国際交流基金日本語教育紀要 2号 要旨

研究ノート

「インドネシア語のdi-構文を自然な日本語に移すときの規則」
の指導に関する一考察―必要性と効果の観点から―

本文 【PDF:87KB】
松本 剛次・ハシブアン アドレアナ

インドネシア語には、日本語の「受身」と同じものだと理解されることが多い「di-構文」というものがある。田中(1991)は両者の違いを整理し、「di-構文を自然な日本語に移すときの規則」を提示しているが、本調査はその「規則」が明示的に指導されていない状況で、インドネシア人日本語学習者はどの程度それを習得しているのか、また、規則を明示的に指導することには効果があるか、という点について予備調査的に調べたものである。
その結果、学習者は単純に「インドネシア語のdi-構文」=「日本語の受身構文」というわけではない、ということは自然に分かってくるものの、「規則」の習得までがスムーズに進むというものではない、ということ、また、明示的に規則を指導した場合には、その場での効果はあるが定着はむずかしく、一方、暗示的な指導が繰り返される場合には少しずつではあるが、徐々に習得が進む可能性がある、ということが見えてきた。

外交官・公務員研修における専門語彙の習得
本文 【PDF:59KB】
石井 容子・熊野 七絵

本稿では外交官・公務員研修における初級レベルの専門語彙の習得の実態を明らかにすることを目的とし、研修の最終テストの一つであるオーラルテストの書き起こしデータと語彙学習の核となるスピーチクラスのスピーチ原稿を用い、1)オーラルテストにおける専門語彙の出現の分析、2)オーラルテスト結果とスピーチ原稿の比較、分析を行った。
その結果、初級レベルでも専門語彙が運用レベルまで習得されているという実態が明らかになった。また、各レベルによる使用語彙のトピック範囲や使われ方の特徴が特定できた。専門語彙の習得には、核となるスピーチクラス及び他科目との有機的なつながりという「繰り返される学習の場」が寄与していると考えられる。
この分析結果は学習者にとっての専門語彙の学習目標設定、また教師にとっての教材開発の目安としてコースデザインに還元していきたい。

外国人日本語教師と高校生ボランティアの協働による素材収集型交流活動の意義
―高校生ボランティアの気づきに注目して―

本文【PDF:55KB】
木谷 直之・前田 綱紀

国際交流基金日本語国際センターでは、外国人教師が地域の中高生ボランティアの支援を受け、自分たちが日本語の授業で使う素材を収集し教材化する「素材収集型」交流活動を行なっている。本稿では、高校生の自由記述アンケートとインタビューから、素材収集作業に参与した高校生にどのような気づきや発見があったのかを分析した。
結果、以下の点が明らかになった。高校生は、1)異なる視点の存在に気づき、身近な現象や事物に新しい意味や価値を見出すことができた。2)外国人教師とのインターアクションを楽しみながら、コミュニケーションについて新しい発見をすることができた。3)教師と生徒という役割や教室や授業という枠にとらわれずに活動することによって、「構成主義に基づく学習」を体験することができた。
高校生の参与を教材化プロセスまで拡げることと、外国人教師に対するフォローアップ調査体制を整えることが今後の課題である。

孤立環境における日本語教育の社会文脈化の試み
―ウズベキスタン・日本人材開発センターを例として―

本文【PDF:97KB】
福島 青史・マリーナ イヴァノヴァ

本稿では地域内に日本語コミュニティーもなく、旅行、留学で日本に行くことも稀で、日本語との接触の少ない海外環境における日本語学習環境を「孤立環境の日本語教育」と呼び、国内や日本と関係の深い海外の日本語教育環境と区別する。また学習目標を学習者の自己実現におき、当該地域の利害対立を調整することにより学習者の自己実現をサポートする教育を目指す。本稿ではその方法論となる社会文脈化を軸としてウズベキスタン・日本人材開発センターの実践を例に状況記述、コース設定までを報告する。

