国際交流基金日本語教育紀要 11号 要旨

研究ノート

インドネシアの高校・大学日本語教師への質問紙調査に見る日本語学習の意味づけの変化
本文【PDF:401KB】
古川 嘉子・木谷 直之・布尾 勝一郎

本研究で行った調査では、インドネシアの日本語教育の当事者である、高校と大学のインドネシア人日本語教師を対象とした。そこでは、過去(1970年代~90年代)と現在(2000年以後)の日本語学習の意味づけについて聞き、その間の社会、日・尼関係、教育政策の変化の中で、日本語学習の目的・動機・社会的意味がどのように変わってきたのかを見た。過去には、日本語学習の意味として、高校教師・大学教師両者とも「仕事」を挙げていた。現在は、高校教師は「日本への留学」を第一に挙げ、一方、大学教師は「仕事を得ること」に加え、ポップカルチャーを挙げた。また、社会の日本語学習に対する受け止め方は、過去には地域差が見られたが、日本語教育の広まりとともにその差が縮小してきたことがわかった。さらに、日本語は、インドネシアにおいて学校や学習者がグローバル社会とつながっていくための一つのきっかけとして意味づけられている様子が見えた。

実践報告

『エリンが挑戦!にほんごできます。』の現地化
—中国中等教育段階のための教材作成—

本文【PDF:419KB】
柳坪 幸佳・鈴木 今日子・松浦 とも子

中国の中等教育には、近年第二外国語として日本語を設置する学校が見られる。しかし、中国教育部による第二外国語のシラバスや教科書はまだなく、何をどう教えればいいか、試行錯誤をしている教師が多い。このような状況の中、国際交流基金北京日本文化センターは、教材『エリンが挑戦!にほんごできます。』(国際交流基金、2007)の内容を厳選、中国の現地事情を考慮した内容を追加し、『エリンが挑戦!にほんごできます。艾琳学日語』として出版した。教材の作成にあたっては、中国の教室で第二外国語の主教材として使えるようにすること、同時に、第一外国語の日本語授業でも視聴覚教材として使えるようにすることを目標とした。教材に対しては、教師・学習者ともに好意的な評価を示したが、異文化理解の育成に関しては教師への支援が必要なことがわかった。

日本語学習サイト「まるごと+(まるごとプラス)」の開発
—課題遂行と異文化理解を助けるウェブサイト—

本文【PDF:1,170KB】
川嶋 恵子・和栗 夏海・宮崎 玲子・田中 哲哉・三浦 多佳史・前田 純子

JF 日本語教育スタンダード準拠の海外の成人向け教科書『まるごと日本のことばと文化』の開発に合わせ、関西国際センターでは、この教科書を使って学ぶ学習者のためのサポートサイト「まるごと+(まるごとプラス)」を開発した。「『日本語を使ってできること』が増やせる」、「『リアリティ』のある練習ができる」、「大人が『楽しく使える』」の3つをキーコンセプトとして定め、課題遂行を意識した練習、異文化理解のための情報やきっかけを提供するサイトを目指すこととした。「まるごと+」は教科書の「入門A1」、「初級1 A2」の2つのレベルに対応した種々のコンテンツを提供しており、動画を使った会話練習や異文化理解のためのコンテンツを中心に、学習者や教師から好評を得ている。本稿では、「まるごと+」の開発方針とそれをどのように具現化したか、また、サイトの反響を報告する。

オンライン日本語講座「NIHONGO Starter
—電子書籍型教材の開発と運用—

本文【PDF:854KB】
篠原 亜紀・簗島 史恵

国際交流基金が放送大学と共同開発した電子書籍型の教材が、JMOOCのオンライン講座として公開されている。本報告では、この教材の概要とその運用の状況について紹介する。教材のレベルは入門(JF日本語教育スタンダードのA1レベル)で、使用言語は英語である。Lesson1~10まで全10冊あり、1冊45分ぐらいで学習できる。各Lesson の目標は「Can-do」で提示され、スキットの動画を中心に、解説、練習問題、Can-do の練習などから構成されている。公開後、日本語や日本文化に関心を持つ様々な国の多様な受講者が登録しており、修了者の事後評価も高い。ただ、MOOC 一般に共通する継続性の課題については、本講座にも当てはまる。現在はFacebook を用いた学習コミュニティの活性化などに取り組んでいるが、今後も本講座の受講者の増加と継続率の高い安定に向けて様々な方策を検討していきたい。

インドネシアの中等教育における「レッスン・スタディ」の試み
—実践から学び、授業の改善へつなぐ—

本文【PDF:1,251KB】
エフィ ルシアナ・東田 明希子・上野 美香

インドネシアでは、中等教育における日本語学習者の増加に伴って、教師の育成が課題とされて久しい。国際交流基金ジャカルタ日本文化センターは課題解決へ向けて様々な支援を続けてきたが、とりわけ政府と共催で行ってきた教師研修による高校日本語教師育成への貢献は大きい。一方で、当該研修に残された課題や教師の育成をめぐる議論のパラダイム・シフトに鑑みると、「教師の成長」を促す新たなアプローチが求められてもいる。本稿では、その方策のひとつとして、インドネシア中学校・高等学校日本語教師会とともに試みた「レッスン・スタディ」について報告する。「レッスン・スタディ」を通じて高校教師たちが得た学び、その学びがもたらした成果と課題を振り返り、インドネシアの中等教育機関での日本語教育における「レッスン・スタディ」の意義や課題を検討することで、教師の育成に関する議論の活性化が期待される。

