世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 新しい日本語「ウズベキスタン」

ウズベキスタン・日本人材開発センター
福島青史

ウズベキスタンは危険で弱い?

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粘土遊び

 日本の新聞紙上で「ウズベキスタン」の文字が現れる時はあまりいいことは書いていない。テロがあったり、大統領による民衆弾圧があったりする。時々、サッカーワールドカップ予選で名前がちらりと載るが、強豪というイメージもない。しかし、ウズベキスタンはサマルカンド、ブハラ、ヒワなど、世界遺産をずらりとそろえた美しい場所である。問題はその際の呼称が「シルクロードの国々」となり、「ウズベキスタン」は隅のほうに小さく書かれてしまうことだ。いいところを取られて「ウズベキスタン=危険、弱い」のレッテルを貼られてはあんまりである。実際、当地を訪れる日本人の多くがその意外性に驚き、この国が好きになる。特にここに住む人々に惹かれる。ここに住む人は世界遺産にも勝る魅力を持つのに「ウズベキスタン」という日本語にはその面影はない。

 言語教育をコミュニケーション問題の解決(または軽減)の手段と考えれば、「ウズベキスタン」にまつわる日本語の現状は由々しき問題である。日本に留学するウズベクの学生が苦笑をしながら話す。「ウズベキスタンからきたと言うと、パキスタンと言われる」「ウズベキスタンからきたと言うと話が長くなるからロシアからきたと言う」これはあきらかに日本語の「ウズベキスタン」の貧困なイメージから留学生が損失を蒙っている例である。

 海外の日本語教育、特に日本と物理的にも経済的にも距離のある地域で重要な機能の一つは相互理解がある。「日本語教育だから日本の情報」も重要だが、多くの場合「日本に当地の情報を日本語で提供する」するほうが必要だと筆者は考える。前述の日本語表記による「ウズベキスタン」の貧困なイメージの解決には、ウズベキスタンの日本語教育が寄与する余地が十分にある。

UJCの日本語教育と相互理解

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笠地蔵

 前振りが長くなったが、筆者の所属するウズベキスタン・日本人材開発センター(UJC)はビジネスコース、日本語コースと並んで相互理解コースがある。つまり、ウズベキスタンと日本が相互に関係を作り上げる理念があると考えていい。上述のようにこの国の「ウリ」はここに住む人である。日本のウズベク理解促進のためにはどれだけの接触場面を作り上げるかが日本語教育の仕事となる。現在、相互理解の文脈で行っている日本語コースの活動には「ビジターセッション」「帰国子女コース」「日本語エッセイコンテスト」「日本語弁論大会」「日本語学習発表会」などがある。これらは主に在留邦人とウズベクの人との接点を増やす試みであるが、さらにインターネットを活用して日本にも情報を発信していく必要がある。

 海外での日本語教育は様々な機能を持つ。日本語で一対一でコミュニケーションを取る可能性の極めて低いこの地域でコミュニケーション中心の語学教育だけをしていてもフラストレーションがたまるばかりである。相互理解はそのような中で一つのキーとなる活動となる。新たな貧困なイメージを作らない活動の場を創造することが次の焦点となるが、まずは言葉が本来持つ柔軟性、創造性を「ウズベキスタン」に取り戻すことが必要である。「ウズベキスタン」という日本語のためにウズベキスタン、日本の二つのチャンネルを同時に見ながら活動を続けている。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ウズベキスタン日本人材開発センターは、独立行政法人国際協力機構(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき設立され、市場経済化のための人材育成(ビジネスコース)、日本語コース、相互理解促進、ITを4本柱として活動を進めている。同センターの日本語コースでは日本語講座が活動の柱になっており、専門家はこの日本語講座を担当しつつ、日本語弁論大会支援、日本語教育会運営支援、年少者日本語学習者発表会、日本語能力試験、教師研修会等幅広い活動を行っている。また、現地日本語教育機関の現地講師・邦人講師に対し適宜助言・指導を行っている。
ロ.派遣先機関名称
Uzbekistan-Japan Center For Human Development
ハ.所在地 6th Floor, International Business Center, 107-B, Amir str., Tashkent,700084, UZBEKISTAN
ニ.国際交流基金派遣者数 専門家:1名

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