世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)初代専門家が着任しました!! 

ヤンゴン日本文化センター
小西 広明

みなさま、こんにちは。ミンガラーバー。2019年11月にミャンマーにあるヤンゴン日本文化センター(以下、JFYG)に着任いたしました小西と申します。JFYGは2019年3月に開設したばかりで、私がアドバイザー業務担当の初代派遣専門家となります。

初代と言っていますが、実は私には前任者がいます。国際交流基金では2013年からヤンゴン外国語大学(以下、YUFL)に日本語教育専門家を派遣しており、JFYGが開設される前は、YUFLでの日本語教育を支援するだけではなく、日本語能力試験(以下、JLPT)をはじめとした日本語教育全般の支援を行っておりました。そこから数えると私は3代目ということになります。JFYGが開設されてからはYUFLにあったポストをJFYGに移し、広くミャンマー全土のさまざまな地域、教育段階の日本語教育を支援する体制が構築されました。

もちろん、この国で最も大きくかつ重要な日本語教育機関であるYUFLに対する支援を終了してしまったわけではなく、前任者が主要業務としていたYUFL教員に対する教授法研修や日本語能力向上のための支援、修士課程の教授法クラスなどは私も引き継いでいます。そのため勤務先もJFYGではなくYUFLにしており、毎日大学に行って先生方、学生たちと楽しくおしゃべりをしています。

さて、私の業務内容ですが、まずはYUFLの学生に対する直接授業というものがあります。YUFLの日本語学科は500名に近い学部生と、数名の大学院生のほか、夜間、早朝、週末などニーズに合わせたさまざまな学習コースがあり、ここで日本語を学んでいる人の数は1,000名を優に超えています。私はここで修士課程に在籍する学生たちの「日本語教授法」を担当しています。これまではYUFLの現職教員が修士課程で学び、学位を取得することが多かったようですが、2020年度はYUFLの教員以外の方も履修しています。こうしてこの国で日本語教育を専門とする方が少しずつ増えていくお手伝いができるといいなあと思っています。

またYUFLの先生方に対する支援も大きな仕事です。先生方の日本語力の維持と向上、さまざまな教授法の吸収と研鑽などのお手伝いです。これはYUFLだけではなく、ミャンマーのもう一つの大きな柱であるマンダレー外国語大学(以下、MUFL)の先生方に対しても同様です。具体的には毎月1度、両大学の先生方との勉強会と個別カウンセリングを行っています。

ミャンマー日本語教育界全体へのアドバイザー業務としては、任国の日本語教師全員を対象とした勉強会や年次セミナーなどがあります。勉強会は私も含めミャンマーにいる先生方が講師を務め、地域のネットワーク形成も含めて細かなニーズを拾い上げ、年次セミナーではミャンマー内外からさまざまな専門性を持つ講師をお招きして、幅広いお話が聞ける機会になればいいなあと思っています。

日本語能力試験、日本語弁論大会など日本語学習者、学習奨励に直接関わる仕事も業務の中で大きな比重を占めています。

ただ最近は、技能実習、特定技能ビザなどでの訪日を希望する人が年々増えているため、国際交流基金では、このニーズに対応するために専門家を1名、生活日本語コーディネーター2名を2019年度から新規派遣しています。また激増する学習者に対応するためには、優秀な日本語教師の育成、継続的な輩出も必須であり、国際交流基金ではアジア3か国で「日本語教師育成特別強化事業」を行っていますが、ミャンマーでもそのための日本語教師育成コースもすでに2018年度から開始されており、専属の専門家も配置されています。

2013年度にYUFLに専門家が配置されて以降、専門家一人体制が続いていましたが、2018年度の日本語教師育成コース担当専門家の配置、2019年度のJFYG開設、特定技能担当専門家の派遣、JFYG付けアドバイザーの配置と今では3名の専門家がいます。また生活コーディネーター2名が派遣されており、それぞれヤンゴンとマンダレーで訪日を希望する日本語学習者のために頑張っています。さらには国際交流基金から日本語パートナーズがYUFLに3名、MUFLに2名派遣されており、2019年度ですでに5期目を数えています。

2015年度機関調査で11,301人だった学習者数が2018年度調査では35,600人に増え、日本語能力試験受験者数も2015年の6,504人から2019年の52,604人へ約8倍にも増えています。

私たちはこれからも、多くの人が日本と日本語に興味を持ち、日本を好きになってくれるように、日本語を勉強してよかった、日本に行ってよかったと言っていただけるように万全の体制を敷いて頑張りたいと思います。 

初代専門家が着任しましたの写真
初代専門家が着任しました

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 ヤンゴン日本文化センター
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
2019年に開設された国際交流基金の海外拠点のひとつで、ミャンマー日本語教育界のハブ機関としての機能を担っている。具体的にはヤンゴン外国語大学、マンダレー外国語大学と協力しての、日本語教師を対象とした年2回の年次セミナーの実施、在ミャンマー日本国大使館と協力しての日本語弁論大会の実施、日本語能力試験(JLPT)の実施など。技能実習生、特定技能ビザなどで訪日する学習者のための支援にも力を入れている。また日本語学習者や日本語学習の入り口となる文化紹介など、学習者への直接支援活動も活発に行っている。
所在地 No.70, Nat Mark Lane 1, Bahan Township, Yangon, Myanmar
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家1名
国際交流基金からの派遣開始年 2019年
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