1)オーストリアとドイツ:ウィーンとハンブルクの分離派
ウィーンおよびドイツ語圏においては、ヨーゼフ・ホフマン、コロマン・モーザー、ウィーン工房のその他のメンバーの作品に、型紙の造形を研究した結果を見出せる。ウィーンではオーストリア国立工芸美術館が約1万点の型紙を所蔵しており、隣接する工芸美術学校の教授であったヨーゼフ・ホフマンがその一部を教材として借り出し、授業で活用していたことが知られている。
ウィーンにおいては、型紙のデザインの平面性と幾何学的文様が、テキスタイルの図案、書籍装飾、グラフィックの平面デザインに応用されており、本セクションではその代表例を展示する。
2)イギリスとアメリカ:グラフィックアートとテキスタイル
イギリスは日本と早くから交流を持った国として、1862年のロンドン万国博覧会において西欧で初めて日本の産業美術を大規模に紹介した。日本の造形は装飾芸術の遅れに頭を悩ませていた英国のデザイン関係者から高い評価を得た。
その結果、アーツ・アンド・クラフツ運動に関係した作家は、型紙に表現されるような日本の文様の自然主義的側面を学んだ。イギリスの例として、テキスタイルと書籍装飾を、そしてアメリカからは、型紙からの影響が顕著なウィリアム・ブラッドレーのポスターを展示する。
3)ベルギー:アール・ヌーヴォーの揺籃(ようらん)
1890年代初めにアール・ヌーヴォーの中心地のひとつとなったベルギーのブリュッセルでは、パリを経由したジャポニスムが、生活空間全体をアートの表現の場と捉えるこの新しい運動の発想源のひとつと考えられている。
型紙は、アール・ヌーヴォーの建築家やデザイナーたち、ヴィクトール・オルタ、アンリ・ヴァン・ド・ヴェルドらが具体的に研究した日本の造形であった。美術雑誌が型紙の図案を紹介したほか、美術家個人たとえばヴァン・ド・ヴェルドが型紙を所有していたように、日本美術収集アイテムのひとつでもあった。
平面的な構成、簡素さ、曲線のアラベスクなど、ベルギーのアール・ヌーヴォーは、型紙の造形から学んだと思われる要素がみられる。本セクションでは書籍やポスターに加え、室内装飾の例も合わせて展示する。
4)フランス:アール・ヌーヴォーからアール・デコへ
フランスはジャポニスムの先進国として、絵画や工芸の分野で早くから日本の造形表現を取り入れ、浮世絵や工芸品から学んだ新しい表現に取り組んだが、型紙そのものが知られたのは、意外に遅いと思われる。
しかしアール・ヌーヴォーの時代になるとルネ・ラリックにおける宝飾品や、エクトール・ギマールなどのデザイン、フェリックス・ヴァロットンの版画等、壁紙やテキスタイルなど多分野において、自然のモチーフのデザインや、幾何学的繰り返し文様を西欧のコンテクストに導入した豊かな表現がみられ、とりわけ装飾芸術の分野において大きな成果をもたらした。本セクションでは、これらの代表的作品を展示する。 |