世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)スラバヤ国立大学の学生たち

スラバヤ国立大学
本橋啓子

私の業務はスラバヤ国立大学(以下、UNESA)に所属し、UNESAを初めとする東ジャワ州にある日本語教育機関や高校教師会などの日本語教育組織を支援することです。 今回はまず所属機関であるUNESAについて報告します。 みなさんは「インドネシアの学生」というと、どんな学生を想像しますか。一般に東南アジアの学生に対しては、おとなしいとかはずかしがりやなどというイメージを持つ人が多いかと思います。着任前の私もそうでした。ですが、実際にはとても積極的な学生が多いです。今回はそんなUNESAの大学生たちの活動を紹介します。

UNESAの学生会の活動

UNESAでは学科ごとに学生会があります。会長は副会長とペアになって立候補し、学科の学生の投票で選ばれます。日本語学科の学生会の活動で最大のものは学科祭の主催です。例年11月頃行われる学科祭「Japan Pop Culture」(以下、JPC)は学生会最大の行事で、学生会役員はもちろん、一般学生も教室に泊まり込んでまで準備に追われます。このJPCは2日間にわたって開かれ、初日には日本語を学ぶ高校生を対象とした弁論・書道・アフレコなどの各種コンテストが行われます。UNESAの日本語学科講師や日本語専門家(以下、専門家)は事前に学生会から依頼されたコンテストの審査員を務めます。2日目は地域の人たちにも参加してもらう祭りです。日本の歌やよさこいなどがステージ上で次々と披露されていきます。このような学科祭を始めたのはUNESAが最も古いということですが、現在は他の大学の日本語学科でも同様の催しが行われるようになってきました。今後はどのようにUNESA色を出していくかが大きな課題と言えるでしょう。

UNESAの課外活動

現在UNESAには学科学生の課外活動として太鼓・よさこい・会話・書道・料理・桜踊り(浴衣を着て扇子を持って踊る踊り)・マンガのクラブがあります。最も有名なのは太鼓クラブです。設立当初は肝心の太鼓がなく、スラバヤ日本人学校(以下、SJS)に何回も貸してもらいに行っていたそうですが、現在はモスクの太鼓を作る職人に作ってもらった各種の太鼓が計5個にもなり、SJSに貸し出せるまでに増えました。また、太鼓のたたき方も初めこそYou Tubeを見ながら練習したこともあったそうですが、今では先輩から後輩へと直接技が受け継がれています。現在は各種イベントのオープニングセレモニーや地方の演奏会への出演を依頼されるほど、有名なクラブに育っています。他のクラブもJPCのステージで成果を発表したり、出店を出したりして活動しています。

学生が太鼓を敲いている様子の写真
太鼓クラブの勇姿

他校との交流

UNESAは現在は7学部を擁する総合大学ですが、前身は教育大学です。そのため多くの卒業生を教育現場に送り出しています。大学はもちろん、高等学校・中学校・小学校でも日本語を教えている卒業生がいます。そのため年に数回、その教師となった卒業生たちから彼らの児童・生徒たちを対象とした日本文化体験会のリクエストがあります。そのときも学生会やクラブの出番です。学生たちは開会時に太鼓を演奏し、その後よさこいや桜踊りを披露します。生徒たちに実際に経験してもらう活動では書道クラブが活躍します。見本を書いたり生徒たちにきれいに書くためのアドバイスをしたりします。専門家も時間の許す限りこのような活動に参加しますが、学生たちのステージ発表の素晴らしさや児童・生徒たちへの指導の熱心さにはいつも感心させられています。 このようにUNESAの学生会や学生たちは自主的に活発に活動しています。専門家はそんな大学で、学科講師とともに授業を受け持ったり、日本語能力試験(JLPT)や日本政府奨学金の試験のためなどの課外勉強会を担当したりします。また、学生が弁論大会など学外の日本語関係のイベントに参加する際には、その指導もします。学生一人一人が将来の夢に一歩でも近づけるよう、学科講師とともにこれからも支援していきたいと思います。

小学生が書道に挑戦している写真
小学生がUNESAで書道に挑戦

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