日本語専門家 派遣先情報・レポート
ケニヤッタ大学

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ケニヤッタ大学
Kenyatta University
派遣先機関の位置付け及び業務内容
専門家は多岐にわたる業務を行う。国立ケニヤッタ大学では2004年から日本語の授業が開始、現在は、観光学科の学生には必修選択科目である第二外国語の選択肢のうちの一つとなっている。それ以外の学生には、自由選択科目の入門日本語コースと、その上の日本語副専攻コースが開講されている。専門家は同大学における日本語の授業、現地日本語教員に対する助言の他、在ケニア日本国大使館広報文化センターにおいても各種日本語講座を担当する。ケニア日本語教師会を支援し、日本語能力試験、日本語弁論大会、日本語教育会議の運営に携わり、ケニア及びサブサハラ・アフリカ全域におけるネットワーク形成促進、各種調査等に従事する。
所在地
P.O.BOX 43844-00100 Nairobi Kenya
国際交流基金からの派遣者数
専門家1名
日本語講座の所属学部、学科名称
ケニヤッタ大学人文社会学部 文学・言語学・外国語学科
日本語講座の概要

「ウィズコロナ」時代のサブサハラ・アフリカの日本語教育

ケニヤッタ大学
阿部康子

今年度、2021年4月からの1年間で、ケニアはおそらく他の多くの国と同じように「ウイズコロナ」のフェーズに入ったと思います。4月に1ヶ月ほどケニアで2度目のロックダウンはあったものの、その後は、ワクチン接種も徐々に始まり、本稿を執筆している時点では多くの教育機関もすっかり元通りになっています。大学などの高等教育機関ではオンラインと対面を並行させながら授業を実施しているところが多いようです。

今回のレポートでは、初めてオンラインで行った第2回アフリカ日本語教育会議と、私の派遣先であるケニヤッタ大学の日本語講座の最近の様子をご報告いたします。

第2回アフリカ日本語教育会議

この第2回アフリカ日本語教育会議は、2020年9月にケニアのナイロビでサブサハラ・アフリカ諸国から日本語教師を招いて開催する予定だった会議です。残念ながら新型コロナウイルス感染症の影響で中止となり、今年度こそ、と思っていたのがやはり結局対面での開催は断念し、オンラインで行うことにしました。私たちの地域でオンライン会議を行うことの一番の懸念はインターネット環境の不安定さです。ケニアを始め、サブサハラ・アフリカ諸国は軒並み通信速度も遅く、接続も不安定です。

よって、各国の日本語教育状況の発表と一般発表は全て事前録画したものを提出していただきました。ただ、メインの招聘講師による講義とそれに伴うワークショップは同期で行いました。2日間に亘って、サブサハラ・アフリカ11カ国から、総勢50名余りの方にご参加いただきました。参加国は、エチオピア、コンゴ民主共和国、ケニア、ザンビア、マダガスカル、南アフリカ、ナイジェリア、ベナン、ガーナ、コートジボワール、セネガル、です。一般発表やオブザーバーには日本からも参加していただきました。2年ぶりということもあって、オンラインながらも久しぶりに対面できた参加者たちは本当に嬉しそうで、やって良かったとしみじみ実感しました。第2回アフリカ日本語教育会議の論集のリンクを貼りますので、ぜひご一読いただければと思います。

https://www.facebook.com/jarutakku/posts/1074898273301321

第2回アフリカ日本語教育会議論集表紙の写真
第2回アフリカ日本語教育会議論集

ケニヤッタ大学の日本語講座

次に、私の派遣先であるケニヤッタ大学の最近の日本語講座の様子をお伝えします。ケニヤッタ大学はケニアの総合国立大学のうちの一つです。ここでは2004年から日本語講座が開講されています。

2020年3月後半にケニアで新型コロナウイルスの感染が報告されて以来、ケニヤッタ大学はしばらくの期間、キャンパスを閉鎖していましたが、2020年後半から全面的に授業を再開しています。この再開後、日本語講座に申し込む学習者が以前よりも大幅に増加したことを感じています。正直言いますと、その理由はよくわからず、おそらく日本語講座の認知度が上がってきたのかと推測しますが、とにかく喜ばしいことであるのは間違いありません。2021年10月から12月の学期には、初心者クラス(1)に120名以上の登録があり、また、2022年1月後半からの学期には200名以上の登録があります。下は授業風景の写真です。この他に、もちろん初心者クラス(2)以上の学生もいます。多くの学生が日本文化や日本語に興味を持ってくれているのです。大学では、キャンパスを閉鎖していた時期の遅れを取り戻すために、カリキュラムが変則的になっており、学部にもよりますが、感染症対策として対面授業とオンライン授業を半々で受けている学生などもいます。オンライン授業はやはり通信環境の問題から、うまく授業に参加できない学生も少なくありません。日本語講座の受講生にもそのような学生は多く、残念ながらなかなか思うように日本語が上達しないという現実があります。

授業中の教室の写真
ケニヤッタ大学での日本語授業風景

ケニヤッタ大学には私の他にケニア人の日本語講師が2名いますが、我々の課題は、思うように授業に出られない学生たち、そして対面授業とオンライン授業半々のシステムにより、我々教師側も十分な教授を与えられないという中で、学生の日本語学習をどのようにサポートし、学習動機を維持させて次のレベルに導くかということです。オンラインでの補講に加えて、当地の主な連絡手段であるWhatsAppでクラスのグループを作り、情報の見落としやコミュニケーションの停滞が発生しないように、また学生同士で教え合うことができるようにするなど、出来るだけこまめなケアをするように心がけています。

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