世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「日本に一番近い外国」サハリンでの日本語教育

サハリン国立総合大学付属経済東洋学大学
渡邉康二

 札幌、函館から飛行機で1時間。サハリン州の州都ユジノサハリンスク市には、天然ガス開発に携わる大手商社を始めとする日本企業や合弁企業、そして総領事館、北海道庁事務所などの公的機関が数多く存在しています。街中には非常に多くの日本車が走り、樺太時代の名残をのこす日本風の建築物もあります。ロシアの中で、日本とこれほど深く結びついている地域はほかにないと言ってもいいかもしれません。

 当地での日本語教育は、私が派遣されているサハリン国立総合大学経済東洋学大学の前身であるサハリン教育大学時代の1989年から行われています。現在は、5年制の「外国語学部日本語学科」と4年制の「東洋学部」で、毎年約200名弱の学生が日本語を学んでいます。日本語学習の動機としては、「日本語を使った仕事につきたい」「日本の文化や風習をもっと知りたい」など、サハリンと日本の地理的・経済的な結びつきの強さを反映したものとなっています。

極東東シベリア弁論大会の写真
極東東シベリア弁論大会

 日本語担当の講師は、ロシア人教師が8名と日本人教師が私を含めて2名です。日ロスタッフが協力しながら日々の学生への授業業務に取り組んでいるほか、現地教師への日常業務に関する相談に対し、助言をします。また、サハリン日本語スピーチコンテストや極東・東シベリア地域日本語弁論大会の出場者への指導や大会の運営や現地の日本語教師向けの勉強会などを通して、地域の日本語教育が盛んになるよう、支援をしています。

 去る2008年10月には当地において極東・東シベリア日本語弁論大会が開催されました。サハリンから出場の学生は惜しくもCIS大会に駒を進めることはできませんでしたが、サハリンで日本語を学ぶ人々にとって今大会が大きな刺激となったようです。

 学外の活動では、他機関の日本人日本語教師と協力してイベントの企画・運営や勉強会などを行っています。今後はこれらの活動にロシア人教師を巻き込み、当地の日本語教師会活動の基盤を安定的なものにしていくことが課題です。学外での取り組みの一つとして、「日本語会話クラブ」をご紹介したいと思います。

日本語会話クラブ中で作成した作品の写真
日本語会話クラブ中で作成した作品

 「日本語会話クラブ」は、当地日本人会などの協力を得て、当地に在住する邦人の方々と日本語学習者との交流を目的として、毎月1回開催しています。学習者に日本語練習の機会を提供するだけでなく、当地の日本語人材の有効な活用を促進できればと考えています。

 日本語教育は専門家によってだけ行われるというわけではありません。地域社会に日本語教育の現状を発信し、当地に住む日本人の皆様にご理解とご支援をいただきながら、地域に貢献する日本語教育のあり方を模索していくことも、私たちの大きな使命であると考えています。

 今後も、教師の技術向上と学習環境の整備に努めながら、地域内での連携を深めていき、地域社会と日ロ両国の要請に応えられるような日本語の人材を育てていくことを目標としていきたいと思います。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
サハリン州において唯一の国立高等教育機関で、当地の高等教育の中心的役割を担っている。サハリン日本語弁論大会や、日本語教育セミナー、日本語能力試験等、日本語教育に関わる諸活動は、当大学と外部機関とが協力する形で運営されている。多くの卒業生が主にサハリン内の教育界・経済界で活躍しており、サハリン社会への貢献度は高い。ジュニア専門家は日本語の授業のほかに、現地教師へのアドバイスや勉強会、教師会運営等を行っている。
ロ.派遣先機関名称 サハリン国立総合大学付属経済東洋学大学
Sakhalin State University,Institute of Economics and Oriental Studies
ハ.所在地 Prospect Kommunistichesky 33,Yuzhno-Sakhalinsk,RUSSIA
ニ.国際交流基金派遣者数 ジュニア専門家:1名
ホ.日本語講座の所属学部、
  学科名称
東洋学部 言語学科日本語専攻/東洋学科日本語専攻
ヘ.日本語講座の概要
(イ)沿革
(1)講座(業務)開始年   1989年
(2)専門家・ジュニア専門家派遣開始年 1993年
(ロ)コース種別
言語学科/東洋学科: 主専攻
(ハ)現地教授スタッフ
常勤10名(うち邦人2名)
(ニ)学生の履修状況
(1) 履修者の内訳   4年制、5年制とも各学年20名程度
(2) 学習の主な動機 「就職に有利なため」「日本への憧れ」
(3) 卒業後の主な進路 外資系企業就職、ロシア企業就職、日系企業就職
(4) 卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級を受験可能な程度
(5) 日本への留学人数 30名程度

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