2006年度下半期 調査研究プロジェクト
「多国籍短期総合日本語シラバス」整備

2006年度下半期 調査研究プロジェクト「多国籍短期総合日本語シラバス」整備 概要
計画者 向井園子
プロジェクト参加者 木山登茂子、坪山由美子
外部協力者 福谷正子(客員講師)
日程 開始 2006年10月~終了 2007年4月

目的と概要

(1) 調査の経緯:

「多国籍短期総合日本語シラバス」(以下「シラバス」)は、2002年に整備、公開され、その後検証作業が行なわれ報告が出された。03-04年度は、「多国籍短期総合日本語シラバスの今後の整備拡充に向けた実態調査」プロジェクトにおいて、同年度の一部の授業を対象に授業で実践されたタスクと「シラバス」上のタスクの照合および分析を行なった。その結果を踏まえて、05-06年度には、以下の2件の調査を実施した。

  1. 専任講師を対象とした、アンケートによる現行シラバスに対する意見聴取
  2. 05年度冬期、06年度春期および夏期の3期の多国籍短期研修おける「総合日本語」授業の教室活動の調査

上記の調査の結果、「総合日本語」授業で教室活動に新たな取り組みが行なわれており、「シラバス」にない新たなタスクが4割弱に上ることが明らかになった。

(2) 目的:

本プロジェクトは、これまでの調査結果を踏まえて、外部公開されている「シラバス」の改訂を視野に入れ、新たに追加する項目の整備および、「シラバス」の記述形式への提言を行なうことを目的とする。

(3) 方法:

  1. 05−06年度の多国籍短期研修おける「総合日本語」授業の調査データの整備(継続)
  2. 「シラバス」の項目(タスク)の整理
  3. 「シラバス」に新しく追加する項目(タスク)の整備

成果の概要

(1) 成果

先のプロジェクトに引き続き、05年度冬期、06年度春期および夏期の多国籍短期研修における「総合日本語」授業の授業記録に関して、配布資料やリソースに基づく確認を行ない、全体で400余りのタスクに関するデータを整備した。さらに、「シラバス」に新たな項目を追加するための整備作業に着手したが、その過程で、「シラバス」に新たなシラバス項目を追加する作業には以下のような問題があることが判明した。

  1. 「シラバス」のタスク記述は、レベル記述を目的としているため、例えば、「中+」では「簡単に説明する・・」、「上−」では「詳しく説明する・・」のように、一定の「制約」に基づいて抽象化されて書かれているが、それらのタスク記述の元となった授業記録やタスクシートなどの配布資料がないため、どのように抽象化されていったか探ることができない。
  2. 授業記録の活動記述は、具体的な作業手順の記述となっているため、「シラバス」への新たな項目として加えるためには、活動の記述を「シラバス」のタスク記述形式に合わせて読み換える作業が必要になるが、読み換えの指針となるものがない。
  3. ACTFL・OPIのレベル基準には、タスクの難易度と並んで、場面・話題、テキストタイプ、正確さ(文法・社会言語学的能力など)の4つの指標があるが、「シラバス」の個々のタスク記述には、この全ての要素が含まれているわけではない。このことは、「シラバス」の個々のタスク記述がレベル記述として不充分であることを意味する。以上のことから、現行の記述形式のまま「シラバス」に新たな項目を追加することは、困難であり、且つ不充分であるとの結論に達した。

(2) 提言

本プロジェクト結果から、「総合日本語」の授業記録の蓄積を「公」のものとするには、以下の視点が必要である。

  1. 新たなタスクデータベースとして、必要なデータベースフォーマットの要因を確定すること:
    フォーマットには、「インプットのテキストタイプ」の表示など、タスクのレベル判定に必要な情報を含める必要がある。また、利便性の向上のために、「目標」と「手順」を分けて表示すること、発話が「一方向」か「双方向」かなどの視点も加えることが求められる。
  2. 授業記録と配布資料の情報に基づいたデータの読み取り:
    授業担当者間で授業内容や研修生に関する情報を共有することが一義的な目的である授業記録に、第三者も理解可能な客観的なデータの記載を、全ての授業担当者から期待することは難しい。そのため、新たなデータの読み取りが必要となる。