世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)広がれ!集まれ!タイの日本語教育

国際交流基金バンコク日本文化センター
早川直子、関山聡之、大田祥江

「みなと」自習コース制作

「日本語を勉強したい」
だけど…。「近くに教室がない」「決まった時間がとれない」「もっと気軽にやりたい」。

そんな方のために、「JFにほんごeラーニング みなと」(https://minato-jf.jp)という日本語学習プラットフォームがあり、様々な日本語学習コースが入っています。

バンコク日本文化センターでは、オリジナルの自習コース「マンガorange舞台探訪A1‐A2 -にほんごいってみよう-」を制作。日本旅行に関心があるタイ人とタイ人日本語学習者をターゲットとし、「旅行」と「日本語学習」という2つの領域を組み合わせて構成しました。「旅行」領域は、いわゆる舞台探訪(聖地巡礼)です。マンガ『orange』(高野苺/双葉社)の舞台となった長野県松本市の名所を巡り、写真を撮ろうというコンセプトです。「日本語学習」領域は、旅行中に道を聞いたり、値段を聞いたりなどの簡単な日本語フレーズを覚えて旅行中に使ってもらおうという狙いがあります。

マンガ「Orange」のコースパネルの写真
「みなと」上でのコースパネル

字幕には日本語を併記しているので、日本の方はもちろん、タイ以外の日本語学習者のみなさんにもご利用いただけるものだと思っています。

タイ国際日本語キャンプ2018開催!

2018年5月1日から5日間にわたり、「タイ国際日本語キャンプ2018」が首都バンコクにて開催されました。今回は、インド、インドネシア、オーストラリア、タイ、日本、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、メキシコ、ラオス、ロシアの11カ国から、高校生162名と教師40名が参加して、「ゴミって何?-みんなでチャレンジ!3R」というテーマのもと、さまざまな活動を行いました。

タイ国際日本語キャンプ2018の写真
タイ国際日本語キャンプ2018の様子

1日目はゴミ問題の現状を学んだあと、ゴミがどのように捨てられているのかを各国から持ち寄ったゴミ箱の写真をグループメンバーに共有することで問題意識を深めました。2日目はゴミ問題に注目しながらバンコクの街歩きをし、感じたことを報告し合いました。3日目はいよいよグループごとに取り上げたいゴミ問題を決定し、その問題が起こった原因や自分たちにできる改善案について考え始めました。4日目は翌日の最終発表に向けてその改善案をさらに練り、そして、最終日は20グループすべてが自分たちなりの改善案を示し、それを遂行しようと約束して別れました。各国の教師たちのファシリテーションも見事で、学生にはもちろん教師にとっても収穫の多いキャンプであったことを願ってやみません。

草の根からタイの日本語教育を支える“日本語パートナーズ”

日本とアジアを結ぶ文化交流政策のひとつとして2014年に始まった“日本語パートナーズ(NP)”派遣事業。満20歳から69歳までの様々なバックグラウンドを持つ日本人が、アジア11ヶ国で現地の日本語教師や生徒の“パートナー”として授業のアシスタントや文化紹介を行っています。ここタイでも昨年度までに210名のNPがタイ全土の中学高校に派遣され、今年も新たに80名が到着しました。それぞれ赴任地で10ヵ月間の活動を行う予定です。

カルタに挑戦する写真
NPの進行でカルタに挑戦!

NPが派遣されるようになってから、日本語コンテストに参加して賞を取った学校や日本語履修者がグッと増えた学校、日本語が専攻科目に加わった学校などがありました。また、地方都市では日本人の存在自体が珍しいため、NPは積極的に地域との関わりを持つことが求められますが、近所の子どもを集めて寺子屋を開いたり小学校で折り紙の出張授業をしたりと、地域に貢献する草の根活動を行うNPも多数いました。

まだまだ成長し続けるタイの日本語教育。“日本語パートナーズ”もタイの教師や生徒を支え、地域の人たちに広く“日本”を知ってもらう役割をしっかりと担っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Bangkok
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
タイ国全土の日本語教師・学習者支援のためのさまざまな日本語事業を実施している。教師支援では、中等教育の教師養成・現職教師対象の各種研修、大学教師向けのセミナー開催、学習者支援では、日本語キャンプの開催やJFスタンダード講座をはじめとする一般講座を開講している。業務はタイ国内にとどまらず、カンボジアやラオスなどの周辺国の日本語教育支援も行っている。また教材作成にも取り組み、中等教育向け日本語教材をはじめとし、「みなと」向けのコンテンツも開発している。
所在地 10th Fl. Serm-Mit Tower, 10F, 159 Sukhumvit 21Rd., Bangkok 10110 Thailand
Tel: 66(2)260-8560~64 Fax: 66(2)260-8565
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:2名、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1994年
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