日本語教育通信 海外日本語教育レポート 第18回

海外日本語教育レポート
このコーナーでは、海外の日本語教育について広く情報を交換したり、お互いの交流をはかるために、各地域の新しい試みやコース運営などについて、関係者の方々に具体的に紹介していただきます。

【第18回】韓国の2007年改訂教育課程について
—外国語教育における文化を重視した改訂—

韓国教育課程評価院 副研究委員
(イ)(ヨン)(ベク)
Lee Yong Baek

1.教育課程のあらまし

 韓国では現在、第7次教育課程が実施されている。韓国の「教育課程」は小・中・高等学校のカリキュラムであり、日本の学習指導要領に相当するものである。

 日本語教育関連の教育課程は、中学校用、一般系列高等学校(普通高等学校)用、外国語系列高等学校用、国際系列高等学校用、及び家事・実業系列高等学校用の5種類が開発されている。中学校の日本語教育課程は、2001年(第7次教育課程)から適用されている。一般系列高等学校には1973年(第3次教育課程)から適用されており、2011年からは最新の「2007年改訂教育課程」が適用される予定である。国際系列高等学校の教育課程は2002年(第7次教育課程)から適用されており、家事・実業系列の教育課程は1996年(第6次教育課程)から適用されている。

 「2007年改訂教育課程」が適用される年度と対象は次表のとおりであるが、英語と数学については適用年度は異なる。なお、2007年改訂教育課程は第7次教育課程に続くものだが、第8次とは言わない。(今までは基本的に5年ごとに改訂していたが、これからは必要に応じて改訂するため)

適用年度 対象
2009年3月 小学校1年・2年
2010年3月 小学校3年・4年、中学校1年
2011年3月 小学校5年・6年、中学校2年、高校1年
2012年3月 中学校3年、高校2年
2013年3月 高校3年

 中学校では2010年度から改訂教育課程が適用される。一般系列高等学校、国際系列高等学校、家事・実業系列高等学校、外国語系列高等学校では日本語は基本的に高校2年次から学習するので、改訂教育課程は2012年に適用される。ただし、外国語系列高等学校では日本語科目を高校1年次(2011年)からも学習することができる。

 教育課程改訂の背景としては以下の二点があげられる。
(1)国家・社会の要求や時代の変化を教育課程に反映させるため教科教育の内容を改善し、授業時間数を適正化させる必要がある。
(2)学習者側からの修正要求を反映させる必要がある。

2.主な改訂の内容

 中学校、一般系列高等学校、及び外国語系列高等学校における教育課程の改訂の中心的な内容は次の三点であり、全体的にみると改訂教育課程では文化の教育を重視していることがわかる。

  • 第7次教育課程の細分類化
  • 文化教育の強化と再分類化
  • 基本語彙と意思疎通(コミュニケーション)基本表現の修正

(1)科目の変更
第7次教育課程における日本語関連科目と2007年改訂教育課程における科目をまとめると次表のようになる。

  教育課程
第7次教育課程 2007年改訂教育課程
学校 中学校 生活日本語 生活日本語
一般系列高等学校 日本語Ⅰ、日本語Ⅱ 日本語Ⅰ、日本語Ⅱ
外国語系列高等学校 日本語聴解、日本語会話Ⅰ、日本語会話Ⅱ、日本語読解Ⅰ、 日本語読解Ⅱ、日本語作文Ⅰ、日本語作文Ⅱ、日本語文化、日本語文法、実務日本語 基礎日本語、日本語聴解、日本語会話Ⅰ、日本語会話Ⅱ、日本語読解、日本語作文、日本語文化Ⅰ、日本語文化Ⅱ、日本語文法
国際系列高等学校 日本語講読 日本語講読
家事・実業系列
高等学校
観光日本語 観光日本語
 

表中、外国語系列高等学校の日本語読解Ⅱ、日本語作文Ⅱ、実務日本語は改訂教育課程ではなくなり、基礎日本語、日本語文化Ⅱ、は新設された科目である。これをみると外国語系列高等学校において、改訂教育課程では、文化の教育を重視していることがわかる。

(2)一般系列高等学校における主な改訂の内容
一般系列高等学校における第7次及び改訂教育課程の概要を比較してみると、次表のとおりである。

第7次教育課程 2007年改訂教育課程
1.性格 1.性格
2.目標(総括目標)
 聴解、会話、読解、作文、情報および文化の6項目
2.目標(総括目標)
(1)言語技能(聴解、会話、読解、作文)
(2)文化
(3)態度
3.内容
(1)意思疎通(コミュニケーション)活動(聴解、会話、読解、作文) (2)言語材料(意思疎通(コミュニケーション)技能、発音、文字、語彙、文法、文体、文化)
3.内容
(1)言語的内容(言語技能、言語材料) (2)文化的内容
4.教授・学習方法
  • 技能、コミュニケーション
  • マルチメディア、教材
  • 学習者の自律、協働
  • 学習者の意欲、興味、関心
4.教授・学習方法
(1)一般指針 (2)言語技能(聴解、会話、読解、作文) (3)言語材料(発音と文字、語彙、文法、意思疎通(コミュニケーション)基本表現) (4)文化
5.評価
(1)評価指針 (2)評価内容(聴解、会話、読解、作文) (3)評価方法
5.評価
(1)評価指針 (2)評価方法(聴解、会話、読解、作文、文化)

