世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 学習者の自立が頼もしい日本語クラブ、そして笑顔に励まされる日本語特別講座

ウクライナ日本センター
阿部 康子

厳しい冬が半年以上続くウクライナでは、7~8月には「今、楽しまなければ!」という強迫観念にも似た気分に駆られ、人々は思い切りバカンスを楽しみます。ウクライナ日本センター(以下、UAJC)の日本語講座に通う受講生達も例外ではありません。当講座は毎年9月後半~10月に開講し、6月中旬に終了します。この8カ月余りの間、お正月とイースター以外の休講はありません。受講生の中には何年間も通い続けてくれる人たちが多く、彼らは夏に十分英気を養い、季節が冬に向かい始める9月に、日本語講座に戻ってきます。

普段の授業風景の写真
普段の授業風景
ポスターの写真
UAJC掲示板の特別講座ポスター(左)と
日本語クラブポスター(右)

UAJCの日本語講座は、18歳以上の受講生を対象に、週に2回90分ずつの日本語授業を提供しています。2006年に開講し、2013年6月で丸7年を迎えるわけですが、今年度は新教室を3つ増設したこともあり、年間受講生総数は300人を超えました。この中には、開講時から7年間ずっと通い続けてくれている受講生も何人もいます。

日本語講座では、通常の授業に加えて他にもいろいろな活動を行っていますが、今回はその中から二つ、日本語クラブと日本語特別講座についてご報告いたします。

1)日本語クラブとは、受講生たちが「教室の外でも日本語を話す機会を持ちたい」と考え自発的に発足させたものです。会合は毎週土曜日に行われます。必ず前もって話すテーマを決め、参加者はそのテーマについて日本語で話せるように準備してきます。日本語が初級の者から上級の者まで互いに助け合いながら、メモを取ったり辞書を使ったりしながら、意見交換、質疑応答などをすべて日本語で行います。クラブ専用のブログがあり、会合の内容レポートも毎回載せられます。

私もできる限りこの会合には出席するようにしています。日本人が参加すると、ウクライナ人は自分の日本語が日本人に通じていることを実感できる、日本人の生の意見が聞ける、ネットなどで調べた情報についての真偽について尋ねることができる、といって大変喜びます。日本人旅行者や在留日本人で、ウクライナ人と交流したいと思っている方には、いつもこの会合への参加を勧めています。

また、このクラブのメンバーは毎年修了式で日本語劇を行っており、今年度は日本語での映画を撮っています。私も脚本に目を通し、日本語の修正をしています。このクラブが発足して、今年の4月で丸3年が経ちました。今後もますます活発な活動を期待しています。私も微力ながら少しでも活動の支援をしていきたいと思っています。

2)二つ目は1~2カ月に1度実施している日本語特別講座です。これは、通常の授業とは全く異なったもので、どのレベルの受講生でも参加できるような日本語の特別授業です。毎回特別なテーマ、例えば「オノマトペ(擬態語、擬声語)」「ことわざ」「慣用句」「日本の歌」などを、テレビ、スライド、絵カード、CDなど、視覚的・聴覚的なものも多用し、ゲームをしたりして楽しみながら学習します。

全レベルの学生が対象なので、簡単すぎても難しすぎてもいけません。且つ教科書ではなかなか学べないようなこと、ということを念頭に置いてテーマを考えていますので、毎回アイディアを捻り出すのが大変ですが、授業の後の受講生たちの感謝の言葉と楽しそうな様子を見ていると、「次は何をやろうか!」という気持ちにさせられます。

通常の授業は教科書を使用しており、カリキュラムに沿って授業を進めていますので、どうしても日本語能力の積み上げがポイントになってきます。しかし特別講座では、そのような教科書の流れからちょっと離れたところでのユニークな日本語を教えたいと思っています。これからもより多くの受講生に興味を持ってもらえる特別授業を実施していくつもりです。

UAJCでは文化事業も盛んで、日本のドキュメンタリーフィルム上映会、様々な日本文化講座、日本文化ワークショップ等、定期的に実施しています。日本語講座受講生の中にはこれらの文化関係の活動に参加している人も大勢います。日本語学習を始めてから文化への興味を深めていく者、日本文化に対する興味が日本語学習へと繋がる者、この相互作用は必然と言ってもいいでしょう。UAJCはこの相乗効果をもとに、今後もますます親日ウクライナ人の増加を目指していきたいと考えています。その中で日本語講座を担当する者として、今後の日本語学習者の増加を心から願っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Ukraine-Japan Center "UAJC"
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウクライナ日本センター(UAJC)は、キエフ工科大学(KPI)内にオフィスが設置されており、主に日本語教育事業、文化交流事業を行っている。
日本語教育専門家は、当センターの日本語講座の企画・運営・授業を行う他、現地教師指導や研修などを実施する。また、ウクライナ日本語教師会に対し、様々な側面支援も行う。
所在地 37, Peremohy Ave., Library, NTUU "KPI", 4th fl., Kyiv, 03056 Ukraine
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
日本語コース
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2006年
国際交流基金からの派遣開始年 2006年
コース種別
一般講座
現地教授スタッフ
常勤3名(うち邦人2名)、非常勤6名(うち邦人1名)
学生の履修状況
履修者の内訳   大学生50%強、社会人50%弱
学習の主な動機 日本伝統文化、芸能、ポップカルチャーなどへの興味・関心
卒業後の主な進路 なし
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定N2~N3を受験可能な程度
日本への留学人数 ほとんどなし

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