国際交流基金日本語教育紀要 6号 要旨

研究論文

日本のポップカルチャー・ファンは潜在的日本語学習者といえるか
本文 【PDF:404KB】
近藤裕美子・村中雅子

本研究では、日本のポップカルチャー・ファンが日本語学習者になりうるか否かを検討するため、日本語未習者に着目し、ポップカルチャーへの関心と日本語学習への関心との関連性について考察した。具体的にはパリ日本文化会館の日本文化関連事業の来場者83名を対象に質問紙調査を実施し、日本語未習者のポップカルチャーへの関心の強さと日本語学習への関心の強さ、および学習目標への関心の強さをスピアマンの順位相関係数の検定を用いて分析した。
その結果、ポップカルチャーに関心が強い未習者の方が日本語学習への関心が強い傾向にあること、また学習目標設定にはポップカルチャーに関連のあるコンテンツが基準となる傾向があることが分かった。
本研究の結果は、日本語を普及する上でポップカルチャーに関心が強い人をターゲットにすることは効果的であるという仮説を支持するものになったが、学習開始後の継続学習支援の方法は依然として未解決の課題である。

研究ノート

言語能力の熟達度を表すCan-do 記述の分析
JF Can-do 作成のためのガイドライン策定に向けて―
本文 【PDF:446KB】
塩澤真季・石司えり・島田徳子

国際交流基金(以下、基金)ではJF 日本語教育スタンダード開発の一環で、日本語能力のフレームワークとして「能力記述文データ検索ウェブサイト」を開発し、コース設計や学習評価など日本語教育の実践を支援したいと考えている。本サイトでは、CEFR が提供する493 の例示的能力記述文と、日本語教育現場で活用しやすい例示的能力記述文として基金が作成するJF Can-do を提供する。本稿では、基金がJF Can-do を新しく作成するためのガイドラインを検討するために、CEFR 共通参照レベルと各レベルの例示的能力記述文の特徴を分析した結果について述べる。CEFR の例示的能力記述文を4つの要素〔条件〕〔話題・場面〕〔対象〕〔行動〕に分解して分析した結果、各レベルの特徴やレベル間の変化を把握することができた。

実践報告

インドネシア人介護福祉士候補者を対象とする
日本語研修のコースデザイン
―医療・看護・介護分野の専門日本語教育と、
関西国際センターの教育理念との関係において―

本文 【PDF:520KB】
登里民子・石井容子・今井寿枝・栗原幸則

2007年に締結された日本インドネシア経済連携協定(EPA)に基づき、2008年8月にインドネシア人看護師・介護福祉士候補者第1期生208名が来日した。国際交流基金関西国際センター(以下KC)では、そのうち介護福祉士候補者56名の日本語研修を担当した。
先行事例・先行研究を検討したところ、ゼロ初級から約半年間で現場での就業を目指すケア・ワーカーのための日本語教育プログラムは過去に類を見ないことがわかった。そこで本研修では、KCで培われた日本語教育理念とノウハウ、さらに2007年に公開したデータベース『日本語でケアナビ』を活用する形でコースデザインを行った。本稿は、KCで行われたインドネシア人介護福祉士候補者を対象とする日本語研修について、「初級からの専門日本語」を中心に、その成果と課題を報告し、介護分野の専門日本語教育への一提言を試みるものである。

通訳養成に携わる非母語話者日本語教師のための
教授法授業
-通訳訓練法を扱った実践-
本文【PDF:345KB】
長坂水晶

通訳養成に携わる非母語話者日本語教師を対象に「通訳トレーニング入門」の授業を行った。授業では、通訳の過程に沿った一言語の活動(日本語から日本語への再表現)を体験し、活動の目的や効果についても話し合った。活動は理解力、記憶力、表現力、要約力、ストラテジー力の養成につながるものを扱った。参加者への授業後のアンケートでは全員が自国での通訳養成や日本語授業に取り組む自信につながったと答えている。また短期間であったにも関わらず、全員が運用力の伸びを自覚している。参加者の間には運用力の差があったが、全員がグループによる活動に積極的に参加し、関係が良好なことも観察された。通訳養成のための活動を体験・分析・考察する授業を通して、非母語話者日本語教師を対象とした研修で通訳養成のための教授法を扱う必要性と効果が確認された。

韓国中等教育機関への留学生ボランティア派遣
プログラム実践報告
-国際交流基金ソウル日本文化センターにおける
日本語ネイティブ・ゲスト派遣の試み-

本文【PDF:330KB】
長田佳奈子・中沢徳子・北村武士・十河俊輔

本稿では2007、2008年に実施した国際交流基金ソウル日本文化センターにおける韓国中等教育機関への日本語ネイティブ留学生派遣プログラム(約50校へ延べ64人の留学生を派遣。約8000人の生徒が日本語の授業で留学生に接した)の運営方法および成果について報告する。留学生がゲストで入ったことにより授業が活性化され、生徒の学習動機や日本への関心が高まるなどの効果が見られた。生徒および留学生のアンケートからは概ね肯定的な評価が得られた。また、教師の授業報告から、留学生の協力・参加による授業を考え実施することで教師がコミュニケーション重視の授業について再考し、ふだんの授業を見直すきっかけになったことが窺える。また、教師ではない留学生にどのように協力・参加してもらうかなど、プログラム実施中に現れた課題とその対応策にも触れる。このプログラムは参加者から好評を得たが、海外におけるネイティブ参加授業の一形態として紹介したい。

