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文化を生かしたまちづくり〜創造都市の可能性〜

2008年7月29日〜8月7日まで、ジャパンファウンデーションは、「文化を生かしたまちづくり〜創造都市の可能性〜」と題した知的交流事業を実施しました。

アジア14カ国*からまちづくりに携わる若手専門家15名を招へいし、日本人若手専門家4名と共に、10日間寝食を共にしながら東京、横浜、大阪、京都、神戸、金沢における創造都市への取り組みについて視察し、今後アジアにおけるまちづくりのあり方について考察を深めました。

*中国、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジア、インド、オーストラリア、ニュージーランド

本プロジェクトのアドバイザーとして大阪市立大学の佐々木雅幸教授、講師として埼玉大学の後藤和子教授をそれぞれお迎えしました。参加者のバックグラウンドは、都市計画に携わる行政官、建築家、文化遺産保存・修復の専門家、写真家、詩人、NGO関係者、新聞記者、研究者等実に多彩でした。

今回のテーマである「創造都市」とは、その地域にしかない街並みや、伝統産業、芸術・文化、市民自治のしくみなどを市民自らが育てている暮らしやすい都市のことです。今、世界の多くの都市が、環境破壊や産業空洞化などの都市問題を抱えていますが、これらの問題を解決してよりよい環境に生まれ変わろうとする際の、一つの理想的モデルが創造都市という考え方です。

BankART1929を見学する参加者たち

横浜市では、歴史的建造物を改築し、市民の芸術活動の場として再生させた「ZAIM」、「Bank ART 1929」、「赤レンガ倉庫1号館」を見学しました。「ZAIM」では、横浜市役所創造都市推進課の仲原正治課長より、かつて違法な特殊飲食店が軒を連ねていた地域を、地域住民とアートの共存を通して街並が新しく生まれ変わることをめざす「黄金町バザール」という事業についての紹介があり、ユニークな地域再生の方法に参加者は熱心に聞き入っていました。

大阪では、日本で一番若者が集まるお寺といわれ、寺子屋の現代版といった形で、地域の教育文化振興に貢献している應典院というお寺を視察したほか、大阪市立大学都市研究プラザが主催する「アジア・アーツマネジメント会議」に参加し、フィリピンのマリア・シルバナ・ザパンタ・ババテさんが、自身が所属するNGOでのアートを通じたコミュニティの活性化について、韓国のキム・ジャンオンさんが韓国・安養市における公共アートプロジェクトの事例について発表を行なうとともに、関西地域のアートマネジメント関係者と交流しました。

京都では、京都で一番古い神社である松尾大社を西村権禰宜のご案内で見学しました。古来神社ではその当時の最先端の芸術が奉納されていたそうですが、松尾大社ではその精神を現代に生かし、毎年4月に全国のコンテンポラリーダンサーやパフォーマーたちが神前に集って芸の奉納を行なう草雲会という催しが開かれており、静謐な神社の境内を散策しつつ、西村権禰宜より松尾大社の取り組みについてご説明頂きました。

京都の町屋を見学しました

その後、写真家で京都・町屋倶楽部代表の小針剛さんのご案内で町屋を見学しました。京都・西陣では町屋倶楽部の支えもあり、90年代半ば頃から、アーティスト達が職住一体の機能を求めて町屋に暮らし始め、それまで空き家になっていた町屋が有効利用されるようになりました。小針さんの「まちの活性化のために町屋に住むのではなく、住みたい人が住んで活用することにより、空き家が再生し、まちが活性化される」というお話が印象的でした。京都では、廃校となった小学校をリノベーションして芸術振興の拠点として蘇らせた京都芸術センターも見学しました。

神戸では芸術を媒介に職業、年齢、性別、国境などの境界を越えてあらゆる人々が集まり、対話し、意見交換ができる場として設立され、芸術と社会をつなぐ様々な活動を行なっているNPO「芸術と計画会議(C.A.P.)」が運営する「STUDIO Q2」を訪問しました。STUDIO Q2では代表でアーティストの杉山知子さんからC.A.Pの活動についてのお話を伺い、その後、神戸市企画調整局デザイン都市推進室主幹の今井毅さんから神戸市における創造都市への取り組みについてお話を伺いました。

最後の訪問地、金沢では、兼六園、ひがし茶屋街、大樋美術館、金沢21世紀美術館、金沢市民芸術村、職人大学校、金沢市役所を訪問しました。プログラム全体を通じて参加者が最も関心を持った都市が金沢です。大樋美術館では陶芸家、大樋年雄さんより大樋焼や金沢の歴史、茶道の精神について英語で分かりやすく御説明頂き、参加者全員を美術館内に設えたお茶室にご案内下さいました。大樋美術館での体験は、日本人参加者にとっても日本の文化について改めて知る良い経験となったようです。

現代美術の美術館として世界的にも高い評価を受ける金沢21世紀美術館は、その親しみやすい建物の構造や、地元の小学生に対する地道な教育活動の成果もあって、年間130万人が来場し、地域活性化の原動力となっています。金沢市民芸術村は、市民が演劇、美術、音楽などの芸術活動を自由にできるよう、青々とした芝生の広場に古い倉庫を改築して工房として活用し、安価な料金で24時間利用できるよう開放されており、その利用者本位の運営のあり方に参加者一同大きく感心していました。

金沢ではプロジェクトのまとめとして報告会を開催しました。まちづくりといえばまずはインフラの整備が最優先課題である国々からの参加者も少なくなく、「今後の自分達の国づくりを進める上では、日本の成功例ばかりでなく失敗例も聞いてみたかった」という声も聞かれた一方、「アジアの国々ではトップダウン方式で物事が決められることが多いが、金沢や町屋倶楽部のように市民自らの力でまちづくりが進む事例を知って参考になった」、「東京のような巨大都市での事例は自分たちの国で応用するのは難しいが、金沢のようなコンパクトな都市での事例は今後自分達がまちづくりをすすめる上でとても参考になる。」といった意見が出されました。

歓送会にて

このプロジェクトは、JENESYS次世代リーダー招へいプログラムの一環として行なわれました。2008年後半にも違うテーマで同様のプロジェクトを行なう予定です。

国際交流基金(ジャパンファウンデーション)日本研究・知的交流部
町田春子

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