日本語専門家 派遣先情報・レポート
メキシコ日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
国際交流基金メキシコ日本文化センター
The Japan Foundation, Mexico
派遣先機関の位置付け及び業務内容
メキシコ及び中米カリブ諸国において、カリキュラム・教材・教授法等に関する助言・支援活動、現場のニーズに応じた教師研修を行っている。教師間ネットワーク形成の促進を行い、各地での自主研修も奨励している。またメキシコ日本語教師会、中米カリブ日本語教育ネットワーク、各地の教師会等との共催による教師研修、学習者奨励事業も行っている。E-learningプラットフォーム「JFにほんごeラーニングみなと」内の『まるごと教師サポート付きコース(スペイン語)』も実施。日本語教育関係者を対象にSNSを活用して情報発信も行っている。
所在地
Ejército Nacional #418 Int. 207 Colonia Polanco V sección C.P. 11560, CDMX, México
国際交流基金からの派遣者数
日本語上級専門家1名、日本語専門家1名
国際交流基金からの派遣開始年
1998年

コロナ禍を超えて~日本語教育支援の新たな形を探る

国際交流基金メキシコ日本文化センター
佐藤五郎、佐藤志穂

新型コロナウィルスのパンデミック以降、機関訪問や対面型教師研修が実施できない状況が1年以上続きましたが、メキシコ国内および中米カリブ諸国の感染状況が改善されるに従い、少しずつそれらを再開できるようになりました。ただ一方で、コロナ禍を乗り越えつつある今、以前と全く同じ状況には戻れなくなっているのも事実です。今回は日本語教育支援の新しい形を探る取り組みをご紹介します。

1.メキシコ国内の教師研修

2021年4月以降、国際交流基金メキシコ日本文化センターは、特定地域を対象とした教師研修を2回実施しましたが、いずれも対面参加とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド形式で行いました。オンライン参加も認めたのは、研修会場から離れた所に住む先生や、公共交通機関での移動や人との集まりにまだ不安を感じる先生も参加しやすくするためです。とはいえ、研修会場と同じ街に住む先生方は全員が対面参加を希望するだろう、「やっぱり会場で直接研修に参加した方が楽しいしわかりやすい」と思っている人が多いだろうと予想していました。しかし、ふたを開けてみれば対面参加希望者は思ったほど多くなく、「研修は会場で参加するもの」という考え方がガラリと変わったことを実感しました。メキシコ国内の多くの教育機関では既に2年近くオンライン授業が行われているため、自宅に居ながらにして授業を行うことが常態化しています。そのような新たな生活様式においては、研修会場までの移動時間や交通費が節約できるうえ自宅で気軽に参加できるオンライン研修のニーズの方が高まっているのかもしれません。ただ、その気軽さゆえか、参加率がさほど高くないのが悩みの種ではあります。研修を実施する側としては、同じ空間を共有しているからこそ生まれるダイナミクスに研修の醍醐味を感じます。そのような醍醐味を参加者の皆さんにも味わってもらうには、これまで以上に研修の内容や構成に工夫を凝らすことが必要です。そのためにも、「対面だからこそできることは何か?」をこれからも追及していきたいと思います。

教師研修を行っている教室の写真
メキシコ中部グアダラハラ市内での教師研修の様子

2. コスタリカでの勉強会

運動会に弁論大会、日本語能力試験(JLPT)…これまでコスタリカの先生方は教師会を基盤に力を合わせ、学習者がより楽しく・よりよく日本語が学べるようサポートを続けてこられました。しかしコロナ禍における日本語講座の閉鎖等から、そのような堅固なチームワークも影響を受けることとなりました。環境の変化に適応すべく先生方がそれぞれの道を模索する中で、互いに共通する空き時間を見つけるのが難しくなり、これまで月に1回集まっていた教師会も約1年間、活動が休止されていたとのことです。

そこで感染状況が落ち着き始めた2021年9月、先生方の中から活動再開に向けて動き出そうという声が上がりました。その声を原動力に準備を始めて2022年2月、コスタリカでもハイブリッド形式で教師対象の勉強会を実施することができました。

勉強会を行っている教室の写真
コスタリカ勉強会

勉強会当日は、1時間以上バスに揺られて会場に来られた先生もいらっしゃいました。「ひさしぶり!」「はじめまして。」そんな声が飛び交うのは懐かしい光景です。以前と異なるのは、そこにオンライン参加の方の声が加わることです。会場は懐かしさと新鮮さが同時に存在する、なんだか不思議な空間になりました。勉強会でのグループワーク中の議論、会の前や休憩時間のちょっとしたおしゃべり、会が終わってもなお尽きないお話タイム…握手やハグこそできませんが、顔を合わせて話すのはやはりかけがえのない時間です。みなさんが朗らかに交流されている様子から、コスタリカの先生方がこれまで築いてこられた信頼関係が存在することを確信しました。興味深かったのは、その場は共有していないはずのオンライン参加の方からも、アットホームな雰囲気の中で参加できたのが楽しかったという感想があったことです。「集まろうと思えばまた集まれる」そんな安心感と、ひとつの会を実現した自信が、教師会の活動再始動のきっかけとなることを願います。

この勉強会を経て、オンラインか対面かという二者択一ではなく、これからの世界で実現したいことに応じてオンラインを援用するという考え方がぴったりくるように思いました。今回は教師会の活動再開という目的のもとオンラインで準備を行い、ハイブリッド形式で会を実施しました。事前にウェブ会議で準備を進めることで、勉強会当日はより充実した時間となりました。またハイブリッド形式とすることで、対面実施であれば足を運べなかった方にも、参加していただくことができました。対面形式もオンライン形式も経験した今だからこそ、私たちはより多くの選択肢を持っていると前向きに考えることができるのではないでしょうか。今後は実施形態にとらわれすぎず、まずは企画の目的を見極める、それからその目的に応じた実施形態を検討することができればと考えています。

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