「ロシア極東・東シベリア日本語弁論大会」
における審査基準作成
本文【PDF:419KB】
成田高宏・猪狩英美・森本由佳子・坂本裕子

本稿では、「ロシア極東・東シベリア日本語弁論大会」の新審査基準作成過程およびその試用結果について報告する。ロシア極東・東シベリア地域では、毎年、国際交流基金の助成を受け、ウラジオストク、ユジノサハリンスク、ハバロフスクの3地域持ち回りで、日本語を学ぶ大学生による日本語弁論大会が開催されている。しかし、開催地により審査基準が異なり、その基準も曖昧であったため、共通した審査基準の作成が望まれた。作成に際しては、信頼性の高い評価が行える基準を作成することをねらいとしたが、副次的に学習・指導の一助となるよう配慮した。試用結果から、新基準は適切な手続きをふまえて使用すれば良好に機能することが確認されたが、質的な検証も含めた信頼性のさらなる検証が今後の課題である。

日本語能力試験「文法」の問題項目分析
―テイルの問われ方と困難度との関係について―
本文【PDF:219KB】
桑名翔太・小野澤佳恵・北村尚子

日本語能力試験「文法」の問題項目を設定する際、ターゲット、錯乱枝ともにそのレベル相当の文法項目を用いていれば、常にそのレベル相当の問題項目になるとはいえない。例えば、「動詞のテイル形」は、日本語能力試験「文法」の「出題基準」で4級の文法項目とされている。しかし、過去23年分のテイルの問題項目について分析データを参照したところ、4級では難しい問題項目、さらには、3級でも難しい問題項目が見られた。詳しく分析を行ってみると、級ごとに困難度の上がる要因のあることがわかった。具体的には、シカを絡めて問うと4級では難しく、テアル、テオク、自動詞・他動詞、マダ、ガル、タガルを絡めて問うと3級でも難しい問題項目になる。このように、4級の文法項目でも、問い方によって難易度が異なる。文法項目自体のレベル設定だけでなく、問い方によるレベル設定にも留意することで、受験者の能力を的確に測ることができるのではないかと考える。

「日本の生活と文化」をトピックにした
中等教育向け読解教材の開発
-英国中等教育向け日本語リソース
『読む力-CHIKARA for READING-』の場合-
本文【PDF:576KB】
来嶋洋美

中等教育向け日本語リソース『力-CHIKARA-』は、英国のGCSE 試験のシラバスをもとにしたトピックからなるリソース群である。このうち『読む力-CHIKARA for READING-』は、「日本の生活と文化」がトピックで、特に読解を通した日本語と日本事情の学習のために開発された。
『読む力-CHIKARA for READING-』には「ホームステイ」「日本人のお祝い」など7つのサブトピックがあり、各サブトピックは本文とその音声、理解問題のほか、漢字・語いの問題、文型練習、発展課題等で構成されている。主な特徴としては、初級前半の学習者にとって読解活動がしやすいように内容的に相互に独立した短い段落で本文を構成したこと、文型練習の設問にも本文の内容を生かした文脈づけをしたことなどがある。ここでは、このような『読む力-CHIKARA for READING-』の開発過程と内容・構成について報告する。

ピア・ラーニング利用による自律学習、協働的学習を促す
学習環境デザインの試み
―アゼルバイジャンにおける日本語学習者と邦人との交流活動
「日本語会話クラブ」の実践―
本文【PDF:494KB】
立間智子

本稿では、アゼルバイジャン・バクー国立大学と在留邦人との13カ月にわたる交流活動の実践を報告する。
海外において、日本語を学んでも日本語の社会的需要、文化的需要がない環境では、学習者は何のために学び、日本語を学んだその先に何を目指すのか具体的な目標が定まりにくい。そのような環境における日本語学習の意義は、漠然とした学習者の自己内面的な成長や発展に見出すことになるが、具体的にどのような自己内的成長や発展を目指し、そのために教師はどのような学習環境をデザインすべきか、指標がないことが多い。
報告者はバクー国立大学の日本語学習者の学習環境を分析し、アゼルバイジャンにおける日本語教育の社会文脈化を考えるとともに、学習者の言語学習ビリーフの傾向を明らかにし、その特性をいかした学習環境のデザインを提案する。

報告

ポーランド、スロバキア、チェコの日本学科合同合宿の試み
本文【PDF:213KB】
瓜生佳代・アレキサンドラ・シュチェフラ
スタニスワフ・マイヤー・アンナ・チャスカ

PDFファイルをご覧いただくためには、Adobe Reader(無償)が必要です。
Adobe ReaderダウンロードページGet ADOBE READERよりダウンロードできます。

ページトップへ戻る