日本語教育通信 日本語・日本語教育を研究する 第40回

日本語・日本語教育を研究する
このコーナーでは、これから研究を目指す海外の日本語の先生方のために、日本語学・日本語教育の研究について情報をおとどけしています。

筑波大学大学院人文社会系/留学生センター 今井新悟

J-CATの受験方法

前回は、インターネットを通じてコンピュータを使い、日本語能力を測るテストJ-CATJapanese Computerized Adaptive Test)の概要、仕組みなどを紹介しました。今回は、前回の続きとしてJ-CATの利用の方法について説明します。

1.J-CATの利用環境

 まず、WEBページhttp://www.j-cat.orgにアクセスしてください。そこにSample Questions(問題例)がありますので、それをやってみてください。音量や問題が表示されるスピードが確認できます。現在のインターネットでは画像や動画も普通に使われています。例えばFlashという技術で写真がスライドショーのように切り替わるのは頻繁に見るでしょう。You Tubeやニュース、ドラマの動画の配信サイトなどもたくさんあります。普段こういうサイトを視聴できていれば、J-CATも問題なく受験できます。今はほとんどなくなりなりましたが、インターネットへの接続にダイアルアップ回線を使っている場合には、これら動画は見られないはずですし、J-CATにも対応していません。
 J-CATの受験資格は特に設けていませんが、一定の期間内での受験回数を制限し、半年に1回受験できるようにしています。その理由は、短期間に繰り返し受験しても能力の伸びが点数として表れないからです。また、システムのセキュリティを確保するためでもあります。意図的に何度も連続して受験するような人がいると、システムへの負荷が大きくなって不具合が生じかねないからです。

2.登録・受験の方法

 個人受験と団体受験の2種類の方法があります。個人受験はJ-CATのホームページhttp://www.j-cat.orgで登録すると、3日以内(ただし休日・祭日を除く)にパスワードがeメールアドレスに届きますので、それでログインして受験できます。
 学校やクラスでまとまって受験する場合には団体受験が利用できます。テスト実施者(教師・監督者など)がJ-CAT事務局(mail@j-cat.org)に申し込めば、テスト実施者宛てに受験者のパスワードが送付されます。
 個人受験を例に、登録の流れを画面に沿って説明します。団体受験でもほぼ同じですが、受験者自身が行う作業は個人受験よりも簡便になります。次がJ-CATのトップ画面です。URLhttp://www.j-cat.orgです。

図1 J-CATのトップ画面の画像
図1 J-CATのトップ画面

表示方法は「日本語」、ひらがなのみの「にほんご」、英語の「English」、中国語の「中文」があり、右肩のタブで選択して表示言語を選ぶことができます。「個人で受験する」のタブをクリックすると次の画面になります。

図2 システムのチェック画面の画像
図2 システムのチェック画面

 この画面ではJ-CATで必要とされるコンピュータとインターネットのシステムを調べています。OKとならずに、×マークが出た場合にはJ-CATが正常に動作しませんので、システムの調整や最新版のブラウザーやFlash Playerのダウンロードが必要になります。次に「下のボタンを押してください」の指示に従ってボタンを押してください。すると、音声が流れますので、スピーカーやイヤホン/ヘッドホンのボリュームを調整してください。そのあと、次の登録画面に進みます。

図3 登録画面の画像
図3 登録画面

 登録画面では、名前、所属、その他の情報を記入します。この情報は成績証にそのまま印刷されるものです。個人情報は受験者個人への成績証発行および受験者やテスト実施者からの問い合わせに応じて情報を検索するために使われるもので、個人情報が他人に知られることはありません。ほかに質問事項がいくつかあります。これらはCan-do statements(能力記述文)と呼ばれるもので、これは前回説明したように、能力記述文とJ-CATの成績との関連付けのためのデータとして使われます。受験者の成績には影響を与えません。
 個人受験の場合、登録したeメールアドレスにパスワードが届きます。パスワードを受け取ったら、再び最初の画面で「ログイン Sign in」ボタンを押します。すると、次のログイン画面になります。

図4 ログイン画面の画像
図4 ログイン画面

 ここに、登録したメールアドレス(これがログインIDの役割をします)と送られてきたパスワードを記入します。そして、青色の「ログイン Sign in」ボタンを押して、テストに進みます。テストの本番前に、セクションごとに次のような例(練習問題)が1問あります。その後、テストが始まります。

