日本語教育通信 本ばこ 『よくわかる逐次通訳』
本ばこ
このコーナーでは、最近出版された日本語教材や参考書の中から、「海外の先生にとって使いやすい教材」「授業や研究の役に立つ本」「知っていると便利な図書・資料」などを紹介します。
『よくわかる逐次通訳』
著者:ベルジュロ伊藤宏美、鶴田知佳子、内藤稔
出版社:東京外国語大学出版会
URL:http://www.tufs.ac.jp/blog/tufspub/
発行年月:2009年10月
ISBN:978-4-904575-05-5
判型・頁数:B5判、166頁 DVD1枚
定価:2,940円
「逐次通訳」というのは、発言者がある程度の長さ話した後で、その内容を通訳者がまとめて別の言語に通訳する方法のことです。発言者と同時に通訳する「同時通訳」と同様、国際会議でのコミュニケーションのために必要な通訳の技能です。
この本は通訳・通訳教育の専門家が、プロの通訳を目指す学生向けに書いたものです。日本語教育とは違う立場で書かれた本ですが、日本語教育の現場でも、観光やビジネスの場面で通訳ができるようになることを希望する学生のために、通訳のトレーニングを担当する先生が数多くいるでしょう。そんな先生方も本書を通して、通訳に必要な基本的知識・能力に関する整理ができ、通訳トレーニングコースのカリキュラムや、授業方法を知ることができます。付属のDVDで、映像により通訳演習授業の具体的な内容、方法、実践例を知ることもできます。
理論編:通訳の理論と通訳訓練法
「理論編」では通訳に必要な知識・能力を整理しています。具体的な通訳訓練法として、ESIT(パリ第三大学通訳翻訳高等学院:日本語を正規科目に採用している欧州トップレベルの通訳翻訳専門の大学院課程)の逐次通訳演習の例が紹介されています。
「理論編」は、通訳トレーニングの授業を組み立てるための具体的なヒントを得たいと考えた時に、必要に応じて読むこともできます。中級程度の学習者を対象に通訳トレーニングをする先生には、次のような内容が指導の参考になるでしょう。
- 通訳に必要な聞く力とは何か
- 聞き方の訓練方法
- 通訳演習授業で学生による生のスピーチを利用する理由・効果
- 知識の増やし方の方法
- ノートのとり方の訓練例やポイント
- 日本語と英語の話し方・考え方の違いへの対応方法
- ジョークをどのように訳すか
ノートのとり方と通訳の実演がわかる
「実践編」では通訳演習授業の具体的な内容として、学生によるスピーチ(英語・日本語)と、それに対する学生の訳例・ノート例、それに対する講師のコメントを見ることができます。コメントは「情報の整理」「論理展開の流れ」「数字・固有名詞」「時制」がポイントになっています。DVDでは、これらのスピーチの音声と、講師によるノートとりの実演、通訳の実演を見ることができます。更に講師の解説もあり、ノートのとり方のコツや筆記用具に関する具体的な注意点についても知ることができます。
(長坂水晶/日本語国際センター専任講師)
国際交流基金の新刊教材・図書
『国際交流基金 日本語教授法シリーズ 第11巻 日本事情・日本文化を教える』
2010年5月(ひつじ書房)
<関連情報>
新規日本語教授法教材『国際交流基金日本語教授法シリーズ』
日本語国際センター図書館
「日本語教育通信」の「本ばこ」では、新しく出版された図書の紹介を行っていますが、日本語の教材や、日本語、日本語教育関連の図書についての情報がほしいときは、日本語国際センター図書館のホームページもぜひ利用してください。
日本語国際センター図書館
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/j_lbrary.html
6月のテーマ展示「JF日本語教育スタンダードと海外の言語教育スタンダード」
http://jli-opac.jpf.go.jp/display2/201006.htm
図書館蔵書検索
http://jli-opac.jpf.go.jp/mylimedio/search/search-input.do?lang=ja
日本語教育ナビゲーション
http://www.jpf.go.jp/j/urawa/j_library/navigation.html