世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)日本語講座の受講生イベントについて

ウクライナ日本センター
阿部康子

ウクライナ日本センター日本語講座は、毎年9月下旬開講、翌年6月中旬終了の通年コースです。現在は全15クラスあり、総受講生数は300名弱で、ほとんどが大学生と社会人です。

1回90分の授業が週2回で、特に長い休みもなく、9か月間続きます。この9か月という長い期間でのコースでは、途中でフェードアウトしてしまう受講生も出てきます。在籍クラスを変えない限りクラスメートも担当教師も同じなので、半年も経てばコース開始時の新鮮味や緊張感が薄れてしまうのも自然なことです。日本語講座ではこの9か月の間に、全受講生を対象に、イベントを2回行っています。受講生達が一堂に会することで自分のクラス外の人と交流する、また、そうすることによって、日本語学習のモチベーションを再アップすることなどを意図しています。今回の報告ではこれらのイベントについてご紹介させていただきます。


漢字コンテストの様子の写真
漢字コンテストの様子

1回目のイベントは前期終了の1月下旬に行います。このイベントは一昨年から始めたもので、まだ2回しか実施していませんが、漢字コンテストをメインのプログラムとして行っています。漢字コンテストはレベル別で、今年は8つのレベルに分けて行いました。漢字の読み方を競うもので、勝ち残り戦です。参加者以外の観客全員にはスライドで問題と答えを見せて、それぞれが心の中で自分の漢字能力を測ることができるようにしています。上級の学生は自分が初級だった頃のことを思い出し、初級の学生は上級レベルの漢字能力の高さを感じることができます。このコンテスト実施の2週間ほど前から、全クラス内で、リハーサル練習をしてもらうようにしています。ゲームのような活動なので、授業のウォーム・アップとしては最適ですし、コンテスト当日の参加者を増やすことにもつながります。参加は希望者のみですが、全体で楽しく盛り上がるので、1回目よりも2回目のほうが参加者も増えましたし、来年はもっと増えることを期待しています。

先日、受講生から嬉しいニュースを聞きました。日本語クラスの友達を招いてのホームパーティーで、ゲームとして漢字コンテストをしたというのです。語学学習は一人でやっていると、ともすれば挫折しがちですが、このようにクラスメートと共にゲーム感覚で学習する方法を見つければ、学習継続と自律的な学習への大きな前進となります。

現在、漢字コンテストの出題は漢字の読み方だけですが、将来的には書き方のコンテストもできるようにしたいと思っています。

このイベントは他に、受講生の日本体験報告、日本語カラオケなどの催し物、懇親会などを行います。実はこのイベント実施の1月下旬というのはウクライナでは厳寒期であり、大人数を収容できる教室は暖房が入らず非常に寒いため、どうにか環境改善を図りたいものだと思っています。


修了式で盆踊りを踊る受講生たちの写真
修了式で盆踊りを踊る受講生たち

2回目のイベントは後期終了時に行う修了式です。ここでは、修了証書授与がメインです。修了証書は年に4回のテストで50%以上の得点及び出席率70%以上をクリアした受講生に与えられます。また、各クラスの最優秀受講生、皆勤賞などへの賞品授与も行います。一人一人名前を呼ばれ、前に出てきて修了証を受け取るときの受講生たちの嬉しそうな様子を見ると、証書を渡す私自身も、9か月間のいろいろなことを思い出しながら「みんな頑張ってくれたなあ」と感慨深くなります。この日はおしゃれをしてくる人や、家族・友達などを連れてくる人もいます。修了証書授与の後は受講生による日本語劇上演、歌や楽器演奏の披露、そして懇親会です。

多くの受講生が一斉に参加できるようなイベントは、定期的なものとしては現在はこの2つしか行っていませんが、あと1~2回ぐらいイレギュラーなものでも増やしたいと思っています。場所や予算、準備など検討しなければいけない課題もありますが、今後の実現に向けて取り組んでいくつもりです。

こういったイベントをきっかけに、日本語や日本文化についていろいろなことを分かち合える仲間を作ったりネットワークを広げることができれば、たとえ日本語講座を卒業した後でも、日本や日本語への興味を持ち続けてもらえるのではないでしょうか。ただ日本語能力を伸ばすためだけではなく、長期的に日本語に興味を持ってもらうための手助けをしていきたいと考えています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Ukraine-Japan Center "UAJC"
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウクライナ日本センター(UAJC)は、キエフ工科大学(KPI)内にオフィスが設置されており、主に日本語教育事業、文化交流事業を行っている。日本語教育専門家は、当センターの日本語講座の企画・運営・授業を行う他、現地教師指導や研修なども実施する。また、ウクライナ日本語教師会に対し、様々な側面支援も行う。
所在地 37, Peremohy Ave. NTUU"KPI", 4th fl., 03056
国際交流基金からの派遣者数 専門家1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
 
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 2006年
  国際交流基金からの派遣開始年 2006年
 
コース種別
  一般講座
 
現地教授スタッフ
  常勤3名(うち邦人2名)、非常勤6名(うち邦人1名)
 
学生の履修状況
  履修者の内訳 大学生50%強、社会人50%弱
  学習の主な動機 日本伝統文化、芸能、ポップカルチャーなどへの興味・関心
  卒業後の主な進路 なし
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定N2~N3を受験可能な程度
  日本への留学人数 ほとんどなし

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