ブルネイ(2017年度)
日本語教育 国・地域別情報
2015年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数 |
---|---|---|
2 | 3 | 216 |
教育段階 | 学習者数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 0 | 0.0% |
高等教育 | 155 | 71.8% |
その他 教育機関 | 61 | 28.2% |
合計 | 216 | 100.0% |
(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
1941年12月から1945年6月の旧日本軍の占領下において、日本語教育が実施されていた。
1984年4月の我が国との外交関係樹立後は、1986年6月に当時の教育保健省において、社会教育事業の一環として日本語教育が始まった(現在の教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)日本語講座)。1987年からは同講座の講師として国際交流基金から日本語教育専門家が派遣されていたが、2007年を以って派遣が打ち切られた。2015年より国際交流基金から日本語パートナーズの教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)への派遣が開始された。
2001年8月より、ブルネイ大学言語センターにて選択科目として日本語教育が開始され、2015年まで日本人教師1人体制であったが、2016年より、日本人教師2名体制へ増員された。2003年2月から開講された同大学言語センターでの一般を対象とした日本語講座を含む言語講座は、2011年以降一時休止していたが、2017年から同大学では、一般の人が非正規生として正規生とともに同大学の講座を選択受講することを可能にする制度を導入したため、日本語講座含む言語講座も同様に一般からの受講が可能となった。2004年にブルネイ大学にて「日本・日本文化愛好サークル」が設立され、大学内外の日本に関するイベントにおいて積極的に活動している。ブルネイ工科大学においても同様の愛好サークルがあり、週一度日本文化を体験するために集っている。
その他、2005年から公立高等学校のひとつでカリキュラム外活動として日本語クラブが開始され、2017年現在、複数の公立高等学校及び技術学校において、同様の活動が行われている。また、2009~11年には「21世紀東アジア青少年大交流計画若手日本語教師派遣(JENESYSプログラム)」事業により、日本人教師の派遣が実施された。
背景
日本製の自動車・電化製品等の普及や国内で産出される天然ガスの過半が日本に輸出されるなどの緊密な経済関係もあり、日本への関心は一般的に高い。加えて若者は衛星放送等からの影響により日本のアニメ・音楽等に対して関心が高く、日本文化について知りたい、日本へ行ってみたいとの気持ちから日本語の学習を始めるケースが多い。一方、当地進出日本企業が少ないことや英語で十分業務遂行が可能であることなどから、日本語を学んだ後、使用できる場が少ないことが課題。
最新動向
2008年に日本語能力試験が開始され、当国の日本語学習者にも、日頃の日本語教育・学習の成果を測るために日本語能力試験を活用している人も一定数いる。ブルネイ大学では、2017年から、一般の人が非正規生として正規生とともに同大学の講座を受講することを可能にする制度を導入
教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)では、2016年まで、1年間の講座を開いていたが、2017年度より3か月の講座の年3回開講に変更された。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていないが、クラブ活動として「日本語クラブ」を設けている学校が複数校存在している。日本語教師が不在な上、顧問教師も日本語や日本文化に乏しいケースもあり、生徒が独自にYouTubeなどで日本文化を学んでいる学校もある。
高等教育
国内唯一の総合大学であるブルネイ大学の言語センターにて、日本語教育が実施されている。選択科目であるにも関わらず、抽選に漏れて履修できない学生が毎学期100人を超すなど、日本語は韓国語、中国語に並んで人気がある。レベル1からレベル6まで全てのレベルを履修すると日本語が副専攻として認められる。上級レベルは人数が集まらず開講できない言語が多い中、日本語は同センターで実施されている9言語のうち唯一全てのレベルを開講している。なお、上級レベルは全ての言語科目において、CEFR B1+(*1)に到達するよう設定されている。また、ブルネイ大学は2017年10月現在18校の日本の大学と交換提携を結んでおり、交換留学が積極的に行われている。
*1:言語コミュニケーション能力のレベルを示す国際標準規格。B1は社会生活の中で身の回りのことについて意見や理由を簡単に述べることができるレベル。
その他教育機関
成人教育として、教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)日本語講座が実施されている。教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)では裁縫やコンピューターなどの生涯学習教育が行われており、その一つとして言語クラスが開講されている。言語クラスは日本語の他、中国語、韓国語、フランス語、アラビア語などがある。同日本語講座は15歳から受講可能。2クラス(初級)のみの開講のため、受講者数の枠が限られている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
1-6-4/5-2-4制。ブルネイの将来を見据えた国家目標(Wawasan Brunei 2035)を踏まえ、ブルネイ教育省は2009年から国家教育システム21(SPN21: Sistem Pendidikan Negara Abad ke-21)の導入を新しいカリキュラムとしている。
初等教育(Primary Education)は、Pre-School(1年)に続いてPrimary Education(6年)とされている(年齢6~11歳)。初等教育修了時に統一試験(PSR: Penilaian Sekolah Rendah)が実施され、同試験の成績により入学する中等学校が決定される。
