アトゥール・ドディヤ展

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ボンベイ:迷宮(ラビリンス)/実験室(ラボラトリー)
Atul Dodiya : Bombay: labyrinth / laboratory



  • ドディヤ展:イメージ1
  • ドディヤ展:イメージ2
  • ドディヤ展:イメージ3

開催趣旨

 このたび国際交流基金アジアセンターでは、アジアの優れたアーティストを紹介する個展シリーズの第2回目として、インドのランジット・ホスコテ氏をゲスト・キュレーターにむかえ、現在インドでもっとも活躍中の作家、アトゥール・ドディヤを、日本で初めて紹介いたします。
 アトゥール・ドディヤは、1959年ムンバイ(ボンベイ)で生まれ、Sir J. J. School of Art で絵画を学びました。80年代初めよりグループ展に出品し、90年代に入ってからは毎年のようにムンバイを中心にインド各地の画廊で個展を開催するようになり、インドの絵画のジャンルを代表する作家と目されるようになります。90年代後半からは絵画の領域から立体的な作品へと展開する実験的な作品を発表しています。2000年に発表したシャッター・ペインティングを端緒に、門、梯子、手押し車、映画館の看板、蚊帳付き折り畳みベッドなどなど、街中の公共空間で見かける日常の品々「レディメイド」を作品に取りこむようになってきました。その内容は、彼の常に関心事である、家族を主題とする自伝的ナラティブ、インド映画に代表されるようなポピュラー・カルチャーに内包される集団的幻想、マスカルチャーの情報によって支えられているグローバルな消費者活動、神々・聖者・国家的リーダーの間に残る伝統的な民族習慣のポストモダン的な解釈などがアレゴリカルに表現されているものとなっています。

  一方、今回のキュレイターであるランジット・ホスコテ氏は、インド美術界の若い世代を代表する新進の評論家であり、現在「ザ・ヒンドゥー」紙の文化記者であるとともに、美術雑誌「Art of India」 の編集に関わるなど、美術評論家、キュレイターとしても活躍中です。
 今回の展覧会では、上記のコンセプトを踏まえつつ、絵画、シャッター・ペインティング、レディメイドのオブジェを用いて、ドディヤが実際に住み、グローバル化の今日、インドでもっとも変貌激しい大都市、ムンバイの街並みから着想を得たインスタレーションを、国際交流基金フォーラムの展示空間全体に展開することになります。
 どうぞご期待ください。

(国際交流基金アジアセンター)

  • 本展タイトルに使われている「ボンベイ」は、現在一般的に「ムンバイ」と呼ばれていますが、キュレイターおよび作家の希望により、タイトルでは旧称である「ボンベイ」を採用しました。

企画趣旨

 アトゥール・ドディヤの絵画とインスタレーションは、インドの大都市における文化を反映した美術作品として、受け止めることができる。それらの作品は、ボンベイ(ムンバイ)のような都市の日常生活における状況、すなわち現実と幻想とが、またスローモーションで流れ行く過去とハイ・スピードに去り行く現在とが、独特な形で融合している現状から刺激を受けて、制作されたものである。 ドディヤの作品においては、シャッターや梯子といった道路脇に見かける硬質な工具と、陽気に浮遊するファンタジーを繰り広げる頭上の映画のポスターや広告看板とが、同じ次元で競い合う。彼は、大都市に住む人々が経験する二重生活のあり方、つまり、外向きには過密スケジュールがもたらす精神的重圧と対峙しつつ、内面においては、聖者、漫画のヒーロー、また政治に殉じた人物や銀幕のアイドルたちが燦然と輝く魔法の世界に引きこもる、といった生活のあり方を、劇的な形で作品のなかで呈示しているのである。
 ドディヤの作品は、大都市をあらゆる曲がり角において危険が待ち受ける恐ろしい迷宮(ラビリンス)として表現しているが、また同時に、社会的な作用を引き起こす可能性を秘めた実験室(ラボラトリー)としても表現している。大都市は欲望から成り立つ組織体である、と言うこともできよう。そこに生起する飽くなき願望の到達点は、目にすることはできても到達することはできない。そこで、叶えられない願いのために、夢による慰めが必要とされるのである。
 今回の展覧会は、上述のような捉え方に則って、都市の心理作用を空間的に示すモデルとして機能することになるであろう。展覧会場は複数の「オブジェ化された空間」から構成される迷路に転換される。それぞれの「オブジェ化された空間」は、個々に注視されるべき独立した領域ではあるが、同時に会場全体が有機的な繋がりをもつものとしても構想されている。
 従って、ドディヤの作品とその展示構成はインタラクティヴで、観客の参加を招き寄せるものである。この展覧会が観客の注目を集めるスペクタクルとして、またそのようにアーティストと観客との間の創造的な関係を生み出すような仕掛けとして機能することを期待している。

(ランジット・ホスコテ/本展キュレーター)


作家およびキュレイターの略歴

アトゥール・ドディヤ(Atul Dodiya)
作家

1959年ムンバイに生まれ、サー・ J. J. スクール・オブ・アート で絵画を学ぶ。1982年卒業。80年代初めより絵画作品を発表し始め、1989年にムンバイで初めての個展をギャラリー・ケモルドで開き、1993年には、アムステルダムのギャラリー・アプントをはじめ海外での個展も増える。グループ展としては、「Indian Contemporary Art: Post Independence(独立後のインド現代美術)」(1997年)、「Embarkations (船出)」(2000年)、「Family Resemblance (家族の肖像)」(2000年)、「Anonymously Yours (匿名希望)」(2000年)など国内の展覧会のほか、ニューヨークにおける「Out of India: Contemporary Art of the South Asian Diaspora(インドから:南アジア・ディアスポラの現代美術)」(1997年)など海外の展覧会にも多数出品。今年に入って、イギリスのテート・モダンの「Century City: Art & Culture in the Modern Metropolis(センチュリー・シティ:近代都市の美術と文化)」では、シャッターに絵画を描くという新しい手法を用いた作品を発表。2001年9月から開催される横浜トリエンナーレにも出品予定。ムンバイ在住。

ランジット・ホスコテ(Ranjit Hoskote)
 1969年ムンバイ生まれ。ボンベイ大学で文学・美学の修士号を取得。現在、ザ・ヒンドゥー紙の文化部記者として勤務する傍ら、インドの若い世代を代表する評論家・キュレイターとして「Private Language」 展(1997年)、「Making an Entrance」(2000年)をはじめ、数々の展覧会を企画。また詩人としても活躍。著書には『Pilgrim, Exile, Sorcerer: The Painterly Evolution of Jehangir Sabavala』(1998年)のほか、新刊の詩集『The Sleepwalker's Archive』(2001年)などがある。ムンバイ在住。

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