世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ハバロフスクにおける日本語専門家の役割

極東国立人文大学
安河内貴子

 ここ数年、中国語人気におされ、ハバロフスクでは、大学で日本語を専攻、選択する学生はやや減少気味です。しかし、日本に対する興味・関心は大きく、街中で日本語ができる人に出会うことも珍しくありません。また、在ハバロフスク総領事館(以下、総領事館)が主催する文化行事には今年も多くの人々が訪れ、会場からあふれんばかりのにぎわいで、次回が期待されています。

 日本語専門家(以下、専門家)が、派遣先の極東国立人文大学に求められている主な役割は、2、3、4年生の会話の授業、日本語クラブの顧問、現地教師へのアドバイスです。その他、希望者対象の日本語能力試験受験対策クラス、日本語弁論大会出場者の指導、折り紙のデモンストレーションなども行っています。

 今年度は、学生からの要望で、5年生の後期の授業も受け持つことになりました。卒業年度の5年生の後期は、授業期間がやや短い中、皆、非常に熱心に、学生最後の日本語の練習に取り組みました。

「夜中の博物館」折り紙体験教室の準備の写真
「夜中の博物館」折り紙体験教室の準備

 また、今年度は対外的に折り紙のデモンストレーションをする機会が数回ありました。まず、2月と4月に、高校生向けの学部・学科紹介で、日本語学科は、学生と共に折り紙を紹介しました。それから、5月の博物館の日の行事として、市内の美術館で「夜中の博物館」というイベントが開催された時にも、日本語クラブの学生と共に折り紙の体験教室を行いました。土曜の22時から翌2時までという深夜に行われたイベントで、他にも様々な体験教室が行われましたが、私たちの部屋では、ハバロフスク在住邦人の方による書道体験教室も行われました。どちらのグループも順番待ちの人が机を囲み、中には日本語であいさつをする人もいて、ここでも日本に対する興味・関心の大きさを感じました。

日本語クラブのイベントでお客様を迎える学生たちの写真
日本語クラブのイベントでお客様を迎える学生たち

 日本語クラブは、今年度、1年生の参加が多く、今後の活動に期待が持てます。週1回の活動には、大学の学部生だけでなく、他機関の学生や日本人留学生、さらに、在住の日本企業の方も時々参加してくださり、学生たちはとても楽しみにしています。在留邦人との交流イベントは、ほとんど学生たちだけで開催できるようになり、邦人の入れ替わりが頻繁な当地で、新しくいらした邦人とのパイプ作りだけがイベント時の教師の役割だったといってもいいほどです。

 専門家の役割は、大学の正規授業や特別クラス、課外活動を含む教授活動、上記のような活動のほか、様々な日本語関連事業の実施、現地邦人とのパイプ役なども含まれています。

 日本語関連事業は、派遣先大学と総領事館、また、他機関の教師とが協力し合って実施されていますが、これらの活動を行う上で大切なのは、様々な活動を裏で支えること、現地機関が主導する立場になるようアレンジすることだと思います。

 例えば、昨年度、それまでハバロフスク日本語教師会と総領事館との共催で開催されてきた、最も大きなイベントであるハバロフスク日本語弁論大会を、派遣先大学の主催(総領事館との共催)で行うことにし、大学の日本語学科の教師を始め、学部長、国際部職員、そして学生たちの協力のもと、全員が大会開催を盛り上げました。今年は、その昨年度の経験を踏まえ、早くから準備を始め、よりよい大会開催となったと思います。

 こういった経験を通じ、ハバロフスク日本語教育の中心を、徐々に現地に移行する時期にきていると思われる現在、当地の関係機関がさらに連携、協力し合いながら日本語教育を発展させていかなければならないと、昨年度以上に感じています。このような中での、専門家の重要な仕事は、教師のサポート、そして、大学と、総領事館や他校の教師、大会を後援してくださる日本企業とのパイプ役です。人と人とを繋ぐだけでなく、関係者がスムーズに仕事ができるよう調整することがこれまで以上に重要になっていると思います。

 また、今年度は、日本人教師が不在となったハバロフスク日本センターで、他機関の教師と共に数回の特別講座にも協力しましたが、年々日本人教師が減少している当地では、このようなお互いの協力も、今後ますます重要になってくるでしょう。

 今後、これまで以上に、派遣先大学と、総領事館や日本企業、現地邦人との関係がより確かなものとなるよう、そして更なる現地化を目指して活動していかなければならないと思っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 極東国立人文大学
Far Eastern State University of the Humanities
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ハバロフスク地方における日本語教育の中心的役割を担う。2001年度からは「通訳翻訳コース」が設置され、より実務的な日本語の専門家養成を目指すこととなった。ジュニア専門家は、通常授業のほか、日本語能力試験対策講座、弁論大会出場者指導なども行う。また、学生有志の集まりである日本語クラブの活動もサポートしている。その他、学部の研究発表会では、発表を行うだけでなく、日本の外国語教育事情について紹介したりもする。 
所在地 68 Karl Marx St., Khabarovsk, Russia, 680000
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋語学部日本語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1991年
国際交流基金からの派遣開始年 1993年
コース種別
主専攻
現地教授スタッフ
常勤 12名(うち邦人0名)、非常勤 4名(うち邦人0名)
学生の履修状況
履修者の内訳   1年18名、2年12名、3年25名、4年19名、5年13名
学習の主な動機 通訳者・翻訳家希望、日系企業への就職希望、留学、日本文化への興味
卒業後の主な進路 旅行社、ホテル、一般企業
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験2級程度
日本への留学人数 3名

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