日本語教育通信 授業のヒント “待ちの姿勢”の情報収集~ネットの力であなたも今日からスペシャリスト!《新刊情報・論文編》

授業のヒント
このコーナーでは、海外の日本語教育の現場で、すぐに応用できる具体的な教え方のアイデア、ヒントを紹介します。

なぜ情報収集なのか、何ができるようになるのか

執筆者似顔絵  はじめまして、と書きかけて思い出したのですが、実は10年ぶりに日本語教育通信に寄稿させていただくことになりました、村上吉文と申します。これまでモンゴルやサウジアラビアなど、日本語教師のあまりいない地域を中心に働いてきました。現在は国際交流基金ブダペスト日本文化センターに勤めております。
 日本国内や東南アジアなどのように日本語教師の多い地域では、研究会や勉強会なども盛んで、日本語教師がスキルアップしていく機会はたくさんあります。しかし、一般に「辺境」と呼ばれる地域では日本語教師は孤立しがちで、実際に私も1992年に青年海外協力隊の隊員としてモンゴルに派遣された時は初等中等教育機関で教える隊員は私だけでしたし、1997年に国際交流基金から派遣されたサウジアラビアでは、ネイティブ日本語教師はアラビア半島に私一人という状況でした。
 しかし、実はモンゴルとサウジアラビアではまったく状況が違っていました。なぜなら「インターネット元年」と呼ばれた1995年を境に、日本国内と海外の情報格差が急激に少なくなり始めたからです。日本から遠く離れたアラビア半島の砂漠の中の町にいても、オンラインでさまざまな情報が入ってくるようになったのです。
 それから20年が過ぎた現在、私たちの周りには質が高く、しかも無料の情報があふれるようになりました。しかし、そうした情報を大量に読みこなして、ものすごい速度で成長していく人がいる一方、まだその可能性に気づいていない人も少なくありません。今回と次回の「授業のヒント」では、直接教室の中で使えるヒントではありませんが、皆さんが、教材を準備したり、自分自身で勉強するために役に立つ情報を効率的に収集する方法を2回に分けてご紹介します。
 効率的に情報を収集するのに大切なことは、自分から情報を取りに行かずに、待っているだけで情報が入ってくるような状況を作り出すことです。第1回の今回は、新刊情報と、学術論文の2種類の情報を、「待ちの姿勢」のままでどのように収集するかをご紹介します 。

自分の専門分野や関心のある著者の新刊情報を出版日より前にキャッチしよう

 新刊情報を発信しているサイトはいくつかありますが、ここでは老舗の一つ「全国書店ネットワーク e-hon」でご紹介します(www.e-hon.ne.jp)。このサイトの「新刊パトロール」というサービスを使うと、図1のようにメールで新刊情報が送られてきます。このメールを受け取るにはサイトに行って以下の作業を行います。

図1「新刊パトロール受信」の画像

(図1)

図2「新刊パトロールに登録」の画像

(図2)

  • 1)会員登録をする
  • 2)トップ画面上部から、著者の名前やその著者の本のタイトルで検索をする
  • 3)検索結果の内の1冊を選び、本の詳細を開く
  • 4)「新刊パトロールに登録」というボタンをクリックする(図2)

 ※クリックしても反応がないように思えるかもしれませんが、画面の右の方に「この本の著者を新刊パトロールに登録しました」という文字が表示されていれば手続きは完了しています。

 次に、好きなキーワードで“新刊パトロール”を登録してみましょう。「日本語教育」「自律学習」などと興味のある言葉を登録しておくと、それらをタイトルやサブタイトルに含む新刊が出た時にお知らせが届きます。設定の手続きは以下のとおりです。

図3「e-hon」マイページの画像

(図3)

図4「e-hon」パトロール条件設定の画像

(図4)

  • 1)トップページから「マイホームページ」に入る(図3)
  • 2)画面の左の方にある「新刊パトロール条件を設定」をクリックする(図4)
  • 3)既に登録した著者の一覧の下に表示されている「お探しの新刊」「書名キーワード」「著者名」「ジャンル名」の中から「書名キーワード」の部分に好きなキーワードを入力する
  • 4)「パトロール条件を確認」 をクリックする

 ※「お探しの新刊」は<1>から<5>まであり、それぞれに30文字まで入れられるので、だいたい150字ぐらいまでのキーワード登録ができます。
 ちなみに私は「日本語」「言語」「語学」「外国語」「eラーニング」「自律学習」などの他に、今まで住んだことのある国や地域の名前、それに「Chromebook」「インラインスケート」などの個人的な趣味のキーワードを登録しています。
 似たようなサービスとしては「新刊.net」(http://sinkan.net/)というものもあります。

専門分野の論文を公開と同時にキャッチしよう

 新着論文を探すには「Google Scholar」(https://scholar.google.com)というサービスが便利です。使い方はとてもシンプルで、以下のように行います。

  • 1)まず「自律学習」などのキーワードで検索。
  • 2)次の画面で、左下の「アラートを作成」(英語の場合は「create alert」)のボタンをクリック。
  • 3)次の確認画面でもう一度「アラートを作成」というボタンを押す。

 そうすると、先ほどの新刊情報と同じようにメールでお知らせが届くようになります。なお、Googleのアカウントがない方は、手続きの前にアカウント開設のページに誘導されます。
 こうした方法とは別に、特定の学術誌の更新情報だけを受信することもできます。その場合はアグリゲーターという種類のアプリやウェブサービスを使うと便利ですが、ここでは「Feedly」(feedly.com)という代表的なサービスを例に取ります。設定の手続きは以下のとおりです。

  • 1)アカウントを作る
  • 2)コンテンツを追加するページ(http://feedly.com/i/discover)へ。
  • 3)キーワードやURLを入力する欄に、学会の公式サイトのURLを入れる(図5)。
  • 4)「+Feedly」という緑色のボタンをクリック(図6)。
図5「Feedly」学会のURLを記入する画像

(図5)

図6「+Feedly」ボタンの画像

(図6)

 上記の手続きでサイトがFeedlyに登録され、その後、サイトが更新されるとFeedlyに情報が届くようになります(図7)。

図7「Feedly」から届いた情報の画像

(図7)

 次回はYouTubeなどの動画でどのように情報収集するかと、今回ご紹介した新刊と論文の情報をどのように発信して共有していくかを中心に解説します。お楽しみに!

(村上 吉文 / ブダペスト日本文化センター日本語上級専門家)

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