世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) がんばろう、南インド!

国際交流基金ニューデリー日本文化センター(南インド担当)
小川京子

1. 南インドの拠点の変遷

南インド担当の専門家の派遣は2005年に始まり、バンガロール(バンガロール大学)→ハイデラバード(国立英語外国語大学)→バンガロール(バンガロール日本語教師会)→チェンナイ(ABK-AOTS同窓会タミルナドゥセンター)と拠点を移してきました。私はチェンナイ初代の専門家として、2014年5月に着任、2017年5月に3年の任期を終えました。

今年の4月からは指導助手が増えて、上級専門家と二人体制となり、これまで手が回らなかったこともできるようになるだろうと、今後の展開が楽しみです。

2. 日本語と教授能力の向上を目指すブラッシュアップコース

南インド担当の専門家の派遣目的は南インドにおける日本語教育の質の向上と拡大を図ることです。これまで、インド全土共通の1週間集中日本語教師養成講座、週末2日間のワークショップ、地域担当者が各地の事情に合わせて開講するミニワークショップやブラッシュアップコースなど、さまざまな試みをしてきました。

その中で、チェンナイで独自に実施してきたのは教師志望者と現役教師が日本語を復習しながら教授能力を高めるブラッシュアップコースです。2016年の1月に始まったこのコースでは、初級の日本語を復習しながら、発音、ひらがな、カタカナ、絵カードの使い方、基本練習や応用練習のしかた、会話の教え方、授業準備のしかたやコースデザインの方法など、ゆっくりと時間をかけて学んできました。また、その中で自学のしかたやその効果についても体験的に学んでいきました。

3. 教え始めた参加者たち

コース開始半年後の7月からはほとんどの教師志望者が日本語を教え始めました。

空書を使って書き順とトメ、ハネ、ハライの練習の画像
空書を使って書き順とトメ、ハネ、ハライの練習

大学の60人のクラスで文字を教え始めた先生はブラッシュアップコースで習った通りに教えたら学習者たちがきちんとひらがなが書けるようになったと報告してくれました。

1年後の12月には自分が教えている学校の新人教師を育成する教師養成コースを担当する方達も出てきました。この中には私が着任した3年前はまだ初級の学習者だった方や、まだ日本語の学習を始めていなかった方もいます。

後輩教師育成のための日本語教師養成コースの画像
後輩教師育成のための日本語教師養成コース

同じクラスで学んできた先生方は、より楽しい授業をしようと授業のアイデアや教材を交換し合っています。私たち日本人では気がつかないような、インド人学習者に教える時のポイントも上手に盛り込まれていて、私の方が教えられることもたくさんあります。

4. 南インドネットワーク

着任後、Facebook(以下FB)で「南インド日本語教師ネットワーク」と「JF South India Japanese Learners Network」のグループを立ち上げました。先生方から広い南インドがこのネットワークのおかげで一つにまとまったような気がするというコメントをいただいたこともあります。複数の日本語教育機関で授業支援や、先生方との勉強会や交流会を支援してくださっている日本人ボランティアのメンバーもいます。

このFBを見直すと、この3年間の楽しかった思い出がよみがえってきます。

オフィスを提供してくださったABK-AOTSタミルナドゥセンターのみなさん、いつも親切にしてくださった先生方、学習者から先生になった新人先生。私の目標の一つはインド人の先生が教師養成ができるようになることでしたが、こうして育ってきた先生が次の世代の先生をどんどん養成してくれるのを楽しみにしています。

がんばろう、南インド!

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, New Delhi
派遣先機関の位置付け ニューデリー日本文化センターより南インドのチェンナイに派遣され、インド南部5州と1連邦直轄地域を中心に日本語教育の質の向上と拡大を図る。具体的には、1) 現地人教師・教育機関支援、ネットワーク形成 2) 機関訪問等による情報収集、調査、分析 3) 南アジアの近隣諸国も含めたセミナーや勉強会など、各種支援活動の実施
所在地 5-A, Ring Road, Lajpat Nagar-Ⅳ, New Delhi, 110024, India
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年 2005年
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