フランス中等教育バカロレア受験クラスにおける『まるごと日本のことばと文化』使用の可能性と課題
本文【PDF:354KB】
奥山 令織奈

フランスでは高校卒業資格試験としてバカロレアが実施されている。2013年度実施の試験からはその試験方法および内容がCEFR の理念と規準に準拠したものに改定された。第三外国語科目試験の評価項目は口頭の産出能力、口頭でのやり取り能力、言語能力の3つであり、高校3年間の学習を通じてこれらの能力の養成が必要となる。筆者は第三外国語科目の日本語受験を希望する高校生のクラスを2年間担当し、『まるごと日本のことばと文化』を使用して指導を行った。本稿ではバカロレアの第三外国語科目試験で評価対象となる日本語の運用能力に着目し、『まるごと日本のことばと文化』における学習内容、学習方法と比較しながら、その有用性および問題点を報告する。

イングランドのカリキュラム改革と日本語教育
  —初等教育への外国語教育必修化を中心として—

本文【PDF:634KB】
福島 青史・村田 裕子

イングランドでは、2014年9月より新しいナショナルカリキュラムが施行される。外国語教育において大きな変化は初等教育の第3学年から第6学年で、外国語教育が必修化される点である。ただ、この初等レベルでの外国語必修化の過程では、当初、「フランス語、ドイツ語、イタリア語、中国語、スペイン語、古典(ラテン語または古典ギリシャ語)の7言語の中から1つ以上を教えること」という言語指定があり、英国の日本語教育に大きな影響を及ぼすことが考えられた。最終的なカリキュラムには、この7言語リストはなくなったが、その間、国際交流基金ロンドン日本文化センターは、各方面に、様々な働きかけを行った。本稿では、イングランドのカリキュラム改革の過程を、英国で日本語教育に関わる実践者の視点から記述する。

教師ポートフォリオ作成ワークショップ
—自律的、主体的に学ぶ教師の支援を目指した教師研修のデザイン—

本文【PDF:710KB】
近藤 裕美子

本稿は、現職教師向けに実施した教師ポートフォリオ作成ワークショップについて、研修デザインの過程を報告し、研修の意義と課題について考察したものである。自律的で継続的な学習を支えるツールとしてポートフォリオがあるが、教育経験や教師研修参加経験を通じて内省し、学び続ける教師を支援するものとして教師ポートフォリオがあり、それを作成するワークショップを実施した。研修をデザインする際に、各参加者が日本語教師としての「過去」「現在」「未来」を繋げられるように研修構成を考慮するとともに、ポートフォリオ作成体験を通じてポートフォリオ活用に対する理解がより深められるよう留意した。
研修後に実施した質問紙調査の結果から、「ポートフォリオの理解」及び「教師の生涯学習支援」の面で参加者からの好評価が認められたが、教師ポートフォリオを今後も継続して活用して行く方法や、教師ポートフォリオの作成経験を各教育現場での学習ポートフォリオの活用に繋げる点で課題が残った

成人学習者の学習を支えるポートフォリオ評価の試み
本文【PDF:830KB】
松井 玲子・西山 恵子

国際交流基金シドニー日本文化センターは、『まるごと日本のことばと文化』を主教材として使用した成人学習者対象の日本語講座にポートフォリオ評価を導入して2年目となる。1年目の実践を通して、ポートフォリオ評価に消極的な受講生の存在や、全体的に学期が進むにつれてモチベーションが低下していく傾向も見受けられた。このような課題を踏まえ、評価ツールとしてのポートフォリオの改善を試みた。
本稿では、新たに開発したポートフォリオの各構成物の概要、それを用いた評価活動の実践、そしてその成果について報告する。ポートフォリオと教室活動を連携させたコースデザインを試みた結果、受講生の評価活動の参加度や学習が促進される様子が観察された。ポートフォリオ評価は成人学習者の学習を支援するために有効的なツールであるいう可能性が示唆された

日本語教育用リソース検索Web サイト「Classroom Resources」の開発
—オーストラリアの初中等教育におけるシドニー日本文化センターの日本語教育支援—

本文【PDF:718KB】
大知 春華・キャシー ジョナック・金 孝卿

国際交流基金シドニー日本文化センターは1991年設立以来、オーストラリアの日本語教師を対象に日本語教育に関する最新情報や教室で使える教材やリソースなどを配信してきた。これまで作成した教材やリソースは2009年から当センターのホームページ上に掲載されていたが、開発した教材が作成年順に並べられているだけのものであった。そこで、当センターが作成してきた日本語教育用リソースをより効率的に検索できるWeb サイトClassroom Resourceshttp://jpfsyd-classroomresources.com/)を開発し、2014年4月に公開した。本稿では、当Webサイト開発の企画、実施の背景を明らかにし、Webサイトの機能と特徴、公開後の反響を報告する。

報告

日本語学習を通して行う人間教育の試み
—サンパウロ日本文化センターの生徒研修—

本文【PDF:525KB】
柴原 智代・末永 サンドラ輝美・吉川一甲 真由美エジナ

日本語教師のためのウェブサイト「KC クリップ」
—関西国際センター出版教材・開発サイトのサポートページ作成による教師支援—

本文【PDF:684KB】
西野 藍・石井 容子・川嶋 恵子

スラバヤ国立大学によるJF にほんご拠点事業国際セミナー
「東南アジアにおける中等日本語教育と教師養成」の実施

本文【PDF:385KB】
松本 剛次

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