世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 8年目、変わり続けるウズベキスタン・日本人材開発センター日本語コース

ウズベキスタン・日本人材開発センター
立間 智子

民族、文化の交差路

 「窓、閉めましょうか?」タクシーの後部座席で、ちょっと鼻をすすっていると、運転手の多くが、こう声をかけて前の窓を指差す。「ウズベキスタンの人々は、なんて察するのが上手いのだろう!」としみじみ思う瞬間がしばしば。それもそのはず、ウズベキスタンでは地域や民族によって言語も習慣も考え方も様々だ。ウズベク語、ロシア語、タジク語、カザフ語などが話され、首都タシケントには朝鮮系も多く、筆者はよく間違えられる。発せられる言語に頼らず相手に配慮する、察する文化がある。そういう意味では、ウズベキスタンは日本から遠いとは決して感じられない。

ウズベキスタンの日本語教育

 ウズベキスタンで日本語教育が始まって18年。現在、約1600人の日本語学習者がいる。特に年少者の学習者が多く、高等教育機関と初・中等教育機関(4・5・3制、7歳~18歳)の学習者数はほとんど同じである。そして、大学や学校で日本語を学ぶ機会がない人も、ウズベキスタン・日本人材開発センター(以下、UJC)で学ぶことができる。授業料は他の外国語センターより安く、庶民に開かれた日本語講座だ。現在、約270名が学び、国内最大の日本語教育機関である。

UJCの日本語教育

 UJCはビジネスコース、相互理解促進、ITコース、日本語コースの柱からなっている。日本語コースでは、毎日3つの時間帯で、合計22クラスの長期コース(3年)を開講し、そのうち5つの年少者クラス(10歳~13歳)がある。また、それとは別に「帰国子女コース」では、日本滞在経験がある5歳から9歳までの子どもたちがボールやカードを使って学習したり、歌やアニメ、折り紙や工作を通して日本事情に触れたりしている。

6月「てるてるぼうず」を作って、「携帯電話につけていい?」の写真
6月「てるてるぼうず」を作って、
「携帯電話につけていい?」

 初級から中級までの一般日本語教育と、「観光ガイドのための日本語コース」や「日本語能力検定試験対策コース」など目的によって専門化された特別コースがある。しかし、しっかり学習したい人ばかりだろうか?相互理解の折り紙教室やアニメ上映会で日本文化に触れて日本語に興味がある人、日本語を学びたいけれど社会人で時間が作れない人、そんな人を対象に、今年新たに短期の「はじめての日本語会話コース」を開講した。日本企業で働く社会人や日本留学を控えた人、既習者で会話を練習したい人、帰国子女の親など顔ぶれは予想以上に様々。まだまだ日本語ニーズの伸び代はあると新たな発見をした思いだ。しっかり学ぶ、趣味で学ぶ、多様なニーズに今後も応えていきたい。

 また、UJCでは日本語教師のスキルアップや専門性の向上をサポートするとともに、所属を超えてウズベク語教材の開発、出版も行ってきている。今年「みんなの日本語Ⅱ文法解説書」のウズベク語版が完成した。ウズベク語話者が増える今後、大いに活用されるのではないかと期待している。

UJC日本語コースのイベント

13回中央アジア日本語弁論大会出場者勢ぞろいの写真
13回中央アジア日本語弁論大会
出場者勢ぞろい

 UJC日本語コースはイベントも目白押しだ。日本語能力検定試験や日本語コース祭り、子どもたちの日本語学習発表会をはじめ、UJC主催の催し以外に、日本語教師会によるウズベキスタン日本語弁論大会、日本語教育セミナーなどの実施のサポートも行っている。

 今年は中央アジア日本語弁論大会がタシケントで開催された。中央アジア4カ国(ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン)から20名の発表者が参加し、白熱した戦いを繰り広げた。中央アジア共通の問題もあれば、各国それぞれの抱える問題もある。日本語の弁論を通して今の中央アジア各国の現状、社会問題が浮き彫りになり、聞いている日本人にとっても、非常に勉強になった。大会翌日、教師たちは日本語教育セミナーへ、出場学生たちはタシケント観光に行き、それぞれ交流を深めた。昔は出場者として弁論を競いあった教師同士が、今度は大会を支える教師として再会する。中央アジアにおける日本語ネットワークはこうした積み重ねによって築かれてきたのだと実感する。これまで築かれてきた土台を大切に、築いてきた人々とともに、中央アジアと日本、ウズベキスタンと日本との今後を、今年もまた少し築き上げていこう。

ウズベキスタン・日本人材開発センターHP:http://www.ujc.uz/?pid=20
ウズベキスタン日本語教師会HP:http://www.ujlta.bcc.com.uz/

派遣先機関の情報
イ.派遣先機関の位置付け
  及び業務内容
ウズベキスタン・日本人材開発センターは、国際協力機関(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき設立され、ビジネスコース、相互理解促進、IT、日本語教育を4本柱として活動を行っている。日本語コースでは、一般向けの日本語講座の運営とともに、日本語教師向けの研修講座も開講している。その他、学習発表会やコース祭りなど催しを実施し、また、ウズベキスタン日本語教師会による日本語弁論大会、日本語教育セミナーなどの実施支援を行い、ウズベキスタン国内全体の日本語教育の発展に努めている。
ロ.派遣先機関名称
Uzbekistan-Japan Center For Human Development
ハ.所在地 6th Floor,International Business Center,107-B,Amir Temur str.,Tashkent,100084,UZBEKISTAN
ニ.国際交流基金派遣者数 日本語教育専門家:1名
ホ.アドバイザー派遣開始年 2001年

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