エクアドル(2017年度)
日本語教育 国・地域別情報
2015年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数 |
---|---|---|
4 | 6 | 77 |
教育段階 | 学習者数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 0 | 0.0% |
高等教育 | 37 | 48.1% |
その他 教育機関 | 40 | 51.9% |
合計 | 77 | 100.0% |
(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
1990年にサンフランシスコ・デ・キト大学で日本語教育(公開講座)が始まった。
また、1992年よりJICAからキト・カトリカ大学に青年海外協力隊(以下JOCV)の日本語教師が派遣され、その後、JOCVの日本語教師は帰国したが、直接契約の日本人教師によって2017年現在も日本語講座(公開講座)が開講されている。
一方、1996年よりグアヤキル・カトリカ大学にも、JOCVの日本語教師が派遣され、公開講座として日本語が教えられていたが、現在は閉講している。
また、2002年1月よりグアヤキルのエスピリトゥ・サント大学の言語学部内に日本語コース(公開講座)が設置され、2017年現在も開講している。
1996年にマナビ州に設立されたマナビ・カトリカ大学では、2004年11月に第二外国語としての日本語コースを新設し、JOCVの日本語教師1名が2004年9月から2006年9月まで派遣された。しかし、現在、同日本語コースは閉講している。
また、パシフィック大学も2005年4月に日本語講座(公開講座)を開設した(現在は休講)。
2009年6月には、国内初の日本語学校FUJINOが元JOCVの日本語教師によってキト市内に開校され、2017年現在、全国にむけて、オンラインでの日本語講座が開講されており、アスワイ州、グアヤス州、ピチンチャ州、エル・オロ州、マナビ州の学習者が受講中。
2011年10月に、トゥングラウワ州のアンバト技術大学に日本語コースが開講。その後教師不足により一時閉講となっていたが、2015年10月より再び開講され、2017年10月現在まで続いている。
2014年にアスアイ州のクエンカ大学で日本語コースが開講(平成26年度より3年間国際交流基金日本語普及活動助成を受ける。)、2017年10月現在も開講されている。
2016年4月にはインバブラ州のヤチャイ大学で日本語クラブが設置され、そこで日本語授業が行われている。
また、キト・サンフランシスコ大学では、元国費留学生の主導の下、不定期ではあるものの、日本語講座が開講されている。
特徴
- キト・カトリカ大学、サンフランシスコ・デ・キト大学及びエスピリトゥ・サント大学において、日本語は各大学の学生以外も受講できるよう公開講座となっているが、学生にとっては外国語の選択科目のひとつであり、卒業単位を取得できる。開講しているのは主に初級レベルで、教師は直接契約の日本人教師、元JOCV隊員等である。
- 日本からの移民受け入れ等の歴史がないため、日系人を対象とする日本語教育(継承語教育)機関はないが、在留邦人の子どもに対し、エクアドルの二大都市であるキト市、グアヤキル市の日本人学校補習校において毎週土曜日に日本語の授業が日本人のボランティア、父兄によって実施されている。
最新動向
2017年10月現在、高等教育の機関数は5機関で、教師数は5名、学習者数は82名。語学学校(その他教育機関)における教師数は5名学習者数は50名。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていない。
高等教育
2017年現在、キト・カトリカ大学で開講されているのは初級コースと中級コース。ひとつのレベルの授業時間数は80時間。毎日(月曜から金曜まで)授業が行われる。毎日1時間のレギュラー・コースと毎日2時間の集中コースがある。集中コースの場合、2ヶ月で一つのレベルが修了するのに対し、レギュラー・コースは4ヶ月かかる。ただし、開講されるコースは受講者数と受講者のレベルによって毎回異なる。2017年現在、開講されているのは、レベル1から2までで学習者総数は22名。同大学では、関西外国語大学と交換留学協定を締結しており、1対1の交換留学制度が成り立っている。ほぼ毎年キト・カトリカ大学の学生1名(場合により2名)が日本に留学し、関西外国語大学の学生1名(場合により2名)を受け入れている。また、少しでも多くのエクアドル人に日本を知ってもらうため、カトリカ大学日本語科が年に数回、日本文化イベントを実施している。
サンフランシスコ・デ・キト大学では初級コースを開講している。2011年8~12月の学期は、最低受講者数(8名)が確保できず休講となったが、次学期より後期(1~6月)のみ開講されている。レベルは1・2があり、学期毎にレベル分けをし、学期毎の総授業時間数は45時間(週3時間)、レベル4まで修了するのに2年かかる。2011年1~5月の学期ではレベル1のクラスで15名が受講した。中級レベル以上は毎年平均して5~6名の受講希望があるものの講師は1名しかおらず、またクラス開講のための生徒の最低8名の要件をクリアできないため、継続して開講することができていない。
