パリ日本文化会館
2006年上半期 /2006年下半期

Katagami―型紙とジャポニスム展
展覧会概要
日本の工芸において、今日まで型染めの中心的技法として伝承されている型紙染めは、古くは鎌倉時代にその存在が確認され、江戸時代後期に全盛期を迎えて、その造形性や技術は世界でも高く評価されています。とりわけ19世紀後半、万国博覧会などを通じて型紙がもたらされた西欧諸国では、装飾工芸運動の流れの中で、型紙のモチーフを転用、さらに発展させたと思われる、数多くの作品が生み出されました。
「Katagami-型紙とジャポニスム展」では、一般には余り知られることのない型紙の歴史を、型染作品を展示しながら改めて紐解くと共に、西欧の工芸デザインへ及ぼした影響を、ポスター、アクセサリー、テキスタイル、書籍、家具、金工等、多くの作例と共に検証していきます。

JFサポーターズクラブJFサポーターズクラブでは、同展の魅力をレポートした「海を渡った型紙たち−パリの『型紙とジャポニスム』展」を掲載しています。


動画スクウェア動画スクウェアでは、『型紙とジャポニスム展』のもようを映像ファイルで公開しています。

型紙 源氏車繋ぎ模様
型紙 源氏車繋ぎ模様
明治時代・19世紀 個人蔵
縹麻地源氏車青海波模様中形素襖
縹麻地源氏車青海波模様中形素襖
江戸時代・19世紀 独立行政法人日本芸術文化振興会国立能楽堂蔵
紅型型紙 松梅模様
紅型型紙 松梅模様 琉球王府時代・18〜19世紀 サントリー美術館蔵
黄地枝垂桜燕流水蛇篭草花模様紅型衣裳
黄地枝垂桜燕流水蛇篭草花模様紅型衣裳  琉球王府時代・18〜19世紀 個人蔵
フェリックス・ヴァロットン:「怠惰」
フェリックス・ヴァロットン:「怠惰」
1896年 新潟県立近代美術館・万代島美術館蔵
型紙 幾何学模様
型紙 幾何学模様
19世紀後半 ブランシュ&ベルトラン・ベロン コレクション
ルネ・ラリック:櫛「さくらんぼ」
ルネ・ラリック:櫛「さくらんぼ」
1902-1903年頃
箱根ラリック美術館蔵
フィリップ・ウォルファース:化粧箱
フィリップ・ウォルファース:化粧箱
1916年 ベルギー王立美術歴史博物館蔵(Inv.7758)
会期 2006年10月19日(木)〜2007年1月20日(土)
会場 パリ日本文化会館
協賛 JAL logo 株式会社日本航空インターナショナル
bsi logo bsi Group−Domaine de Belesbat
協力 共立女子大学

監修者

馬渕 明子

日本女子大学人間社会学部文化学科教授
長崎 巌 共立女子大学家政学部被服学科教授

高木 陽子 

文化ファッション大学院大学教授

関連企画
【講演会】 「型紙とジャポニスム」 馬渕 明子 2006年10月19日(木)
【講演会】 「日本の型染めの歴史」 長崎 巌 2006年12月13日(水) 
【レクチャー・コンサート】 「ドビュッシー前奏曲集と現代の型絵染」
2006年12月15日(金) 20:00〜  会場:大ホール、一般9ユーロ、会員7ユーロ
内容:ドビュッシー前奏曲集に想を得て型絵染作家である伊砂利彦氏が制作した作品を観ながら、ピアニストで音楽学者の青柳いづみこ氏による講演・演奏を聴くレクチャー・コンサート。江戸時代の型紙が欧州のジャポニズムに与えた影響を紹介する同展と反対に、欧州の音楽作品が現代の型絵染作家にインスピレーションを与えた軌跡を紹介する。

