グアテマラ(2017年度)
日本語教育 国・地域別情報
2015年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数 |
---|---|---|
4 | 8 | 271 |
教育段階 | 学習者数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 32 | 11.8% |
中等教育 | 0 | 0.0% |
高等教育 | 157 | 57.9% |
その他 教育機関 | 82 | 30.3% |
合計 | 271 | 100.0% |
(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
グアテマラでの日本語教育は、首都の国立サン・カルロス大学言語センター(CALUSAC)において、1992年に青年海外協力隊によって始められ、2017年の学期終了をもって、開始から25年を経ていることになる。
同センター自体は、1976年に設立され、現在、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ヘブライ語、中国語、日本語、韓国語、ロシア語、ポルトガル語、スペイン語(外国人向け)、ラテン語、国内の先住民言語(3言語)の計15言語が開講されている。
また、一般市民にも広く開放されており、国の言語センターとしての役割を果している。国立サン・カルロス大学は学生数が全体で2.5万人を超える総合大学であり、言語センター(CALUSAC)も非常勤を含めた教師約250名及び約1.5万人の学生を抱える大規模な言語機関となっている。同センターでは、他国からの援助によるボランティアとして、2017年10月現在、韓国語教師6名、ドイツ語教師12名、中国語教師3名、フランス語教師13名が教壇に立っている。
日本語については、1992年の開講当初は青年海外協力隊の日本語教師1人体制であったが、学習者の増加に伴い協力隊員が1名増加され、2人体制へと移行。その後、CALUSAC日本語クラスの開講当初に学生だったグアテマラ人が、2001年に日本での研修を終え、日本語教師として教壇に立つようになった。グアテマラ人教師が独り立ちできるようになったため、2005年に青年海外協力隊1名、グアテマラ人教師1名の2人体制となり、2010年には青年海外協力隊(もしくはシニアボランティア)1名に、日本語のネイティブ教師1名、元受講生のグアテマラ人教師3名が加わり、5人体制となった。
2010年1月には、私立グアテマラ・デル・バジェ大学で前述のCALUSACで勤務する日本語のネイティブ教師1名による日本語教室が開設された。また、私立ガリレオ大学においても2010年9月から同人による日本語教室が開設されたが、2011年2月には閉講となった。CALUSACにおいては2011年10月まで日本語のネイティブ教師1名が授業を行っていたが、2012年5月をもって、日本語教師を職種とする青年海外協力隊員の派遣が終了したため、以後、現在に至るまで、元受講生のグアテマラ人教師3名体制となっている。2017年7月から9月の受講者数は133名。
他方、2010年9月、CALUSACで教壇に立つ現地人教師3名は、新たな私設日本語学校を開校し、2016年10月現在、受講者33名に対して授業を行っている。さらに、2013年4月には、元国費留学生(言語学専門)が私設語学学校を開校し、日本語コースが開設され、同元国費留学生1名が、13名の受講者に対して日本語を教えている。私立グアテマラ・デル・バジェ大学においては、日本語のネイティブ教師1名が日本語教室を担当しているが、2016年1学期目(1~6月)の教室は受講希望者数が少なかったため開講されなかった。 その日本語ネイティブ教師も新たな私設日本語学校を2016年7月に開校し、現在35名の受講者に対して教えている。
2016年から新規に私立ランディバル大学においても元国費留学生による日本文化教室が開講され、22名の受講者に対して教えている。
背景
日本企業の支社などは少なく、在留邦人は403人(2017年10月18日現在)という少なさもあり、街角で日本語を耳にすることはない。しかし、日本車や、日本の電化製品はあふれており、テレビコマーシャル、看板などで、日本の国名を見ることは多い。また、空手等の武道が盛んで認知度が高く、首都においては、折り紙、剣道、合気道、生け花などのグアテマラ人による協会があり、日本の文化に興味を持つ人は少なくない。
また、テレビを通じて日本のアニメが毎日放映されていることや、マンガやコスプレへの興味から日本語の学習動機につながることが多い。
特徴
国立サン・カルロス大学言語センター(CALUSAC)で行われている日本語クラスは、単位取得の対象外で、必修でも選択でもない。大学生を中心に年齢層は14歳(中学生)から33歳までと若者が多く、一般講座的な性格を持っている。コースは2か月で完結し、教科書として使われている『みんなの日本語』(スリーエーネットワーク)は1回のコースで3課ずつ消化される。また、学習者が最低10名集まらないとクラスが開講されないため、中級や上級レベルの学習者は次のレベルの授業をあまり取れないことが問題となってきている。2017年10月現在、初級の学習者数約120名、中級の学習者数は13名、上級の学習者数は0名である。
私設語学学校においても、日本語コースの履修証明などは発行されておらず、趣味目的の日本語教育にとどまっているようである。
2010年1月に開設された私立グアテマラ・デル・バジェ大学の日本語教室は、同校及び付属学校グアテマラン・アメリカン・スクールの学習者及び職員のみ参加可能であるため、参加者数が限られており、学習者数不足により開講されない学期もある。