図5 練習画面の画像
図5 練習画面

 団体受験の方法には3種類の方法があります。各機関に最も合う方法を選んでください。いずれの方法でもテスト終了後にJ-CAT事務局がテスト実施者に受験者全員の成績を一覧にまとめて通知します。

1)ID・パスワード発行方式
J-CAT事務局が発行したログインIDとパスワードで受験する方法です。テスト実施者が受験予定人数をJ-CAT事務局に連絡すると、テスト実施者は人数分のIDとパスワードを受け取ります。テスト実施者は受験者ひとり一人にそのIDとパスワードを知らせます。受験者はトップ画面の「ログイン」ボタンを押してIDとパスワードを入力して受験します。

2)所属名統一方式
受験者が登録するときに使う所属名だけを決めておく方法です。J-CAT事務局は、登録時に「所属」欄に記入する所属名(Tsukuba2012など)を一つ決めてテスト実施者に知らせます。受験者は個人受験の画面から自分の名前と所属名で登録します。その後、3日以内にJ-CAT事務局が受験者にパスワードを送ります。「ログイン」ボタンを押してログインID(受験者のメールアドレス)と受け取ったパスワードで受験します。

3)単一パスワード方式
指定された日に受験者全員が同じパスワードで受験する方法です。テスト実施者はJ-CAT事務局に受験日を連絡すると、その日のみ人数無制限で利用できる共通パスワードと登録時に「所属」欄に記入する所属名を受け取ります。受験者は「団体受験」から登録画面に進んで所属名などの情報を入力し、皆が同じパスワードで受験します。

3.成績

テスト終了直後に、成績表がPDF形式で作成されます。受験者は各自でダウンロードすることができます。さらに団体受験の場合はテスト実施者が全受験者の成績一覧をPDFで受け取ります。

図6 成績証の画像
図6 成績証

 気をつけてもらいたいのは、成績表にあるレベルの表示(初級、中級など)は、あくまでも得点の解釈の目安として示されているに過ぎないということです。J-CATの得点を利用してレベル分けを行うなど、J-CATの成績の利用は利用者の目的に応じて行われるべきであると考えています。教育機関やプログラムが異なれば、レベル分けの数も幅も異なるはずです。ですから、J-CATをプレースメントテストなどに使う場合には、J-CATの点数がその教育機関のどのレベルに相当するのかを独自に決める必要があります。いくつかの方法が考えられますが、まず、過去のプレースメントテストの点数とJ-CATの点数を関連付ける方法があります。その詳しい方法は、本稿の最後にある参考文献を参照してください。ただしこの方法は同じ受験者に両方のテストを受けてもらわなくてはなりません。それよりも簡便な方法として、過去のプレースメントテストを使わず、J-CATの得点だけでレベル分けを仮に行ってみて、教師の意見などを聞きながら、レベルごとの点数の区切りの調整を行う方法もあります。ただし、この場合、レベルの区切りが安定するまで試行錯誤を繰り返して調整を続ける必要があります。

4.J-CATの運営

 J-CATの構築には、日本語教師、テスト理論の専門家、アイテムライター、プログラマーなど大勢の人が関わっています。そして現在、J-CATは筑波大学日本語・日本事情遠隔教育拠点を事務局として運営されています。担当者が常駐して、問い合わせへの回答、パスワードの発行、不正アクセスのチェックなどを行っています。また、毎年受験者が増えているため、サーバーの増強、プログラムの改良などを行い、さらに安定的な運営を目指しています。
 現在、J-CATの運営経費は、大学の予算によって賄われ、利用料は無料です。大学がこのようにJ-CATを無料で実施することは、大学が税金を使って培ってきた知の財産を社会還元するということに他なりません。大学が自前の予算で社会に対するサービスを無料で行うというのは、これまでは一般的ではなかったかもしれませんが、「社会に開かれた大学」が求められている今、大学が研究・教育を通して社会に貢献するのは、当然のあるべき姿だと思います。

参考文献

  • 今井新悟・黒田史彦(2012年3月発行予定)「J-CATと既存のテストの関連付けの方法」『筑波大学留学生センター日本語教育論集』第27号, pp.57-65.
  • 今井新悟・赤木彌生・中園博美(2012年3月発行予定)『J-CAT(コンピュータによる自動採点日本語テスト)オフィシャルブック』ココ出版

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