日本語専門家 派遣先情報・レポート
アルバータ州教育省

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
アルバータ州教育省
Alberta Education
派遣先機関の位置付け及び業務内容
州内の初等中等教育を管轄する政府機関。国際教育サービス課に所属し、交流プログラムや日本語教育への支援(学習指導要領、指導手引書、到達度評価文書等の開発、教材情報の提供、日本文化及び日本語教育振興行事の企画運営)を行う。カナダ全域のアドバイザーを兼任し、国際交流基金トロント日本文化センターとの連携のもとに、全国レベルでの日本語教育振興、教師研修、ネットワーク形成支援等を担当する。
所在地
Main Floor, 10044-108 Street NW, Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
国際交流基金からの派遣者数
日本語上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年
2001年

オンラインから関係構築へ

アルバータ州教育省
吉川 景子

パンデミックの影響で、私が所属するアルバータ州教育省では2020年12月からリモートワークが義務となり、2021年は完全リモート、この原稿を書いている現在も続いています。職場の同僚にさえも対面で会えない状況です。そんな中、オンラインでつながって、関係をどう構築してきたか、お伝えしたいと思います。

オンラインでできること、そして対面へ!

アルバータ州の初等・中等教育機関は2021年9月からのスクールイヤーも前年度と同様、原則対面授業が行われています。しかし、学校関係者以外は訪問することが難しいところが多いです。そこで、普段は定期的にイベントやリソースの情報をメールで発信したり、2ヶ月に1回程度、テーマを変えて、日本事情・文化を紹介するオンラインセッションを提供したりしています(「東京2020オリンピック」「日本の秋」「日本のお正月」「バレンタインデー」など)。日本事情・文化セッションで心がけていることは、一方的な情報提供に終わらないこと、カナダにはいろいろなバックグラウンドをもった生徒たちがいるので、国と国を比べるのではなく、自文化と比べ、振り返る機会を設けること、自分の考えや意見を表すための問いかけを含めることです。生徒の名前も顔も文化的背景もわからない中、1時間程度の単発のセッションで深く掘り下げることは難しいですが、教室にいる先生の助けも借りながら、生徒にはスマホでインタラクティブに参加し、意見を共有してもらっています。

オンライン授業を行う教室の写真
オンラインでの日本文化セッション

そして、オンラインセッションをよく利用してくれる先生の学校を訪問することが許可され、ようやく念願の学校訪問が実現しました!カナダの高校の日本語授業の様子を初めて直接見学することができ、現状を把握するのにとても参考になりました。せっかくなので私からもハンズオンでできる文化体験「紋切りあそび」を提供し、セッションを通して自文化を振り返り、家族とのつながりを表すものについて考えを共有してもらいました。

また、2021年9月から月1回、アルバータ州の高校の先生たちを対象としたカジュアルなオンライン勉強会を始めました。当地には中等教育機関所属の先生たちを対象としたアルバータ日本語教師会もありますが、「コロナ禍で活動を実施するのは先生たちの負担が大きく難しい、でも正式な活動として再開されるのを待っていたら、なかなか始められないだろう」と思い、参加したい人が気軽に参加できるような形で実施することにしました。参加者は少人数ですが、とても熱心です。彼らから勉強会のトピックの希望を聞くことで、何に関心があり、どんなニーズがあるのかを把握したり、授業ではどのようにしているのか情報を得たりできる、いい機会になっています。何より、参加者の先生たちがこの勉強会を楽しみにしてくれていることがうれしいです。

メールでの情報提供から、オンラインでの訪問、そして定期的にオンライン勉強会で会うことで、本当に一歩ずつですが、現地の先生たちと関係が構築できているように思います。

オンライン教師研修でつながる!

国際交流基金トロント日本文化センターと連携し、オンライン日本語教師研修を担当しています。カナダ全土から大学、高校、日本語学校など様々な機関に所属する先生たちが参加されます。オンラインの場合、一度にあまり長い時間をかけた研修は難しく、かといって、何回にもわたる研修だと継続して参加するのが難しくなります。そのため、反転授業のスタイルをとり、基本的な知識の部分は事前課題として動画を見て、意見を考えておいてもらい、研修中はペアやグループワークを多く取り入れるようにしています。そして、必ず体験(学習者としての体験と教師としての視点)あるいは、作成物(事後課題として次の研修日までにグループで作成する)を含めることで、ほかの先生たちと協働する時間を増やし、関係が作りやすくなるように工夫しています。

最近よく話題になるのが、オンラインでだいたいのことができてしまう今、対面でやる授業や研修をどのように捉え直したらいいか、ということです。カナダは広大なので、オンライン研修のほうが効率的ですし、これからも継続していきますが、オンラインと対面の各研修の相乗効果も考えていきたいと思います。

日本語能力試験実施中の試験室の写真
エドモントンで2年ぶりに日本語能力試験実施

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