世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)第1回ウクライナ日本語キャンプの成功-学生・教師みんなの笑顔-

キエフ国立大学
斎藤誠

キエフ国立大学に派遣されてからまもなく3年。1つ気になっていたのは、大学で授業以外の行事が意外と少ないこと。日本なら「学生交流会」など学生主体のイベントで学生同士の結束が高まるのですが、こちらの大学は「お勉強」が忙しく、少人数の日本語学科内ですら、先輩・後輩の交流もほとんどない状態です。  ウクライナ日本語教師会に参加している教師の間では、数年前より「サマー・キャンプ」を実施したいという夢がありました。そして2013年7月1~5日、晴れて「第1回ウクライナ日本語キャンプ(以下、キャンプ)」が、キエフ国立言語大学(以下、言語大)主催で開催されました。会場は黒海に面したリゾート都市、オデッサの宿泊施設です。私は主に日本語授業管理、教師向け日本語ブラッシュアップ講座(以下、BU講座)、最終日の「文化祭(グループ発表)」を担当しました。

 

ウクライナ全国の大学やウクライナ日本センターなどの日本語講座で日本語を学ぶ学生に募集をかけました。初回ということもあり、どの程度興味を持ってくれるか不安でしたが、予想を超える申し込みがあり、40人の定員を超え50人が参加登録となりました。

 

参加条件を日本語能力試験のN4合格レベルと設定しましたが、中には1年生やN2に合格できそうなくらい高いレベルの学生もいました。各大学から3~4名程度が参加、バラエティーに富んだ個性的な学生が、全国各地から参加しました。

 

初日のオリエンテーションでは、初対面の緊張をほぐすゲームなどが行われ、晩のウェルカムパーティーでは事前課題として提出してもらった自己紹介ビデオをみんなで見ました。

 

オリエンテーションの様子その1
初日のオリエンテーション。
お互いを知るゲームで盛り上がりました。

 

オリエンテーションの様子その2
日本語授業では様々なゲームも。
写真は「背中に伝言ゲーム」

2日目から4日目までは、午前に日本語授業、午後は文化体験(浴衣着付け、書道)や最終日「文化祭」の準備時間です。4グループに分かれた授業では、学生が楽しめるように展開された授業が行われました。ゲームや、カードを使った授業、スイカ割りをするクラスもありました。中には日本語能力試験の説明など真面目な授業も。学生たちは時には真剣に、しかし楽しんで勉強していました。

 

またキャンプには、授業を担当する先生方が計17名参加、内12名はウクライナ人講師でした。この先生方には、担当授業の合間に、筆者をはじめ3名の国際交流基金派遣日本語専門家によるBU講座を受けて頂きました。現地講師のレベルアップも目的の1つとしてあるためです。キエフ以外の都市から参加の先生には、なかなかこのような機会がなく、BU講座は非常に好評を得ました。

 

そして最終日には、「文化祭」が開かれました。事前に示された5つのテーマから1つ選び、舞台で自由に表現するのが課題でした。テーマは、「ウクライナの大学生の日常生活」「日本人に紹介したいウクライナの〇〇」「大学生の主張」「ウクライナのいい点、悪い点」「大学やウクライナの不思議なところ」です。条件は、舞台上で日本語で話すこと、グループで協力すること。芸術的な発表があったり、コミカルなコントを演じたり、それぞれのグループが工夫を凝らし、面白い発表をしてくれました。

 

印象に残ったのは、最後のフェアウェルパーティーで教師を含めた誰もが「参加して本当に良かった」「来年もぜひ参加したい」と言っていたことでした。これだけの数の学生、教師が集まり交流するイベントはウクライナで初めてのことです。参加者全員がこの場を楽しみ、大学や都市を超えた交流が生まれました。これは非常に大きな財産になりました。キエフ国立大学から参加した学生3名ももちろん、大学で会うときよりも生き生きとしていました。このキャンプの最大の開催目的は、学生の動機づけです。大学3年生にもなると、学習動機が薄れ、授業についていけなくなる学生が出現します。少しでも意欲的な学習につなげてくれたら、という目的の達成度は、学生達の笑顔と目の輝きに現れている気がしました。

 

最後になりましたが、初めての開催で全てが手探りの準備・運営に携わった言語大の運営スタッフの皆さん、会場都市のオデッサ国立大学ミグダリスキー・ダニール先生は非常に御苦労され、このキャンプを成功へ導いて下さったことを特筆しておきます。また、ベラルーシ、モルドバの先生にも有志でご参加いただき、本当に感謝しております。この原稿執筆時は、2014年7月に「第2回」を同所で開催予定です。さらなる成功を祈っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Taras Shevchenko National University of Kyiv
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウクライナの最高学府。日本語教育では、キエフ国立言語大学と共に代表的な日本語教育機関の1つ。現在、ウクライナ国内の日本語教師、通訳、日本企業の社員等、日本語を使う職業に携わる者はほとんど2大学の卒業生で占められている。専門家業務は各学年の日本語授業の他、現地教師と共に学科の運営、シンポジウム開催等の助言を行う。また、ウクライナ日本語教師会運営支援、地方及びモルドバ巡回、キエフ国立言語大学派遣日本語指導助手への指導も業務である。
所在地 Blvd. Tarasa Shevchenko 14, Kyiv, 01601, Ukraine
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
言語学院 中国語・韓国語・日本語学科
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 1991年主専攻講座開設、1999年から毎年開講
  国際交流基金からの派遣開始年 1996年
 
コース種別
  主専攻(英語とのダブルメジャー制)
 
現地教授スタッフ
  常勤12名(内邦人2名)、非常勤 0名、専門家1名、計13名
 
学生の履修状況
  履修者の内訳 1年23、2年17、3年18、4年28、5年10、6年10
  学習の主な動機 留学、日本企業への就職希望、日本文化への興味
  卒業後の主な進路 就職、進学、留学、日系機関・企業や外資系企業就職
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2程度
  日本への留学人数 最大9名/年

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