世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) ウズベキスタンの日本センター

ウズベキスタン・日本人材開発センター
福島青史

ウズベキスタンとUJC

第3回日本語学習発表会よりの写真
第3回日本語学習発表会より

 このページをクリックした人は、ウズベキスタンに関心があるか、あまりに遠い国なので好奇心から思わず指が動いたのかもしれない(筆者の知り合いは除く)。確かに、ウズベキスタンといえばサマルカンド、ブハラ、ヒワなどシルクロードのイメージが強く、実際、どんな人が生きているのかがはっきりイメージできる人が少ないのではないだろうか。
 当然のことながらこの地域も歴史の堅い殻に守られているわけではなく、現代という時間にある。90年のソ連崩壊後、国家建設の名の下、国境、言語、歴史、国民が作られており、さながら近代史の縮図を見るようである。きらびやかなサマルカンドの青も、首都タシケント中央に鎮座するアミール・チムールの像も新興国家ウズベキスタンの国家を語るために選ばれ、国家語であるウズベク語はキリル文字の軛から放たれ、ラテン文字という新しくて古い衣装を纏い、語彙の近代化、文法の標準化という変容の過程にある。このような変化の中で「ウズベキスタン人材開発センター」(以後UJC)は市場経済というウズベキスタンにとって新しい社会制度に生きる人材(=クリエータ)を育成するために2001年に設立された。
 いささか、大上段に構えてしまったが、このあたりから俯瞰しなければUJC設立の文脈が分からない。また、JICAのプロジェクトであるUJCの日本語教育の文脈も分からない。そうUJCはウズベク政府と日本政府の共同プロジェクトであり、JICAと国際交流基金との共同事業としてもユニークである。
 UJCは現在4つの柱によって成り立っている。ビジネスコース、日本語教育、相互理解促進、ITである。この4本はおのおの独立しているが、「新しい時代=システムへのリテラシー」という機能には統一される。JICAの家に基金専門家が居候をしているわけではなく、ウズベク政府とも協同してウズベク国民すべてにインパクトを与える事業である。

派遣教師の業務について

年少者弁論大会優勝者の写真
年少者弁論大会優勝者

 UJCでの派遣専門家の仕事はウズベキスタンの日本語教育全体を対象としている。全体と言っても学習者数1680、教師数78、機関数21(2003年12月調べ)であれば、韓国ではちょっとした都市並みのサイズしかない。ウズベキスタンには民間の日本語教育機関は皆無と言ってよく、ほとんどは初中等教育、大学といった公的機関である。日本に対する関心も高く、日本語熱も盛んである。UJCではそういった機関がやらないこと、やりたくてもできないこと、また、ウズベク社会で必要なものから仕事を探す。UJCがやっていることは一般講座(年少・成人)、教師トレーニング、通訳養成・職員研修、日本センター日本語認定試験、日本語学習発表会、各種日本語関係調査、ネットワーキング、留学案内・試験実施などである。
 「なんだ名前は違ってもやっていることは他の派遣専門家と変わらないではないか」と思われるかもしれないが、UJC派遣専門家は「コース運営」をする専門家であり、コース運営が仕事の中心となる。専任講師のリクルート、給与の決定から支払い、一般コースのデザイン、各種行事プロジェクトの計画・実行・評価など、日本語コース内の人事から会計も受け持っている。つまり、プレーヤーとしてではなくアドミとしての仕事がほとんどである。専門家に残されているプレーヤーとしての舞台は教師トレーニングのみである。
 またUJCゆえの特徴もある。長期のビジネスコースを持つUJCのニーズは首都タシケントに留まらず、地方にも高い。日本語教育が全く行われていない場所にも活動を展開する予定もある。同時に相互理解促進を柱としているので日本に関心のある人にすべてUJCは開かれている。UJCの日本語コースも「日本を知りたい」という人すべてに開かれている。よってUJCの日本語コースは日本語教師、通訳という日本語の専門家トレーニングと同時に「日本語ってどんなもの?」というお試しコースも共存する。
 ここに「日本語教育は初級に始まり、中級、上級と上がる」という単純な階段的イメージはない。「あなた/わたしは誰ですか?」という言葉が生じる単純な地点から始まっている。学習は個人のものであり、究極的には自分のありかたにかかる問題である。その人以上にその人をうまく振舞える人もなく、日本語コースはその人がもっとも自分らしくあるという姿に言葉の面で支援ができればと思う。移行経済という混沌の中でどのような自分を見つけだせるか?またどうなりたいのか?経済的も構造的にも問題の残るウズベキスタンの現状ではそれが夢であるような場合もある。そんな移行期にあるウズベキスタンの人々に日本・日本語はなにができるのか、という問からUJCの活動は成り立っており、その中で日本語教育も行われている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ウズベキスタン日本人材開発センターは、国際協力事業団(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき設立され、市場経済化のための人材育成(ビジネスコース)、日本語コース、相互理解促進、ITを4本柱として活動を進めている。同センターの日本語コースでは日本語講座が活動の柱になっており、専門家はこの日本語講座を担当しつつ、日本語弁論大会支援、日本語教育会運営支援、年少者日本語学習者発表会、日本語能力試験、教師研修会等幅広い活動を行っている。また、現地日本語教育機関の現地講師・邦人講師に対し適宜助言・指導を行っている。
ロ.派遣先機関名称 ウズベキスタン・日本人材開発センター
Uzbekistan-Japan Center For Human Development
ハ.所在地 6th Floor, International Business Center, 107-B, Amir str., Tashkent,700084, UZBEKISTAN
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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