世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 学習動機付けと連携強化の場としての弁論大会

キエフ国立大学
斎藤 誠

第17回ウクライナ日本語弁論大会・会場風景の写真
第17回ウクライナ日本語弁論大会・会場風景
第1回GUAM諸国合同日本語弁論大会・会場風景の写真
第1回GUAM諸国合同日本語弁論大会・会場風景

今年度(2012-13年)は、ウクライナで日本語弁論大会が2回行われた年になりました。毎年9月下旬に開かれている「ウクライナ日本語弁論大会」(以下、ウクライナ大会)は、2012年で17回目となりました。それに加え今年度は、4月27日に「第1回GUAM諸国合同日本語弁論大会」(以下、GUAM大会)がキエフ国立言語大学で行われました。今回、ウクライナや近隣諸国の日本語学習者の動機づけがこれほど強く現れたことはなかったと確信しています。「GUAM」とは、近隣国であるグルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバの国名の頭文字を取ったもので、国際機関の名称にもなっています。GUAM大会はこの4か国にベラルーシを加えた5か国の学生たちにより行われました。この企画は、昨年3月の日本語教育セミナー(2012年の拙レポート参照)で会同した隣国の日本語教師たちのグループが提案、実現したものです。短い準備期間でしたが、主催校、関係諸機関などのご尽力により成功裏に終了、予想以上の盛り上がりを見せました。

スピーチ形式は、テーマに沿ってスクリーンを使うプレゼンテーション形式を採用し、テーマは「私の中の日本」。出場した15名は皆、画面を効果的に使っていて、審査員や参加者からも好評を頂きました。私が聞いた中で印象的だった感想は、スピーチを聞きに来ていたウクライナの学生たちが「他国の学生たちがこれほどまでに上手なのか」と驚いていたことです。そこで「負けられない!」という気持ちが出て、これからの学習に生かして欲しいところです。大会を通じて学生同士に友情も生まれたようで、これからもこの情熱が冷めないよう、継続されればと思います。今回の優勝は、キエフ国立言語大学のログビネンコ・アンナさん。6位までの入賞者にアゼルバイジャンから2名入るなど、実力伯仲の大会となりました。この大会はオリンピックのように毎年開催国を変え、開催していく予定です。各国から集まった先生方も、来年の第2回へ向けて話し合いを始めるなど、横の連携が深まっていると感じました。

2012年9月のウクライナ大会では、出場者20名中、リヴィウ国立大学のパーニキウ・ユリアーナさんが優勝しました。例年、首都キエフの大学に所属する学生が優勝することが多いのですが、今回、地方大学の出場者がその実力を見せました。彼女は翌月行われた「第25回モスクワ国際学生日本語弁論大会」(CIS諸国から代表者が出場する大会)にウクライナ代表として出場し、20人中見事6位に入賞。これまでなかなか入賞までは至らなかったウクライナ代表ですが、確実に実力が上がっている証左ではないかと感じています。何よりキエフ以外の大学生が活躍したことが、特筆すべき点です。

スピーチの練習や指導は、ウクライナ大会の場合、5月から始まります。5月末までに出場者を学内で選抜し、内容、原稿を何度も修正し詰めていきます。原稿が固まっても、発音や表現など、練習すべきことはたくさんあります。1回の練習が2時間に及ぶこともあり、学生にとっても大変厳しいものだと思います。しかし、それを乗り越え、いざ本番になると強さを発揮します。演台で話している姿は凛々しく、練習よりはるかに実力を発揮します。本当に本番に強いのです。弁論大会に挑戦した学生は、たとえ結果が出なくても、その後授業への取り組みが積極的になったり、留学を勝ち取るなど成長が見られます。そのような学生の変化、成長過程を間近で見られるのが、私の日本語教師としてのモチベーションになっています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Taras Shevchenko National University of Kyiv
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウクライナの最高学府。日本語教育では、キエフ国立言語大学と共に代表的な教育機関の1つ。現在、ウクライナ国内の日本語教師、通訳、日本企業の社員等、日本語を使う職業に携わる者はほとんど2大学の卒業生で占められている。専門家業務は各学年の日本語授業の他、現地教師と共に学科の運営、シンポジウム開催等の助言を行う。また、ウクライナ日本語教師会運営支援、地方及びモルドバ巡回、キエフ国立言語大学派遣日本語指導助手への指導も業務である。
所在地 Blvd. T. Shevchenko 14, Kyiv, 01017, Ukraine
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語学院 中国語・韓国語・日本語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   1991年主専攻講座開設、1999年から毎年開講
国際交流基金からの派遣開始年 1996年
コース種別
主専攻(英語とのダブルメジャー制)
現地教授スタッフ
常勤14名(内邦人2名)、非常勤 0名、専門家1名、計15名
学生の履修状況
履修者の内訳   1年16、2年17、3年28、4年19、5年21、6年15
学習の主な動機 留学、日本企業への就職希望、日本文化への興味
卒業後の主な進路 就職、進学、留学、日系機関・企業や外資系企業就職
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2程度
日本への留学人数 最大9名/年

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