世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「みんなが主役」の日本語教師会をめざして

ウズベキスタン日本人材開発センター
立間 智子

 「日本」といえば、茶道や生け花、柔道など日本の伝統に興味が強いウズベキスタンの人々ですが、最近は10代を中心に、Jポップやアニメから日本語に興味を持つ人も少しずつ増えてきました。「先生、嵐の新しいドラマを見ましたか。」「GReeeenの歌を教えてください。」など、ネット世代は日本人より早く日本の情報を知っていたりします。そんな若い世代を中心に、約300名がウズベキスタン日本人材開発センター(以下、日本センター)で日本語を学んでいます。ウズベキスタンには日本語学校などはなく、誰でも日本語を学ぶことができる機関は日本センター以外にありません。帰国子女(5歳-9歳)、年少者(10歳-13歳)、学生、主婦、社会人など学習者の年齢、職業、言語(ロシア語・ウズベク語)など受講生の生活環境は多様で、それぞれに合った時間、指導法(教え方、宿題の量など)が必要になり、教師は日ごろの授業準備や対応が大変ですが、受講生の熱意に、いつも励まされています。

うんとこしょ!どっこいしょ!」(日本語学習発表会での日本センター帰国子女コースによる劇「大きなかぶ」)の写真
「うんとこしょ!どっこいしょ!」
(日本語学習発表会での日本センター
帰国子女コースによる劇「大きなかぶ」)

 日本センターは多くのイベントを主催あるいは共催をしています。「ウズベキスタン日本語弁論大会」をはじめ、年少者の日本語学習者が弁論や劇・歌などを発表する「日本語学習発表会」、日本や日本語に関するゲーム大会「日本語コース祭り」、日本語能力試験など学習支援は多岐に渡ります。日系企業も日本人留学生も数えるほどのウズベキスタンでは、日本語を実際に使う機会はないので、日本語に関する大会やお祭りは学習者や教師のやる気に繋がります。また、在留邦人にとっても、ウズベキスタン人の考えや思いに触れる貴重な機会となっていると思います。こうしたイベントは、日本大使館をはじめ日系企業、日本人会の方々、ウズベキスタン日本語教師会(以下、教師会)、ウズベキスタンの教育機関など多方面からの協力なしには実現できません。

「第2回トュルク諸語諸国における日本語教育セミナー」全体写真の画像
「第2回トュルク諸語諸国における
日本語教育セミナー」全体写真

 昨年11月には、トルコでの第1回開催に続き、「第2回トュルク諸語(※)諸国における日本語教育セミナー」をタシケントで開催しました。ウズベキスタン国内はもちろん、アゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、トルコの5カ国から60名の日本語教師が集まり、国際交流基金の助成で日本からお越しいただいた早稲田大学大学院の川口義一先生、政策研究大学院大学の近藤彩先生による日本語教育ワークショップに参加しました。独立後の旧ソ連諸国では、母国語の教育が年々盛んになっているため、トュルク諸語を用いた日本語教材作成は急務です。共通の問題を抱える異なる国々の教師が一同に会する機会は貴重で、トュルク諸語諸国における日本語教育の発展の礎になっていくと期待しています。

トュルク諸語=中央アジアを中心に東ヨーロッパからシベリアに至る広大な地域で話される、言語系統を同じくする諸言語の総称。日本語と同じく、目的語や述語に日本語の助詞や助動詞にあたる活用語尾が付着する膠着語。

 教師会の自立化支援も日本語上級専門家(以下、専門家)の業務の一つです。今年の11月で国際交流基金による専門家派遣の終了が決まり、この2年間、これまで日本センターが中心となって行ってきたイベント実施業務の多くを教師会に移管してきました。日本センターで蓄積してきたノウハウを教師会に伝えるにつれ、各教師の自覚と責任感が少しずつ芽生えてきていると感じます。また、これまで、日本センターで教師研修講座を行ってきましたが、2009年からは、教師会で月1回の勉強会を始めました。日本語の教え方からカンニング対策まで、気軽に現場の悩みを相談し合う日本語教師の交流の場として、楽しい議論は尽きません。そして2010年3月には初めての実践研究報告会が実施されました。教師が定期的に顔を合わせ、日本語教育の専門的な勉強について協働できる機会ができたことは、教師会の自立への大きな前進だと思います。

 ウズベク人の家庭では、日本に比べ、女性の家事負担が非常に大きく、休日は家族や親戚と過ごすことが一般的です。ですから、日本語教師のほとんどを既婚女性が占めているウズベキスタンでは、休日や夕刻のイベントが多い教師会活動への常時参加はなかなか難しく、教師会の自立、現地化は今後も大きな課題です。しかし、ウズベキスタンの生活様式や伝統的価値観と共存しながら、限られた時間の中で、学習者や同僚とともに成長する悦びや感動を分かち合い、日本語を勉強してよかった!日本語教師になってよかった!と思える瞬間を感じられるような日本語教育を、日本語教師と一緒に作り上げていきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Uzbekistan-Japan Center For Human Development
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ウズベキスタン日本人材開発センターは、国際協力事業団(JICA)とウズベキスタン政府との協定に基づき設立され、ビジネスコース、相互理解促進、IT、日本語教育を4本柱として活動を行っている。日本語コースでは、一般向けの日本語講座の運営とともに、日本語コース祭りや年少者の学習者を対象とした日本語学習発表会など催しを実施している。また、ウズベキスタン日本語教師会による日本語弁論大会、日本語教育セミナーなどの実施支援を行い、ウズベキスタン国内全体の日本語教育の発展に努めている。
所在地 6th Floor,International Business Center,107-B,Amir Temur str.,Tashkent,100084,UZBEKISTAN
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2001年

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