世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)ミャンマーで日本語基礎テスト(JFT-Basic)始まる!! 

ヤンゴン外国語大学
雄谷マユミ

皆さん、こんにちは。2019年11月にミャンマーにあるヤンゴン外国語大学に着任となりました雄谷(おおや)です。皆さんはミャンマーと聞いて何を思い浮かべますか?敬虔な仏教徒の国、バガンの遺跡群に浮かぶバルーンなど、豊かな自然と長い歴史を持つミャンマーは日本と良好な関係を持つ国の一つであり、近年は日本語学習者の急増が目立っている国としても注目を浴びています。そんなミャンマーに縁があり日本語専門家として派遣されています。

JFT-Basicセミナー参加者(ヤンゴン)の様子
JFT-Basicセミナー参加者(ヤンゴン)

私の業務の中心は、2019年より新たに始まった「特定技能制度」に伴い、ミャンマーの日本語教育機関・関係者を支援し、国際交流基金日本語基礎テスト(以下、JFT-Basic)の理解を促すためのセミナーを実施したり、新教材『いろどり 生活の日本語』(以下、『いろどり』)の広報活動を行うことです。同時期に派遣された生活日本語コーディネーター2名(ヤンゴン1名、マンダレー1名)と共にこれらの活動を行っています。

ミャンマーでのJFT-Basicの導入にはかなり時間を要していたのですが、2020年1月24日に「3月から開始!」の朗報が飛び込んできました。急遽、説明会のセミナーを企画し、在ミャンマー日本大使館の協力も得てヤンゴンとマンダレーでセミナーを開催することになりました。セミナーでは日本大使館からの制度説明と国際交流基金ヤンゴン日本文化センター(以下、JFヤンゴン)からの受験説明の二本立てにしたこともあってか、ヤンゴンでは300名近くの参加者を迎え、特定技能制度への関心の高さを裏付ける結果となりました。幸い3月の本試験期間中は混乱もなく無事に終えることができました。それでも受験生の指導に当たられた民間日本語教育機関(以下、民間機関)の先生方に様子を聞いてみると、 CBT (コンピュータを使っての試験)に不慣れな受験者も多かったとのことです。

本試験の期間には特定技能の技能試験もCBTで行われました。ミャンマーでは5業種が割り当てられていますが、申し込みが殺到し、いくつかの業種は数分間で定員枠に達してしまい「受験できる人」と「できない人」の明暗がくっきり分かれてしまったようです。これをカバーするためにもJFT-Basicと技能試験が継続的にバランスよく実施されるのが望ましいのですが、残念なことに5月のJFT-Basicは新型コロナウイルスの影響で中止となってしまいました。

ミャンマーでは日本に働きに行きたいと希望し熱心に学ぶ若者が多いため、今後は少しでも利便性が高く、できるだけ多くの希望者が受けられる試験になるよう支援の仕方を考えていかなければと身が引き締まる思いです。

また、JFT-Basicに合わせ、国際交流基金では外国の人が日本で生活や仕事をする際に必要となる、基礎的な日本語のコミュニケーション力を身につけるための教材『いろどり』を2020年3月末に公開しました。これは先に出版されている『まるごと 日本のことばと文化』(以下、『まるごと』)同様、学習目標をCan-doの形で提示したものですが、『まるごと』と大きく異なるのは無料のダウンロード教材であることです。日本の教材が手に入りにくいミャンマーにおいてインターネットさえあればどこからでもアクセスでき、一度ダウンロードすればいつでも使えるという使い勝手の良さが最大の利点です。この教材をより多くの人に知ってもらい、使用してもらえるようセミナーで教材紹介や教え方の指導をしています。教材のミャンマー語訳や副教材の作成にも着手しました。「『いろどり』で勉強して日本へ来ました!」と言ってくれる人が一人でも増える日が楽しみです。

この他にも私たちは民間機関・送り出し機関への訪問を行なっています。これにより、現場のニーズの掘り起こしや課題を共有することができ、ネットワークを構築する貴重な機会が生まれています。ミャンマーでは日本語教育を行っている僧院もあるそうで、2020年度はこういった日本語学校以外の機関や支援が届きにくかった地方の機関も訪問する予定です。支援の裾野を広げつつ、ミャンマー人の先生方にご協力をいただきながら、一歩一歩着実に取り組んでいきたいと思います。

JFT-Basicセミナー参加者(マンダレー)の写真
JFT-Basicセミナー参加者(マンダレー)

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