エスピリトゥ・サント大学では、レベル1からレベル8までのコースを設けている。ただし、開講しているコースは受講者のレベルによって毎回異なるが、2017年現在はレベル1と3が開講されている。2017年現在の学習者総数は17名。90分の授業が週4回行われ、8週間前後でひとつのレベルが修了する。なお、同大学は関西外国語大学と交換留学協定を締結している。この交換留学制度により、毎年、エスピリトゥ・サント大学の学生1名が日本に留学し(枠は2名)、関西外国語大学の学生1名を受け入れている。
クエンカ大学は、A1とA2のコースが設けられており、2017現在の学生総数は14人。1コマ2時間の授業が週10時間行われており、合計60時間でコースが修了する構成となっている。
アンバト技術大学においては、2015年10月より、大学に籍を置く学生を対象としたレギューラー・コースと並行して、学外からも受講生を募集するオープン・コースのプログラムも始動した。それにより、日本語学習者は高校生から一般社会人まで、年齢や経歴などを含めた様々な背景を持った学生が受講している。2017年現在、16名の学習者が、それぞれA1・A2・B1のレベルに分かれて学習しており、授業は1コマ2時間を週8時間行い、総授業時間は春セメスターと秋セメスターによって多少変わるが、概ね160時間前後となっている。また、レギュラー・コースを受講している同大学の学生は、外国語の単位をA1・A2・B1・B1+の4レベルすべて取得することが卒業条件となっており、一度履修した言語はB1+まで継続しなければならない。1セメスターで1レベルを修了するため、日本語学習を始めた学生は最短2年分の履修が必要であり、ある程度の長期的な学習計画が可能である。また各セメスターに一度、文化交流イベントを企画し学内外へ向けた情報発信にも取り組んでいる。
その他教育機関
2009年6月、元JOCVの日本語教師によって国内で初めての日本語学校「FUJINO」が開校された。初級から上級までの授業があり、現在開講されているクラスは初級、中級と上級。グループレッスンと個人レッスンがあり、グループレッスンは月~木、毎日1時間もしくは2時間のコースか金曜日もしくは土曜日に1日2時間のコースがある。オンラインの授業は月曜日から木曜日に1日1時間のレッスンを実施している。学習者数は50名。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
10-3制。
旧制度の就学前教育機関kinder1年間(5歳)と初等教育機関Escuela Primaria 6年間(6~12歳)と前期中等教育機関Ciclo Basico 3年間(13~15歳)を合わせたEscuela Basica(エスクエラ・バシカ)の10年間が義務教育期間。後期中等教育機関Ciclo Diversificadoが3年間(16~18歳)で専門学校のInstitutoも中等教育に含まれる。高等教育機関は大学、ポリテクニカの2種類。
教育行政
初等、中等、高等教育機関のほとんどが文部省の管轄下にある。
言語事情
公用語はスペイン語である。
外国語教育
小学校1年生(エスクエラ・バシカ1年生)から第一外国語(必修)として英語が教えられている。 英語以外の外国語については各教育機関によって必修・選択の言語が異なる。
バイリンガル幼稚園がいくつか存在し、私立の学校では、英語の早期教育を行っている。またキト市には、ほかにも英国、米国、ドイツ、フランス、オーストラリア、カナダ、イタリア等の国際校があり、それぞれの母国語、英語の教育を行っている。
外国語の中での日本語の人気
日本のテレビアニメが人気であり、アニメから日本語に関心を持つ子供、若者が多く、日本語学習に関心を持つ者は増えつつある。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていない。
高等教育
- キト・カトリカ大学
レベル1-5→オリジナル教科書『もしも日本語が話せたら』 副教材→『日本語かな入門スペイン語版』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)、『BASIC KANJI BOOK VOL1、2』加納千恵子ほか(凡人社) - サンフランシスコ・デ・キト大学
『新日本語の基礎ⅠⅡ』海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)、『Japanese for Today』吉田弥寿夫(学研)、『標準日本語読本』長沼直兄(長風社) - エスピリトゥ・サント大学
『初級日本語げんき1、2』坂野永理(ジャパンタイムズ) - クエンカ大学
『まるごと 日本のことばと文化(A1,A2)かつどう・りかい』独立行政法人国際交流基金 (三修社) - アンバト技術大学
『初級日本語げんき1、2』坂野永理(ジャパンタイムズ)
『まるごと 日本のことばと文化(A1入門・初級A2、初級A2/B1初中級)かつどう』独立行政法人国際交流基金 (三修社)