中等教育(Secondary Education)は、成績レベルにより4/5年間(Year7~10/11)とされており(年齢12~15/16歳)、進学コース別に中等教育修了時点(Year10/11)でケンブリッジ国際試験(GCE)Oレベルを受験し、2年間の大学予備課程(Pre-University)もしくは職業訓練校(IBTE)へ進学する(年齢17~18歳)。さらに大学予備教育修了時点のケンブリッジ国際試験(GCE)Aレベルの試験合格者が大学に進学することになる。高等教育の期間は学士の場合4年間。なお、現在、国立大学はポリテクニック(3年制の高等教育機関)を含め4校である。
教育行政
ほとんどの教育機関が教育省の管轄下にあるが、宗教省が所管する学校もある。
言語事情
マレー語が公用語であるが、英語も広く普及している。
外国語教育
教育省のバイリンガル政策により、特に英語教育が重視されており、初等教育から必修科目となっている。初等教育においては、その他の言語として国教であるイスラム教との関連でアラビア語教育が一部の児童に対して行われている。中等教育においては、選択科目としてアラビア語、中国語、フランス語がある。ブルネイ大学においては、必修科目の英語のほかに、選択科目として日本語、アラビア語、マレー語、フランス語、韓国語、中国語、タガログ語、ボルネオ島先住民言語がある。
外国語の中での日本語の人気
比較的高い。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていない。
高等教育
ブルネイ大学言語センターでは独自教材を作成し使用しているが、参考教材としては以下のとおり。
- 1.『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
- 2.『Total Japanese Conversation1、2』岡野喜美子他(早稲田大学)
- 3.『初級日本語げんきⅠ、Ⅱ』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)
- 4.『Japanese for College Students1、2、3』国際基督教大学(講談社USA)
- 5.『にほんご 90日①②③』ヒューマンアカデミー教材開発室(ユニコム)
その他教育機関
教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)で使用している主な教材は以下のとおり。
『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』(前出)
マルチメディア・コンピューター
ブルネイ大学では、DVDやノートパソコン、インターネットなどの様々なマルチメディア機器や電子媒体を使用している。同大学言語センターには、全ての教室にプロジェクターとスクリーンが整備されている。また、日本語コース内で実施される試験の一部をオンライン化するなどの試みも行われている他、教師が宿題をアップロードし、学生が各々ダウンロードして提出するなどの取り組みも行われている。
教師
資格要件
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていない。
高等教育
ブルネイ大学では、大学修士課程修了者で高等教育機関において最低3年以上の日本語教育の経験と、日本語能力試験受験者等に対する教育経験がある者としている。
その他教育機関
2017年10月現在、ブルネイ人2名が日本語教育にあたっている。
日本語教師養成機関(プログラム)
日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)日本語講座では常勤の日本語教師は雇用されていない。ブルネイ大学では、同大学に勤務する日本人教師2名が日本語教育にあたっている。同大学で日本語教育が開始された2001年から2015年までの間、日本人教師一人が教鞭をとっていたが、日本語が人気科目であることから2016年にもう1人採用され2人体制となった。
教師研修
現職の日本語教師対象の研修はない。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
日本語教師会として組織化はされていないが、個人ベースでの連携をとっている。
最新動向
日本語弁論大会、日本語能力試験の実施に尽力している。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
(情報なし)
シラバス・ガイドライン
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
評価・試験
2008年より国際交流基金による日本語能力試験を実施。
日本語能力試験のほか、ブルネイ大学及び教育省技術教育局生涯教育課の日本語コースにおいて試験を実施している。
日本語教育略史
1941~45年 | 旧日本軍の占領下において、日本語教育実施 |
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1986年 | 当時の教育保健省において、社会教育事業の一環として日本語教育開始(現在の教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)日本語講座) |
1987年 | 上記講座の講師として国際交流基金から日本語教育専門家を派遣(2007年まで) |
2001年 | ブルネイ大学言語センターにて選択科目として日本語教育を開始 |
2003~11年 | ブルネイ大学言語センターにて一般を対象とした日本語教育を実施 |
2008年 | 日本語能力試験を開始 |
2009~11年 | JENESYS若手日本語教師派遣事業により、日本人教師を派遣 |
2015年 | 日本語パートナーズ派遣開始 |
2016年 | ブルネイ大学言語センター、日本語教師が1名から2名に増員 |
2017年 |
ブルネイ大学、一般から非正規生として授業を受講する制度を導入 教育省ブルネイ技術教育インスティテュート生涯学習教育課(IBTE-CET)、日本語の短期講座を開講 |