世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ロシア各地の日本語教育

モスクワ国立大学校アジアアフリカ諸国大学
荒川 友幸

ロシア各地の日本語教育

 私のロシア滞在もふと気づくとほぼ2年となった。今年も昨年と同様、モスクワで日本語授業、教員研修をしながら、ロシア各地に出張し、日本語教育状況視察、教員研修などを実施してきた。

 最近訪問したのは、たとえばカザン、アストラハン、ペルミなど。カザンはモスクワから東へ約800キロ行ったところにある人口100万の大都市で、地下鉄が走っている。この街にあるカザン連邦大学では、日本で博士号をとったロシア国籍の先生と、若い日本人教師が熱心に日本語を教えていた。

 また、アストラハンはカスピ海、カザフスタン国境に近い地方都市で、つい最近神奈川大学と協定を結び留学生が来るまでは、日本人は皆無という状況であった。ここでも日本留学の経験があるロシア人の先生たちと不利な条件をものともせず一生懸命に日本語を勉強する学生たちに会った。現代日本文化に関する講演と公開授業等を実施した後、初対面の若いロシア人の先生たちと夕食を共にし、実に愉快な時間を過ごした。アストラハンというロシアに来るまでは聞いたこともない街で、気心が通じ合う先生たちと会い、熱心なかわいい学生たちに日本語を教える。なんと不思議な人生かと感慨を覚えた。

シュコーラでの日本語授業風景の写真
シュコーラでの日本語授業風景

 ペルミでは2人の若い日本人の先生がシュコーラ(11年制の学校)で日本語を教えていた。ペルミはモスクワから東に1400キロほどの距離にある大都市であるが、滞在する日本人はこの二人だけ。教員や学生たちといい関係を作り、立派に民間大使としての役割を果たしていた。このシュコーラの校長はたいへん活動的な人である。この校長が自分の学校で日本語を教えたいと思い、教員の手配などを自分で全部こなしてそれを実現した。学校を訪問した際には、日本語を勉強している学生が学校の中を案内してくれた。彼女の日本語はプロの私が感心するほど流暢であった。

 このようにロシア各地の日本語教育は多彩な人材に支えられている。私は各地に出張し、彼らと知り合い、交流を深める中から、彼らの日本語教育に対する熱意と献身に深い敬意を感じるようになった。今後も、ロシアの日本語教育の活性化支援という役割を果たすため職務に励んでいきたい。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 モスクワ国立大学校アジアアフリカ諸国大学(略称:ИСАА・イサー)
Institute of Asian and African Countries, Moscow State University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
本学はモスクワ国立大学の学部を構成する諸機関の一つ。東洋、アフリカ地域を対象とした研究と教育の2つの役割を担っている。また、全ロシアの東洋・アフリカ研究の教育指導機関であるため、同国の言語教育の共通シラバス策定も行う。日本研究、日本語教育では文学作品の翻訳、教科書の執筆、通訳等の活動で著名な教授陣を揃え、1950年代からロシアの当分野を牽引してきた。専門家はここで日本語を教えると共に、ロシア連邦(極東、シベリアを除く)、旧CIS諸国の日本語教育アドバイザーを兼務。セミナーへの出講、教師研修への協力、各地の日本語教育事情調査、日本語関連行事への助言等を実施。
所在地 Russia, 125009, Moscow, Mokhovaya Str. 11
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
モスクワ国立大学校アジアアフリカ諸国大学
*学習者は日本語・日本文学専攻、歴史専攻、社会・経済専攻の3つのグループに分かれる
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1956年
国際交流基金からの派遣開始年 1993年
コース種別
専攻
現地教授スタッフ
学生の履修状況
履修者の内訳  
学習の主な動機 日本・日本語・日本文化への関心
卒業後の主な進路 進学、教員、マスコミ、外務省、一般企業、日系企業
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N1~N2程度
日本への留学人数 年間20名程度

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