『Los Silabarios japoneses Kana Guía Fácil y Divertida para Aprender a Leer y Escribir en Japonés』フェルナンデス・モニカ www.monigo.com - ヤチャイ大学 『まるごと 日本のことばと文化(A1)かつどう・りかい』独立行政法人国際交流基金 (三修社)
その他教育機関
『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)、『BASIC KANJI BOOK VOL1、2』加納千恵子ほか(凡人社)
マルチメディア・コンピューター
大使館が貸し出している日本紹介DVD(ジャパン・ビデオ・トピックス)を授業に用いている機関がある。
教師
資格要件
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていない。
高等教育
キト・カトリカ大学で日本語教師に求められる条件は、修士課程修了(もしくは修了見込みまたは同等の資格があること)、日本語教員養成課程を修了していること、年齢50歳以下、スペイン語で日常生活、仕事をするのに支障のないことであるが、実際は全条件を満たす教師を確保する事が困難である。
サンフランシスコ・デ・キト大学では特に資格要件はないが、過去に文部省留学生として日本で勉強した日本語が堪能なフランス人の大学教授が教師を務めている。
アンバト技術大学では日本語教育または言語学における修士課程以上を卒業していること、日本語教員養成課程を修了していることが求められるが、実際は全条件を満たす教師を確保する事が困難なため、臨機応変に契約している。
その他教育機関
JOCVの元日本語教師が日本語学校を開校し、教師を務めている。そのほかに適切な教育を受けたエクアドル人も教師を務めており、2011年9月から国際交流基金の海外日本語教師長期研修に参加した。
日本語教師養成機関(プログラム)
キト・カトリカ大学、サンフランシスコ・デ・キト大学、エスピリトゥ・サント大学の日本語講座が現地日本語教師を養成する主なプログラムとなっている。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
キト・カトリカ大学では2017年現在、同大学との直接契約により日本人1名が教師を務めている。
アンバト技術大学では2013年まで、同大学との直接契約により日本人1名が教師を務めていた。その後2015年より日本語コースが再び開講され、2017年現在日本人教師が1名勤務している。
エスピリトゥ・サント大学でも2017年現在、関西外国語大学との日本語教員インターンシップ協定により派遣された日本語教師が1名、勤務している。
クエンカ大学では同大学との直接契約により日本人1名が教師を務めている(京都外国語大学との協定。)。
教師研修
大学内の教育者対象の定期セミナーや各種講座、不定期の言語学、外国語教授法等の研修があるが、特に現職の日本語教師対象の研修はない。
現職教師研修プログラム(一覧)
(現職の日本語教師対象の研修はない。)
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
2016年にエクアドルJLPT日本語教師会設立。エクアドル国内外におけるネットワーク構築、セミナーや研修等の企画を行っている。
最新動向
- 日本エクアドル外交関係樹立百周年事業の一つとして、エクアドルJLPT日本語教師会主催 「全国日本語プレゼンテーション大会」が2018年に開催予定。
- 2017年1月、10月に国際交流基金サンパウロ日本文化センター日本語専門家による「教師研修会」が実施された。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
(情報なし)
日本語教育略史
1990年 | サンフランシスコ・デ・キト大学にて日本語教育(公開講座)開始 |
---|---|
1992年 | キト・カトリカ大学に青年海外協力隊の日本語教師派遣開始。2016年現在も直接契約の日本人教師により、日本語講座(公開講座)開講 |
1996年 | グアヤキル・カトリカ大学に青年海外協力隊の日本語教師派遣開始(2016年現在閉講) |
2002年 | グアヤキルのエスピリトゥ・サント大学の言語学部内に日本語コース(公開講座)開講 |
2004年 | マナビ・カトリカ大学にて日本語コース(第二外国語)新設(現在閉講) |
2005年 | パシフィック大学にて日本語講座(現在休講) |
2009年 | 国内初の日本語学校FUJINO開講 |
2011年 | アンバト技術大学外国語学部(現外国語センター)にて日本語コース新設 |
2013年 | アンバト技術大学外国語学部(現外国語センター)にて日本語コース閉講 |
2014年 | 日本語学校FUJINO オンラインでの日本語講座を新設 |
2014年 | クエンカ大学 日本語コース新設 |
2015年 | アンバト技術大学(現外国語センター)にて日本語コース再開講 |
2016年 | エクアドルJLPT日本語教師会設立 |
2016年 | ヤチャイ大学 日本語コース新設 |