プエルトリコ(2017年度)

日本語教育 国・地域別情報

2015年度日本語教育機関調査結果

 なし

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1970年代から1980年代にかけての日本企業進出の影響により、日本語補習校が設立。生徒は駐在員子女を中心に20名前後、日本からの派遣教師1名。地元との文化交流もあり、生け花や折り紙の展示会等も行われていたが、1990年頃から日系企業が縮小され、2001年に閉校となった。プエルトリコにおいては、初中等レベルで日本語教育を行っている教育機関(幼稚園~高校)はないが、高等教育レベルでは1988年にプエルトリコ国立大学人文学部に日本語講座(選択科目)が新設されて以来、長きに亘って日本語教育(選択科目または公開講座)が盛んに行われている。1998年および2004年には、プエルトリコ大学マヤグエス校において一時的に日本語講座(選択科目)が開設され、2009年にはポンティフィシカルカトリック大学およびインターアメリカン大学(私立)においても日本語講座(選択科目)が新設された。2013年から開始したサクラダコラソン大学の日本語講座(選択科目)はこの度 担当教師の日本帰国をもって閉鎖となったが、その一方で、プエルトリコ大学アグアディア校においては今年から新たに日本語講座(公開講座)が開始された。
 2017年12月現在、プエルトリコにおける日本語教育機関数は3校(すべて大学)、教師数は2名、学習者数は125名。

背景

 1898年、米西戦争の講和条約でアメリカ合衆国自治領となる。政治的・経済的・文化的にアメリカとの関連が強く、また日本の工業製品も豊富であり、日本に対する尊敬・関心も非常に高い。合気道、空手、武道が活発で、特に大学では柔道を30年以上教えている日本人教授もいる。また、盆栽、日本のポップカルチャーやアニメも流行している。このような背景のもと、地域の人達の日本への興味は年々増加しているが、その一方で政府の関心はそれほど高くない。国としてはスペイン語(第一言語)と英語の2か国語を同時併用することになっている為、初中等教育レベルにおいては英語が必修科目として非常に重要視されているが、それ以外の外国語教育は盛んではなく、私立校でラテン系言語を取り入れている学校も存在する、という程度に留まっている。また日本人が国全体で約30名と少数であるため、日本語教育の必要性、活用機会に限界があることも、政府において日本語が重要視されない理由のひとつとなっている。日本語教育はアメリカ合衆国に比べると遅れているが、大学では日本留学・就職を目標とする学習者が年々緩やかに増加している。

特徴

 スペイン語と英語の併用国であるため、英語は初等教育レベルから必修科目となっているが、日本語講座を初中等レベルで実施している機関はない。中等教育レベルではフランス語、イタリア語を教える私立校もある。プエルトリコ大学人文学部言語学科ではスペイン語、英語が専攻科目、フランス語、イタリア語、ポルトガル語は副専攻科目、ドイツ語、ロシア語、アラブ語、日本語、中国語が選択科目として開講されている。日本語の学習動機は、日本文化への関心、若年層のアニメへの関心などが挙げられ、技術・経済の発展した国として尊敬され、良好なイメージを持っている。国内には日系人が少なく、日本語学習の実利性が低いため、初中等レベルにおける日本語教育の拡大は非常に難しいが、高等教育レベルにおいては、日本への留学や就職などを目標に日本語を学習する者が多い。2017年現在、日本語教師はプエルトリコ全体で2名しかおらず、各々がカリキュラムを組み、教材を選択しており、共通のシラバス・ガイドラインはない。また、日本語能力試験は実施しておらず、受験する場合は個人的にアメリカ合衆国の受験地に参加するようになっている。

最新動向

 上述の通り、初中等教育レベルでの日本語教育は実施されていないが、若年層における日本への関心は高く、高等教育レベルの日本語学習者数は緩やかに増加傾向にある(2017年現在125名)。主な日本語講座の最新動向(開設・休止・廃止の状況)としては以下のとおり。

  • プエルトリコ大学アグアディア校で日本語の公開講座オープン。
  • プエルトリコ大学リオピエドラス校では、選択科目としての日本語講座は一時休止中、公開講座のみ開講中。
  • ポンティフィシカルカトリック大学では2013年に担当教授の都合がつかずに一旦閉鎖されたが、2016年8月から再開。
  • サクラダコラソン大学の日本語講座(選択科目)は教師の日本帰国により閉鎖。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育は実施されていない

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 プエルトリコ大学リオピエドラス校人文学部では、1988年以降、長年に亘って選択科目として日本語講座を実施してきたが、今年度は一時的に休止となっており、公開講座のみを実施中。言語学科ではスペイン語、英語が専攻科目、ポルトガル語、フランス語、イタリア語が副専攻科目であり、ドイツ語、ロシア語、アラブ語、中国語は選択科目として扱われている。日本語の公開講座においては他校の大学生・一般人対象に年々受講者が増加している。
 プエルトリコ大学マヤグエス校では1994年、2004年に一時的に選択科目として日本語講座が開講されたが、2017年現在は閉講中。
 ポンティフィシカルカトリック大学とポンセ市のインターアメリカン大学(私立)では、2009年に日本語講座を選択科目として開設し、日本の大学を卒業した地元出身者が日本語教授として招かれた。私立サクラダコラソン大学においては、2013年に初級レベルの日本語講座(選択科目および公開講座)が開設されたが、2017年、担当講師の日本帰国をもって閉鎖となった。一方、プエルトリコ大学のアグアディア校においては2017年から新たに日本語の公開講座が実施されている。

