世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)サハリンの日本語教育事情②

サハリン国立総合大学付属東洋学・観光サービス大学
山崎紀子

日本から見るとロシアは「遠い国」というイメージがありますが、晴天の日には稚内市の宗谷岬から肉眼でサハリン島が見えると言われているくらい実は距離的(約43キロ)に近いのです。また、島の南部が戦前日本の領土であったことから、州都ユジノサハリンスクには日本時代の面影がまだ残っており、日本企業の事務所、天然資源開発からなる日露合弁企業や日本総領事館も存在します。さらに日本関連のイベントがあれば、日本に関心がある多くのロシア人が集まり、近いのは距離だけではないことが分かります。

あらゆる分野で日本との結びつきが強いサハリンにて、専門家として様々な支援活動をしていますが、現在は特に日本語教育の質を向上させることと日本語学習者を増やすことの必要性を強く感じています。

派遣大学について

派遣大学であるサハリン国立総合大学はサハリン州唯一の国立大学であり、日本語教育の中心となっています。国際交流基金の専門家派遣開始から20年以上経ち、日本語教育・日本語関連事業は現地教師が中心となって行っており、自立化・現地化はかなり進んでいます。

ロシアはソ連崩壊の社会不安から出生率が低下し、その影響かここ数年、日本語履修者の数も減り続け、5年前と比べても半分ほどになっています。東洋学部では言語学科と東洋学科で日本語を学ぶことができますが、昨年度から入学者は東洋学科だけとなりました。2月に東洋学部のキャンパスで行われたオープンキャンパスに協力しましたが、これで来年度の入学者数が一人でも増えてくれればと願うばかりです。

サハリン国立総合大学東洋学部キャンパスの画像
サハリン国立総合大学東洋学部キャンパス

今年の2月に行われたオープンキャンパスの様子の画像
今年の2月に行われたオープンキャンパスの様子

シュコーラへの支援について

専門家として、初中等教育機関(以下、シュコーラ)への支援は欠かせません。今年度も様々な支援を行いましたが、以下1)教員セミナー、2)シュコーラでのイベント協力、3)派遣大学でのオリンピアーダの準備・運営について紹介したいと思います。

1)教員セミナー

昨年に引き続きシュコーラと幼児教育機関の教師対象にセミナーを開催しました。目的は教師のレベルアップ、そして助言や情報提供を行うことです。本年度は日本語能力試験の対策授業案と初級学習者に対する指導のポイントについての講座を担当しました。

2)シュコーラのイベント協力

サハリン市内の9番学校にて詩の暗唱コンテストの審査員と日本語オリンピアーダ(オリンピック)のための試験問題作成・採点を行いました。オリンピアーダとは、ロシアのシュコーラで盛んに行われているスポーツや学問の大会で、成績によっては大学入試の合否や奨学金などに影響します。今回の試験内容は日本語能力試験N5程度でしたが、参加者はとてもいい成績を収めていました。

3)派遣大学でのオリンピアーダ開催

昨年は日本の世界遺産がテーマでしたが、今年は日本の映画をテーマにしたオリンピアーダを開催しました。アニメに関する問題は正解率が高く、子どもたちに日本のアニメが浸透していることが窺えます。

その他活動について

今年度は総領事館の広報閲覧室をお借りし、日本語能力試験N3試験対策講座(週2時間×5回)を行いました。受講者は主に日本センターと派遣大学の学生で、出席率はほぼ100%でした。時間が10時間しかなかったので、毎回ポイントを絞って問題のパターンと説き方のコツを指導しました。来年度も続けたいと思っているので、現在計画を立てているところです。

以上、紹介させていただいたのは今年度行った支援活動の一部です。来年度も日本語教育の質を向上させ、日本語学習者を一人でも多く増やすために、日本語教育の普及・発展に貢献していきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 サハリン国立総合大学付属東洋学・観光サービス大学
Sakhalin State University, Institute of Asian Studies and Hospitality
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
サハリン州において唯一の国立高等教育機関で、当地の高等教育の中心的役割を担っている。サハリン日本語弁論大会や、日本語教育セミナー、日本語能力試験等、日本語教育に関わる諸活動は、当大学と外部機関とが協力する形で運営されている。多くの卒業生が主にサハリン内の教育界・経済界で活躍しており、サハリン社会への貢献度は高い。日本語専門家は日本語の授業のほかに、現地教師への助言や情報提供、教師会運営等を行っている。
所在地 Kommunisticheskiy Prospekt33, Yuzhno-Sakhalinsk, 693000, Russia
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
東洋学部 言語学科日本語専攻/東洋学科日本語専攻
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 1989年
  国際交流基金からの派遣開始年 1993年
 
コース種別
  言語学科/東洋学科
 
現地教授スタッフ
  常勤9名(うち邦人2名)
学生の履修状況
  履修者の内訳 主専攻で各学年9~15名
  学習の主な動機 日本文化への興味、元残留邦人の子孫
  卒業後の主な進路 企業就職(日系含む)、教員、大学院進学、日本留学
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
N2受験が可能なレベル
  日本への留学人数 15名程度

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