世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) シルクロードの国で日本を愛する人たちとともに

ウズベキスタン日本人材開発センター
黒滝力

 ウズベキスタン・日本センターは昨年竣工したばかりの地上16階地下3階のビルの中にある。近代的な建築物の少ないこの国ではひときわ目立つ近代要塞である。学習者達にとっても立派なセンターで学んでいることはちょっとした自慢であり、講座に来るときも所謂「勝負服」でやってくる。

 当地ウズベキスタンでは10数年前より国立東洋学大学で日本語教育が始められ、数年前より青年海外協力隊の派遣もあり複数の大学や初・中等教育機関で日本語教育が開始された。しかしながら、一般社会人等日本語学習に対する熱意がありながら、その機会に恵まれていない学習希望者のための日本語講座が強く求められていた。当センターの日本語講座はこういった需要に応える形で2001年9月に開講された。開講時の受講生募集の際には64名の枠に300名ほどの応募があり、日本語学習熱の高さがうかがえた。

 そもそもこの「ウズベキスタン・日本センター」はJICA(国際協力事業団)とウズベキスタン政府対外経済関係省との協定に基づき設立された現地法人で、ビジネスコース、日本語コース、相互理解促進を三本柱として活動を進めている。日本語教育に関しては国際交流基金が協力し日本語教育専門家の選定・派遣を行った。

 さて、ではウズベキスタン・日本センターで日本語教育専門家が行う業務とは・・・これがいまいちはっきりしていない。このプロジェクトを進めるにあたり、基金とJICAの間で取り交わされた文書、JICAとウズベキスタン政府対外関係省の間で取り交わされた膨大な文書を見てもなんやら抽象的で、ようわからん。日本語講座を開きゃいい・・・というわけでもないらしい。となれば、自分でニーズ調査を行って、現地で求められていることを探り、センターのコンセプトとの接点を明確にし、その上で「本当にできそうなこと」をやっていくしかない。

 とりあえず、ということで一般向け初級日本語講座4クラスを開講し運営しながら、ニーズ調査を進めた。大学等日本語教育機関の講座責任者・講師および学習者、現地JICA事務所、青年海外協力隊員、関係省庁、日本大使館、旅行代理店、一般来館者等々に対して聞き取り調査を行った。すると、出て来る、出て来る。なんだかんだと「あれやってほしい」「こんなことが望まれている」・・・とりまとめると、日本センター日本語コースに望まれているのは・・・

  1. 1.一般向け日本語講座の開設・運営
  2. 2.現地日本語教師の育成・レベルアップ
  3. 3.日本語学習者全体のレベルアップ
  4. 4.日本語教育ネットワークの活性化
  5. 5.相互理解につながる各種活動

 ・・・といったことになる。これに基づき、初級日本語講座の運営以外で現在具体的に行っている活動は、日本語弁論大会支援、年少者日本語学習発表会主催、日本センター日本語能力認定試験企画・作成・実施、教師研修会実施、日本語教育連絡会議運営等、この合間に各教育機関の現状改善に関する助言、現地で働く日本語教師のよろず相談承りや日本語学習者の留学・研修に関する相談を行っている。近い将来、通訳ガイドコースなども開設する予定。

 大学、高校等でも日本語教育が行われ、学習者数は増加し、現地講師の数も徐々に増えつつある。センターとしてはこれらの機関・講師・学習者にとって幹事、相談先、調整役、連絡係としての役割をも担うことになる。

 けっこう、しんどい。9時~9時の12時間労働が続いている。考えてみれば、自分で仕事を作っているようなもので、やらなければやらないで済んでしまうこともあるかもしれない。それでも、望まれていることがある以上、最善を尽くさねば6000キロも離れたところまで来た意味がない。幸い、青年海外協力隊や邦人ボランティアそして現地講師の人たちがかなり高い意識とモティべーションを持っており、ウズベキスタン全体の日本語教育の向上のために協力し合ってことに当たれる状況にある。

 海外に出て日本語教育に関わると、まず単純に「日本から遠く離れたこんなところで日本語を勉強してくれている人がいる」というさわやかな感動を覚える。別に私のために「勉強してくれている」わけではないのだが、遠隔の地で日本や日本語を愛している人に出会うことは日本人としてうれしい。こんな人たちのためだったら、できうる限りのことをしたくなってしまう。そんな気持ちでかれこれ14年もこの仕事を続けている。

 残念なのは、ほとんどの時間が授業以外の日本語教育に関わる諸活動にあてられるため、自分自身が行える授業数を増やせないという現状。現場人間としてはもう少し授業をしたいし、現地講師が行う授業についてももっと観察・指導にあたりたいと思っているが、ままならない。なにしろ「この国で初めてやること」が多いので煩雑な庶務に割かれる時間が多い。こういったことを少しずつ現地スタッフに移転していけば、日本語教育専門家としての本来業務である授業運営とその指導にあてられる時間も増やせることと思う。

 直接、人と関わる時間が少なくなると、人を感じることに鈍感になりかねない。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
 ウズベキスタン日本人材開発センターは、国際協力事業団(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき設立され、市場経済化のための人材育成(ビジネスコース)、日本語コース、相互理解促進を三本柱として活動を進めている。同センターの日本語コースでは日本語講座が活動の柱になっており、専門家はこの日本語講座を担当しつつ、日本語弁論大会支援、年少者日本語学習者発表会、日本語能力試験、教師研修会、日本語教育連絡会議運営等幅広い活動を行っている。
ロ.派遣先機関名称 ウズベキスタン日本人材開発センター
Uzbekistan-Japan Center For Human Development
ハ.所在地 6th Floor, International Business Center, 107-B, Amir str., Tashkent,700084, UZBEKISTAN
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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