世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 自立化・現地化への日本語教育側面支援―ロシアの真ん中で―

ノボシビルスク国立大学
宿利 由希子

ノボシビルスクは西シベリアに位置し、ロシア第3位の人口を誇る大都市です。また、派遣先であるノボシビルスク国立大学(以下、NSU)は、西シベリアでも屈指の有名総合大学です。そのNSUで日本語教育が始まったのは1970年で、すでに40年以上の長い歴史があります。現在NSUでは、人文学部東洋学科で50名ほどの学生たちが主専攻として、また外国語学部で40名ほどの学生たちが第二外国語として日本語を勉強しています。さらに、2011年、国際部日本文化センターが大学敷地内に開設され、NSU他学部の学生や地域住民のために日本文化コース、日本語コースなどが開設されています。ロシア人の先生方は大変熱心でレベルが高く、その多くが国際交流基金(以下、基金)の教師研修に参加しています。また、日本語専門家(以下、専門家)の派遣開始から10年以上が経過し、支援の効果も現れてきています。

専門家は、NSU人文学部東洋学科での日本語授業を受け持つほか、アドバイザーとしてノボシビルスクでの日本語教育関連事業の運営支援や、西シベリア他都市の日本語教育機関支援などの業務に携わっています。日々、ノボシビルスクで日本語教育の自立化・現地化のための側面支援を行うとともに、ノボシビルスク周辺の西シベリア地域の日本語教育の普及・発展に努めています。ここでは、専門家の業務の一部をご紹介したいと思います。

<1>NSU

教壇から見る、東洋学科の学生たちの写真
教壇から見る、東洋学科の学生たち

専門家は、人文学部東洋学科では特に日本への留学のための学習や業務の自立化・現地化に力を入れています。現在、交換留学提携を結んでいる大学はありますが、人数が限られるので、すべての留学希望者が留学できるわけではありません。学生たちが自分の専門に合った大学、大学院に留学できるようなシステム作りが必要です。書類審査に結果が必要となる日本語能力試験の対策強化、志望動機などが自分で書けるようになるための日本語学術論文の授業の充実、学術提携大学である東北大学の協力を得た留学情報収集システム作り、その他基本的な書類の書き方の指導など、やるべきことは多岐にわたります。一人でも多くの優秀な学生が、日本で夢をかなえてくれたらうれしいです。

<2>シベリア日本語教育協会

シベリア日本語教育協会(以下、教育協会)は、ノボシビルスクの日本語教育機関を中心に、16機関が加盟する2006年に誕生した日本語教師の協会です。シベリア地域における日本文化・日本語への関心を高め日露文化交流を促進すること、教師間の交流を支えること、優秀な日本語学習者を育成することなどを目的として、様々な事業を実施しています。

教育協会は、ほぼ毎月行われる教師会、日本語能力試験、日本語シンポジウム、日本語弁論大会など、基本的な業務はほとんどロシア人の先生方で運営される、レベルの高い協会です。しかし、一方で、これから何を目標にどこへ向かっていくのか、ロシア人の先生方のモチベーションをどう維持していくかなど、今後の方向性が課題になっています。

現在も試行錯誤の真っただ中にありますが、1案として「研究プロジェクト」が立ち上げられました。ロシア人の先生方と、ノボシビルスクに住む日本人教師、そして日本の研究者が共同で日本語教育に関する研究をするというものです。日本側が求める形にロシア側が合わせるという今までのスタイルとは違い、協働からお互いが学び合える場が作れるのではないか、そして、日本の研究者たちとの継続的な関係づくりにつながるのではないかと期待しています。

<3>西シベリア他都市の日本語教育機関

クラスノヤルスク、シベリア連邦大学日本文化センターでの書道体験クラスの写真
クラスノヤルスク、シベリア連邦大学日本文化センターでの書道体験クラス

専門家は現地視察のため、また教師セミナーや出張授業などの現地の要望に応えるため、ノボシビルスク周辺の西シベリアの都市を訪問します。「ノボシビルスク周辺」と言っても、ロシアは大きく、シベリアは広大です。シベリア鉄道で片道10時間、現地でぎっしり詰め込まれたスケジュールをこなし、10時間かけてノボシビルスクへ、その足でNSUの授業…と、さすがに辛い時もありますが、先生方の熱意と学生たちの笑顔に支えられ、今日もシベリアを駆け回っています。

今後、すでに基金が把握している日本語教育機関への支援強化はもちろん、まだ把握していない教育機関に関する情報収集にも力を入れたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Novosibirsk State University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
NSUの日本語講座は、西シベリア地域の日本文化研究・日本語教育において中心的役割を果たしている。多くの卒業生が東洋学研究者、日本語教師、翻訳・通訳者として活躍している。専門家は、人文学部東洋学科での日本語授業の他、スピーチ指導、留学相談、また現地教師への教材や授業についてのコンサルティングなどの業務を行う。
所在地 Pirogova str.2,Novosibirsk,630090,Russia
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
人文学部東洋学科(以下、東洋学科)、外国語学部歴史と類型学学科(以下、外国語学部)、国際部日本文化センター(以下、センター)
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1970年
国際交流基金からの派遣開始年 2000年
コース種別
東洋学科:主専攻、外国語学部:副専攻、センター:夜間一般
現地教授スタッフ
東洋学科:5(邦人1)、外国語学部:4(邦人1)、センター:3(邦人1)
学生の履修状況
履修者の内訳   東洋学科:約50、外国語学部:約40、センター:11
学習の主な動機 就職の手段としてではなく、日本語や日本文化への関心から
卒業後の主な進路 大学院、留学、翻訳・通訳者、教師(家庭教師含)、一般企業
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
東洋学科の場合、日本語能力試験N1、N2合格
日本への留学人数 年間5~7名程度

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