等を行っている。
ロ.派遣先機関名称 サハリン国立総合大学付属経済東洋学大学
Sakhalin State University,Institute of Economics and Oriental Studies
ハ.所在地 Prospect Kommunistichesky 33,Yuzhno-Sakhalinsk,RUSSIA
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
東洋学部 言語学科日本語専攻/東洋学科日本語専攻
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1989年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1993年
(ロ)コース種別
言言語学科/東洋学科: 主専攻
(ハ)現地教授スタッフ 常勤10名(うち邦人2名) 
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   4年制、5年制とも各学年20名程度
(2) 学習の主な動機 「就職に有利なため」「日本への憧れ」
(3) 卒業後の主な進路 外資系企業就職、ロシア企業就職、日系企業就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級を受験可能な程度
(5) 日本への留学人数 長期3名 短期36名

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