展覧会構成
1.日本の型紙と型染め―その歴史と用法
日本における防染剤を用いた型染めの起源は、古くは奈良時代(8世紀)までさかのぼるが、当時は木型を用いて蝋を付着するというものであった。
型紙と糊を用いた型染めが行われるようになったのは鎌倉時代(13世紀)以降で、その技法が完成され、多様な展開を見せるのは、江戸時代になってからである。この時代の型染めは、主に麻と絹に施された小紋と、木綿に施された中形に分類されるが、本セクションでは、小紋・中形の型紙と服飾資料を展示して、近世以降の型紙染めの歴史と型紙の時代的変遷を紹介する。
型紙は18世紀から19世紀にかけての紀年銘をもつ型紙を中心に、小紋と中形を時代変遷に沿って展示する。服飾品は、17世紀の武家男性の小紋染服飾品や18世紀の中形染狂言装束、また明治初期の女性の着物や琉球王府時代の紅型などを展示する。

2.西欧における型紙とその影響―ジャポニスムの時代の工芸
19世紀に、西欧では工芸運動が盛んになりはじめ、各地に装飾工芸美術館が相次いで開館した。それらのいくつかの都市における型紙の応用例を展示する。
1)オーストリアとドイツ:ウィーンとハンブルクの分離派
ウィーンおよびドイツ語圏においては、ヨーゼフ・ホフマン、コロマン・モーザー、ウィーン工房のその他のメンバーの作品に、型紙の造形を研究した結果を見出せる。ウィーンではオーストリア国立工芸美術館が約1万点の型紙を所蔵しており、隣接する工芸美術学校の教授であったヨーゼフ・ホフマンがその一部を教材として借り出し、授業で活用していたことが知られている。
ウィーンにおいては、型紙のデザインの平面性と幾何学的文様が、テキスタイルの図案、書籍装飾、グラフィックの平面デザインに応用されており、本セクションではその代表例を展示する。

2)イギリスとアメリカ:グラフィックアートとテキスタイル
イギリスは日本と早くから交流を持った国として、1862年のロンドン万国博覧会において西欧で初めて日本の産業美術を大規模に紹介した。日本の造形は装飾芸術の遅れに頭を悩ませていた英国のデザイン関係者から高い評価を得た。
その結果、アーツ・アンド・クラフツ運動に関係した作家は、型紙に表現されるような日本の文様の自然主義的側面を学んだ。イギリスの例として、テキスタイルと書籍装飾を、そしてアメリカからは、型紙からの影響が顕著なウィリアム・ブラッドレーのポスターを展示する。

3)ベルギー:アール・ヌーヴォーの揺籃(ようらん)
1890年代初めにアール・ヌーヴォーの中心地のひとつとなったベルギーのブリュッセルでは、パリを経由したジャポニスムが、生活空間全体をアートの表現の場と捉えるこの新しい運動の発想源のひとつと考えられている。
型紙は、アール・ヌーヴォーの建築家やデザイナーたち、ヴィクトール・オルタ、アンリ・ヴァン・ド・ヴェルドらが具体的に研究した日本の造形であった。美術雑誌が型紙の図案を紹介したほか、美術家個人たとえばヴァン・ド・ヴェルドが型紙を所有していたように、日本美術収集アイテムのひとつでもあった。
平面的な構成、簡素さ、曲線のアラベスクなど、ベルギーのアール・ヌーヴォーは、型紙の造形から学んだと思われる要素がみられる。本セクションでは書籍やポスターに加え、室内装飾の例も合わせて展示する。

4)フランス:アール・ヌーヴォーからアール・デコへ
フランスはジャポニスムの先進国として、絵画や工芸の分野で早くから日本の造形表現を取り入れ、浮世絵や工芸品から学んだ新しい表現に取り組んだが、型紙そのものが知られたのは、意外に遅いと思われる。
しかしアール・ヌーヴォーの時代になるとルネ・ラリックにおける宝飾品や、エクトール・ギマールなどのデザイン、フェリックス・ヴァロットンの版画等、壁紙やテキスタイルなど多分野において、自然のモチーフのデザインや、幾何学的繰り返し文様を西欧のコンテクストに導入した豊かな表現がみられ、とりわけ装飾芸術の分野において大きな成果をもたらした。本セクションでは、これらの代表的作品を展示する。


モーリス・ドニ:「ばら色の船」 型紙 波と扇模様
モーリス・ドニ:「ばら色の船」
1893年 個人蔵
型紙 波と扇模様
19世紀 ミュルーズ染織美術館蔵

 

 
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