 この国には日系人が少ないことから、日本語が多少できても就職には繋がりにくく、大学で日本語を学ぶ学生の多くはJETプログラムや短期留学、あるいは文部科学省奨学金留学生の選考試験に合格すること等を目標にしている。なお、この試験はアメリカ合衆国(ニューヨーク)で受験しなければならないが、2009年と2011年7月に、2名の学生が文部科学省国費生として合格し、多くの学生に良い影響を与えた。その他、2011年6月に学生達と日本人会との共催で第1回日本祭り(東日本大震災への義援金集めが目的)を行い、大好評を博した。このイベントはその後毎年行われている。

その他教育機関

 1970年代から1980年代にかけては、日本企業の進出により、日本語補習校が開校され、小規模ながら地元コミュニティーに文化を紹介するイベント(折り紙・生け花教室)も時々開催していたが、一般人に対する日本語教育は実施されておらず、2001年に閉校となった。私立語学学校においては、ベルリッツとパンアメリカンで時々日本人による日本語講座が開講されていたが、2017年現在は閉講となっている。その他、日本人による個人教室も少人数で行われているが、学習者は大学生が多く、社会人は少ない。

教育制度と外国語教育

教育制度

 初等教育6年制(6~11歳)
 中等教育 前期3年、後期3年、計6年(12~17歳)
 高等教育4年
 初等教育、中等教育前期は義務教育になっている。
 教育行政 教育省  言語事情 主要言語はスペイン語。公用語はスペイン語および英語。

外国語教育

 私立校の初中等教育においては一律の規定はなく、各学校で第2外国語科目(フランス語、イタリア語)を選択科目として開講している。公立学校では第2外国語の教育は実施されていない。高等教育機関における外国語教育は以下のとおり。

  • プエルトリコ大学言語学部専門学科:フランス語イタリア語、選択科目ポルトガル語、ドイツ語、ロシア語、アラブ語、中国語,日本語(公開講座)。
  • ポンティフィシカルカトリック大学英語学部専門学科:フランス語、ポルトガル語、イタリア語、日本語(選択科目)。

外国語の中での日本語の人気

 スペイン語と英語の併用国ということもあって一般にラテン系言語に親しみがあるが、ポップカルチャーに人気がある若年層ではラテン系言語と同様に人気がある。全体的にはフランス語、イタリア語、日本語、中国語、ポルトガル語、ドイツ語、ロシア語、アラブ語という順番で人気がある。

大学試験での日本語の扱い

 日本語は扱われていない

学習環境

教材

 【初等教育】日本語教育は実施されていない。
 【中等教育】日本語教育は実施されていない。
 【高等教育】Japanese for busy people 1,2 、国際日本語普及教会(講談社USA)、
  げんき Elementary Japanese (Japan Times)、Japanese step by step (GENE NISHI ,
   McGrau-Hill books
)、First published in Japan by 主婦の友
 【学校教育以外】日本語教育は実施されていない。

マルチメディア・コンピューター

 大学の日本語講座において、インターネットやYouTube等からの日本の情報収集や、学生プロジェクトでのパワーポイントの使用等、頻繁にテクノロジーを活用している。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育は実施されていない。

中等教育

 日本語教育は実施されていない。

高等教育

 公立大学では大学院卒が望まれる。ただし私立大学においては、大学卒で日本語教師としての経験・知識があれば採用の可能性有り。

その他教育機関

 現在のところ、日本語教育を実施している機関はないが、日本人であれば面接次第で採用の可能性有り。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 現在、日本語ネイティブで正規雇用の教師は1名(非常勤ポスト)。ポンティフィカルカトリック大学の初級コース(選択科目)およびプエルトリコ大学リオピエドラス校の初級コース(公開講座)を担当しており、ネイティブ教師としての役割は、語学だけでなく、日本文化(伝統文化や生活等)も含めたクラスでの指導、日本祭の実施、大学内のオープンハウス、日本留学やJET Program の支援・協力など。両大学とも正規に開講している講座は初級レベルのみであるが、中・上級の学生達には小人数のグループで個人的に教えており、過去には文部科学省奨学資金に2人合格し、日本の大学へ留学中の学生もいる。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 日本語教育関係のネットワークはないが、各教師がアメリカの日本語教育会に参加するように努めている。

最新動向

 特になし。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 以前は、プエルトリコ大学にALLEXAlliance for Language Learning and Educational Exchange)が派遣されたが、2017年現在はない。

シラバス・ガイドライン

 統一したシラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

評価・試験の種類

 共通の評価基準や試験はない。

日本語教育略史

1980年 日本人会に日本語補習校が設立される
1980年~1985年 プエルトリコ大学リオピエドラス校で日本語公開講座開設
1988年 プエルトリコ大学リオピエドラス校人文学部に選択科目として日本語講座開設
1990年 私立語学学校ベルリッツが日本語講座開設(2017年現在は閉講)
2001年 日本語補習校閉校
2005年 私立語学学校パンアメリカンが日本語講座開設
(学生数が集まった時のみ開講しており、2017年現在は閉講中)
2009年 ポンティフィシカルカトリック大学、インターアメリカン大学(私立)に選択科目として日本語講座開設
2013年 ポンティフィシカルカトリック大学、インターアメリカン大学の日本語講座 一時休止
私立サクラダコラソン大学で日本語講座(選択科目および公開講座)開設
2016年 ポンティフィシカルカトリック大学の日本語講座再開
私立サクラダコラソン大学の初級・中級I講座開設
日本文化祭開催(10月)
2017年 プエルトリコ大学リオピエドラス校の日本語講座(選択科目)は一時休止、公開講座の日本語コースのみ継続実施中
プエルトリコ大学アグアディア校で日本語講座(公開講座)開設
私立サクラダコラソン大学の日本語講座が教師の帰国により閉鎖

参考文献一覧

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