世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「ウズベキスタンへようこそおいでくださいました」

ウズベキスタン・日本人材開発センター
山口 明

観光ガイドのための日本語コース

バスで挨拶をするローザさんの写真
バスで挨拶をするローザさん
ラビ・ハウズの説明をするドニヨルさんの写真
ラビ・ハウズの説明をするドニヨルさん

 大学2年生のローザさんがバスの前に立った。「みなさん、おはようございます。ブハラへようこそおいでくださいました。私はこれからアルク城を案内させていただきますローザと申します。どうかよろしくお願いいたします。」教師の指示通り、笑顔ではっきり話しているが、やはり少し緊張しているようだった。
 2月に始まった「観光ガイドのための日本語コース」は夜のコースにもかかわらず、常に出席率が高く、最後の実地研修にも25名中、23名が参加し、白のレンガの街並みが美しい世界遺産の都ブハラで、学生たちは担当のモスクや神学校、霊廟など観光スポットをそれぞれ日本語で説明した。
 実際の日本人観光客が相手ではなく、仲間の学生が相手であっても、教室での発表練習とは違い、現場に立っての案内は相当な緊張を強いられたようだった。ガイド経験者が数人いたが、ほとんどは大学生で、彼ら自身ブハラ観光は初めてという学生たちなのだから当然かもしれない。原稿のまる覚えでなく、話しかけるように自然な言葉で説明し、客の不意の質問にも対応するためには、確実な日本語能力が要求される。
 日本旅行業協会によると2006年にウズベキスタンを訪れた日本の観光客は約5000人で、ドイツ、フランスからと比べて、まだまだ数は少ないが、それでも日本語ができるガイドが足りず、大学生までが動員されたそうである。日本大使館、JICA、ウズベキスタン日本人材開発センター(以下UJCと略す)はウズベキスタンの観光事業振興支援を進めており、通訳コースの一つとして、この「観光ガイドのための日本語コース」が開始された。NHK特集「新シルクロード」第2部でウズベキスタンが取り上げられていることもあって、観光客の増加が予想されている。そして、ガイドの良し悪しは日本人観光客のウズベキスタンの印象を左右する要素で、ガイド養成支援の継続は重要となっている。
 ウズベキスタンでは日本語を生かした仕事はまだほとんどないにもかかわらず、学習希望者は多く、UJCの募集では定員の2倍以上の応募がある。学習動機は「留学したいから」が一番多く、「日本文化に興味がある」が続いている。観光ガイドは今後の需要増加が見込まれ、日本語を生かすことができ、確実な収入に結びつく数少ない仕事であり、この点でこのコースの学習者の熱心さは当然かもしれない。しかし、今回のコースの学生たちの中に、実利性からくる意欲だけではない、自分の国の観光資源、歴史、民族、宗教などについて知る喜びも確かに読み取ることができた。

ウズベキスタン日本人材開発センターの日本語教育

 ウズベキスタンの日本語教育は1990年に始まった。現在、20あまりの機関に1800人ほどの学習者がいる。2001年に始まったUJCの日本語コースは、一機関としては最大で現在250名以上の学習者がいる。常勤スタッフ4名、非常勤講師は8名、国際交流基金からは日本語教育専門家1名、日本語教育指導助手1名が派遣されている。
 10歳から15歳の年少者クラスもある「一般日本語コース」のほか、日本から帰国した子供を支援する「帰国子女コース」、歌って楽しみながら日本語を学ぶ「カラオケクラブ」、インターネットを利用して掲示板でのコミュニケーションやテレビ会議を行う「交流クラブ」もある。また、初中等教育段階の学習者を対象にした「学習発表会」「高校生文化祭」などのイベント、ウズベキスタン社会で進むウズベク語化に対応した「日本語教材ウズベク語化プロジェクト」「ウズベク語辞書作成プロジェクト」なども行っている。2006年の12月には第2回の日本語能力試験が実施された。

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ウズベキスタン日本人材開発センターは、国際協力機構(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき設立され、市場経済化のための人材育成(ビジネスコース)、日本語コース、相互理解促進、ITを4本柱として活動を進めている。同センターの日本語コースでは日本語講座が活動の柱になっており、日本語教育専門家はこの日本語講座を担当しつつ、日本語弁論大会支援、日本語教師会運営支援、年少者日本語学習者発表会、日本語能力試験、研究発表会等の活動を行っている。
ロ.派遣先機関名称
Uzbekistan-Japan Center For Human Development
ハ.所在地 6th Floor, International Business Center, 107-B, Amir str., Tashkent,700084, UZBEKISTAN
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名  指導助手:1名

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