世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)遠隔地への日本語教育支援

モスクワ市立教育大学
山口敏幸

JF日本語講座の運営担当からアドバイザー業務担当に変わってから、半年以上が過ぎた。この間、ロシア国内8都市と近隣のアルメニアに出張し、日本語の先生方への研修やデモ授業、日本語事情の視察などを行った。しかし、ロシアは広く、どこへ行くにも時間がかかる。モスクワでも大学の授業や教授法講座を行っているため、出張先に長くとどまって指導するわけにもいかず、ほとんどが「とんぼ返り」である。まだまだ行かなければならない都市は多く、月に一度のペースで出張しても、残りの任期ですべての都市を回りきることができるかどうか・・・。

このような遠隔地への日本語教育支援の一つの試みとして、この春、オンラインによる教師研修を始めた。きっかけは、モスクワから飛行機で2時間ほどのところにあるペルミの日本語教育の動きである。ペルミでは、現在、第2ギムナジア(初中等一貫校)で課外活動として日本語の授業が行われているが、これを第2外国語として正規科目にしようという動きが起こった。そして、正式に認められるための一つの条件として、教師の教育能力を示す何らかの「証明」が必要とのことで、国際交流基金モスクワ日本文化センター(以下、センター)に協力依頼が寄せられたのである。

センターで検討した結果、毎年3月から実施している初級日本語教授法講座(以下、講座)にペルミの教師にもオンラインで参加してもらい、修了後に授与する「修了証」をもってその「証明」とすることになった。また、これを機に、研修を必要としているロシア国内をはじめCIS諸国にまでオンラインでの参加を呼び掛けようということになり、通常の受講生募集とは別に、オンライン講座として受講生の募集が行われた。定員10名はすぐに埋まり、合わせて30名で講座はスタートした。

講座は今も続いているが、オンライン講座のほうは必ずしも順調には進んでいない。教室内の音の反響による聴き取りづらさの問題や、教室の受講生への対応に追われ、オンラインでの受講生に対する対応がおろそかになるなど、解決しなければならない問題も多い。しかし、これまで、まとまった研修を受ける機会のなかった遠隔地の先生方にその機会を提供したということは、意義のあることだと考えている。

ただ、オンラインでの研修を始めたからと言って、出張がまったく必要なくなったとは考えていない。現地に出かけて行って、直接先生方とお会いしてお話しをすることは大事である。お話しする中から現地のニーズや問題点が浮かび上がってくることも多いし、広いロシアで孤軍奮闘する先生方を励ます意味合いもある。そして、こうした一回一回の出張によってできあがったネットワークを通して、それ以後、情報提供などの継続的な支援が可能になるのである。

これからも大事な仕事として「とんぼ返り」の出張を続けていきたい。

授業の様子
日本語の授業を受ける生徒
(ペルミ第2ギムナジア)

 

教室の写真
カザン連邦大学の日本語教室

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 モスクワ市立教育大学(略称:MGPU
Moscow City Teachers’ Training University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
派遣先機関であるモスクワ市立教育大学では、初等・中等教育の日本語教員育成を目的に、各学年20~30名の学生に日本語教育が行われており、日本語上級専門家も授業を担当している。また、同大学内で開講されているJF日本語講座への協力や、ロシア各地及びアルメニアに出張し、日本語セミナー、デモ授業、日本語事情調査などの業務を行っている。
所在地 Russia, 105064,Moscow, M.Kazenny per., 5
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2012年

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