フィリピン・マニラ首都圏の大学における日本語学習者のビリーフ
―歴史的・社会的背景の視点からの考察―

本文【PDF:57KB】
高崎 三千代

本研究は、フィリピンの日本語学習者のビリーフを歴史的・社会的背景から考察したものである。その結果、学習者は、公用語である英語の習得から身に付けたと思われる学習スタイルとビリーフを日本語学習にも反映していること、多言語習得の経験から「言語学習は困難」というビリーフは持っていないこと、さらにフィリピンでは日本語の認知度が高くないが、自身は日本語が就職に有利だと考えていること等が明らかになった。
今後の課題として、フィリピンの多言語状況と日本との関係に配慮して初級段階に適した学習方法を開発すること、および学習継続者のビリーフ調査を行なうことが挙げられる。付け加えれば、今回の調査方法は改善と援用によって他の諸外国の日本語教育の発展に役立てることが可能だと考えられた。

実践報告

インドネシアの高校日本語教師の成長を支援する教師研修プログラム
本文【PDF:59KB】
藤長 かおる・古川 嘉子・エフィ ルシアナ

インドネシアの日本語学習者の70%以上が中等教育段階の学習者で占められるが、高校の日本語教育では、カリキュラム改訂が教育現場に与える影響が大きい。2004年カリキュラム改訂では、シラバス開発、教材の選択・作成など、学習者のニーズに合った教育の実践のために、教師に必要とされる能力の範囲が広くなった。国際交流基金ジャカルタ日本文化センターでは、高校の日本語教師を支援するために、カリキュラム開発、シラバス・教材開発、教師研修、教師会支援、学校訪問などのプログラムを教育省と連携して実施してきた。これらのプログラムの目的は、日本語教師の日本語力と教授力、教材開発力、そして日本語教育の自立化に必要な指導力、行政能力を向上させることにある。とくに、教師研修では、教師を成長させるために段階的なプログラムを作成している。本稿では、教師研修を中心にこれまでのプログラムの内容と成果について報告し、今後の方向を探る。

単一国研修における海外センターと国内の連携
―タイ中等学校日本語教師研修の場合―

本文【PDF:28KB】
生田 守・北村 武士

本稿は国際交流基金日本語国際センターにおいて1996年度から2005年度まで9回にわたって行なわれた「タイ中等学校日本語教師研修」の実践報告である。本研修は、タイ国教育省と国際交流基金バンコク日本語センター(現・バンコク日本文化センター日本語部)の共同事業として実施された「中等学校現職教員日本語教師養成講座」のプログラムの中の一部分を構成するもとして位置づけられている。
本研修は、海外センターで一定期間実施した日本語集中コースのメンバーをそのまま受け入れて行なう研修である点がこれまでの日本語国際センターでの研修と大きく異なる点であり特徴でもある。このような特徴をもつ研修を実施する場合、その特徴を生かした研修内容の策定を行なうのがより大きい研修成果を約束させるであろう。その特徴と研修プログラムの実践について分析、評価を行ない、今後の連携プログラムへの応用を期して提言を行う。

ブラジルにおけるメールマガジンを利用した日本語教師ネットワーク構築の試み
―現実に機能しうる日本語教師間ネットワークとはどんなものか―

本文【PDF:71KB】
三浦 多佳史・吉川一甲 真由美 エジナ・遠藤 クリスチーナ 麻樹

150万人といわれる日系移民を抱えるブラジルの日本語教育は、非日系ブラジル人学習者の大幅な増加やアニメやまんがに代表される、昨今の日本の若者文化に影響を受けた学習動機の変化など、個々の日本語教師では対応しきれない多様化が急激に進んでいる。こうした現状を踏まえ、独立行政法人国際交流基金サンパウロ日本文化センターではブラジル内外の日本語教師を対象にインターネット通信「メルマガこうししつ」を配信し、日本語教師間ネットワークの構築を試みた。本稿では、ブラジルで機能しうる日本語教師間ネットワークとはどんなものであるかを考察し、「メルマガこうししつ」を媒介とするグループが日本語教師間ネットワークとして機能しているかどうかを検証した。その結果、実際に行なわれている「行動ネットワーク」は義務のほとんど存在しない極めてゆるい連帯であるが、情報の共有やメンバー同士の交流が頻繁に行なわれていることが確認された。

PDFファイルをご覧いただくためには、Adobe Reader(無償)が必要です。
Adobe ReaderダウンロードページGet ADOBE READERよりダウンロードできます。

ページトップへ戻る