 第7次教育課程では「2.目標」「4.教授・学習方法」においては具体的な目標項目や教授・学習項目を並べるだけに止まっていたが、改訂教育課程では全ての項目が言語の4技能を中心に再分類されているのが特徴の一つである。また、文化の項目を言語文化や日常生活文化、伝統文化・大衆文化に3分し、それぞれの学習の重要性を強調していることも特徴である。さらに教育課程の全体に渡り、言語の4技能を有機的に連係させ、場面と状況に応じた相互作用を可能にさせる教育を強調している。

 具体的なカリキュラムの変化としては、第7次教育課程の一般選択科目と深化選択科目が改訂教育課程では統合されたことをあげておく。

日本語の教材の写真

(3)語彙
 韓国の教育課程では、基本語彙表と呼ばれる、教えることが望ましい一連の語彙が定められている。執筆者が教科書を作成する時に使う語彙は、基本語彙表にあるものを中心に選ぶが、使用できる語数(使用語数)は教育課程で制限されている。

 下表は高校で用いられる基本語彙数と教科書で使うことができる語数を示した使用語数の教育課程による変遷を示したものである。

基本語彙数
第4次 第5次 第6次 第7次 改訂
754 846 771 833 1023
 
使用語数
第4次 第5次 第6次 第7次 改訂
2200 1800 1400 900 900

 基本語彙表については第4次から第6次教育課程までは基本語彙数に比べて使用語数が多かったため、教科書間の語彙レベルの差が大きくなるという問題が生じた。そのため、第7次教育課程までは使用語数が大幅に減らされてきた。

 また、第7次教育課程では使用語数900語のうち70%を基本語彙から選ばなければならなかったが、教科書に共通に用いられる語彙数は十分とは言えなかった。そのため、改訂教育課程では基本語彙数を大幅に増加させるとともに、使用語数のうち80%を基本語彙から選ばせることで、教科書間で共通する語数を増やそうとしている。

 改訂教育課程の基本語彙は以下の第7次教育課程の問題を解決するために新しく改訂されたものである。

(1)上位概念の語はあるが、下位概念の語がない。例えば上位概念の「果物」はあるが、「りんご、バナナ、ぶどう」などの下位概念の語がない。また逆に「タクシー、車」のような下位概念の語はあるが、「乗り物」のような上位概念の語がない。
(2)助数詞が含まれているが、基礎的な「ひとり、ふたり、・・・」のような語がない。
(3)自然にコミュニケーションを行うために必要な感動詞が少なかったので加えた。例「あら、ううん、なるほど‥」
(4)「衛星放送、通信」のように初級の教科書では用いられていない難しい語が含まれている。
(5)時代が変わり、あまり使われない「ポケベル、ワープロ」のような語がある。
(6)伝統文化の内容は記述されているが、伝統文化に関わる語が非常に少なかったので加えた。例「お盆、かぶき、茶道、七五三、ひなまつり‥」

3.今後の課題

 中学校の「生活日本語」は裁量科目として位置づけられており、すべての中学校で教える必要がないため、高校の日本語教育課程との連携が保たれていない。そこで、今後の課題としては中学校と高校の連携をとると同時に大学のカリキュラムと整合性のある教育課程の開発に取り組むことがあげられるだろう。

参考文献
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손민정(2006) 고등학교 외국어 계열 전문교과 교육과정 개정 시안 연구 개발-중국어과, 일본어과,러시아어과,아랍어과- 연구보고 CRC 2006-37 한국교육과정평가원Son Min Joung(2006)高等学校 外国語 系列 専門教科 教育課程 改訂試案 研究開発 -中国語科、日本語科、ロシア語科、アラブ語科- 研究報告  CRC 2006-37 韓国教育課程評価院)
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教育科学技術部 教育課程教科書情報サービス http://cutis.mest.go.kr/ 教育科学技術部は、日本の文部省に相当する韓国の機関。教育課程教科書情報サービス・サイトでは、教育課程の内容と教科書作成に必要な情報を提供しています。
「日本語教育国別情報」シラバス・ガイドライン一覧
http://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/syllabus/index.html

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