グアテマラでは日本のアニメ・マンガがテレビで放映されているため、それに興味をもつ学生や、JICAや文部科学省の研修・留学プログラムなどで、日本への留学を目指す者、日本企業との関わりがある社会人、また、国立サン・カルロス大学で行われる弁論大会で優勝し、国際交流基金主催の成績優秀者研修で訪日することを目指す者などが多い。
最新動向
当国ではコールセンターの設置が急激に増加しており、日本語能力の高い職員の雇用拡大に繋がるとの見方もあったが、実際にそのような傾向は確認されていない。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていない。
高等教育
2010年1月に私立グアテマラ・デル・バジェ大学の選択外国語科目として日本語教室が開設された。
その他教育機関
国立サン・カルロス大学言語センター(CALUSAC)で行われている日本語クラスの学習者については、平日のクラスは学生が多いが、週末のクラスには社会人も含まれる。
学習者の中には、文部科学省による国費研究留学生プログラムや学部と専修学校プログラムに応募して留学する者がいる。また国際交流基金の成績優秀者研修プログラムに毎年弁論大会の優秀者が1名参加している。そのほか、エイ・エフ・エス(AFS)グアテマラ協会の交換留学プログラム等を通じて留学する者も数人いる。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
6-3-2制。
小学校が6年間、中学校が3年間、高等学校は2種類あり、通常2年、一部の専門高等学校の場合3年間。
教育行政
初等、中等、高等教育機関のほとんどが教育省の管轄下にある。
言語事情
公用語はスペイン語であるが、1996年の最終和平協定署名により、先住民言語の使用も認められている。
外国語教育
中学、高校において英語が必修。私立の学校では幼稚部から英語教育が取り入れられているバイリンガル学校も少なくない。更に、3カ国語教育を取り入れている学校としてはドイツ語やフランス語を第3カ国語として小学部からカリュキュラムに取り入れる私立の学校もある。選択外国語として教えられている非ヨーロッパ語として中国語(北京語)があげられるが、日本語を教える学校はまだない。
外国語の中での日本語の人気
英語やフランス語、ドイツ語といった欧米の言語に比べると人気は低い。他のアジア言語の中では日本語の人気は高いものの、主にビジネス用途のために中国語や韓国語の人気も高まっている。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていない。
高等教育
- 主教材:
- 『みんなの日本語』(スリーエーネットワーク)
- 副教材:
- 『みんなの日本語 初級Ⅰ翻訳・文法解説スペイン語版』(スリーエーネットワーク)
その他教育機関
- 主教材:
- 『みんなの日本語』(スリーエーネットワーク)
- 『ジェイ・ブリッジ』小山悟(凡人社)
- 『初級日本語 げんき』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)
- 副教材:
- 『クラス活動集 101』高橋美和子ほか(スリーエーネットワーク)
- 『日本語コミュニケーションゲーム80』CAGの会(ジャパンタイムズ)
- 『新日本語の基礎 漢字練習帳Ⅰ・Ⅱスペイン語版』(スリーエーネットワーク)
- 『漢字マスター』アークアカデミー(凡人社)
- 『下村式小学漢字学習辞典』下村昇(偕成社)
- ビデオ教材:
- 『JAPAN VIDEO TOPICS』外務省
- 『みんなの日本語 会話ビデオ』(スリーエーネットワーク)
- 『日本語見る・聞く・話す』(NHK放送研修センター)
- 『まるごと』(メキシコ国際交流基金)
教師
資格要件
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
日本語教育は実施されていない。
高等教育
特に基準はないが、これまでは学士号取得者で、日本語教授法を学んだ日本人教師が配属されてきた。グアテマラ人の場合は特に資格要件はない。
その他教育機関
特に基準はないが、これまでは学士号取得者で、日本語教授法を学んだ日本人教師が配属されてきた。グアテマラ人の場合は特に資格要件はない。
日本語教師養成機関(プログラム)
日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
私立グアテマラ・デル・バジェ大学で教える邦人永住者1名のみである。
教師研修
国内研修としては、特に日本語教師対象の研修はない。
訪日研修としては、国際交流基金の日本語教師研修がある。
現職教師研修プログラム(一覧)
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
日本語教育関係のネットワークはない。
最新動向
特になし。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
(情報なし)
日本語教育略史
1976年 | サン・カルロス大学言語センター設立 |
---|---|
1992年 | 国立サン・カルロス大学言語センター(CALUSAC)にて青年海外協力隊による日本語教育開始 |
2007年 | グアテマラ市内の私設語学学校に日本語コースが開設 |
2010年 |
私立グアテマラ・デル・バジェ大学の選択外国語科目として日本語教室が開設 グアテマラ市内の私設語学学校(上記とは異なる)に日本語コースが開校 私立ガリレオ大学に日本語教室が開設(2010年9月~2011年2月のみ、その後閉講中) |
2013年 | 新たな私設語学学校が開校され、日本語コースが開設 |